111:対決、ジャガーノート 2
「そっちの目的がようやく知れたところだな。前もって話してくれていればこっちも対応の仕方があったものを。おかげでこっちは大捕り物だ」
「それは申し訳ないですねえ。ですが、こちらにはこちらの事情というものもありますからそういうわけにもいきませんからね。私たちは自助しつつ、異能力者を増やしていずれは国民全員が異能力者になるべく活動を開始していきます。その為にもここでつかまって能力を封印されるわけにはいきませんね」
「そうかよ。そんなことをされたらこっちは仕事が溜まって仕方ないんだ。悪いが今日捕まえたのやそのへんで伸びてるのも含めて、異能力は消させてもらう。こっちにはその手段があるからな」
竜円寺は意外そうな顔をせずにその言葉をすんなりと受け止めると、にやりと笑顔を作ってこちらに向きなおった。
「それは面白いですね。戦い甲斐があるというものです。私もたまにはちゃんと人を束ねるだけの力があるということを見せつけなければいけませんからね。進藤智明さん、悪いですが実験台になってもらいますよ」
面白いことを言う。前はまんまと逃げられてしまったが、今回は向こうから立ち向かってくれるということなのだから、そこの心配がないあたりは大丈夫だろう。
久しぶりに
そう、本当に久しぶりに
暴れられそうだ。
竜円寺がニヤリと笑うと動き出し、俺に向かって高速で駆けてくる。竜円寺の両拳に青い水流のオーラがうねり、まるで龍の鱗がうごめくように輝く。真正面からの拳を振りかぶってくるので全力の身体強化でそれを受け止めると、バチン!! という大きな音が鳴り、その衝撃を受け止めた分だけ地面にも沈み込みが発生する。衝撃の余波で周辺に乱流が発生し、周りの空気が一気に変わる。身体強化では同等か、俺のほうがわずかに上、というところだろう。
「やりますね、流石です」
咄嗟に結界魔法を展開、透明な光のドームが雑居ビルや電柱を覆い、飛散するアスファルトの破片をブロック。周辺被害は出来るだけ地面だけにしておきたい。フィリスも援護のつもりか、俺と竜円寺だけを包む結界を展開し、周辺への影響が出来るだけでないようにしてくれているらしい。
「褒められてちょっと嬉しいところだな。出来ればこれで力勝負は俺の勝ちってことで素直に従ってもらいたいところだが……正直なところ俺もちょっと暴れたい気分でな。付き合ってもらうぞ竜円寺」
お互いの拳のぶつかり合いで地面に浅い亀裂が走るが、結界のおかげでビルは無傷。竜円寺が水流を螺旋状に拳にまとわせて、滝のようなパンチを繰り出す。こちらも両腕に水流を集めて相殺するようにブロック。火花と水しぶきが結界内で炸裂、まるで嵐のど真ん中で殴り合ってるみたいになった。
そのまま拳を数回打ち合うと、いったん離れて距離を取り、お互いの得意な魔法を打ち合う。
俺も竜円寺も、雷魔法を選択し、ぶつかった雷の流れが周囲の電灯を点けたり消したりしながら雷撃の余波が周辺を襲う。
「お互い雷とはな。勇者と言えば雷魔法だよな」
「そこについては同感ですね。やはり勇者と言えば雷魔法です」
にやりとお互い顔を見合わせると、もう一度雷撃を放ち合って、中間点にまた雷撃の渦を発生させる。お互いの雷撃が出終わったところで再び近接戦。俺の拳と竜円寺の拳が交錯、ドゴン!ドゴン!拳がぶつかるたび、結界内で空気が震え、水しぶきと火花が霧となって舞う。
「金貨はあと何枚在庫があるんだ? 相当懐に無理させてるんじゃないのか? 」
お互い己の拳足で攻撃をやり取りしながら少しずつ情報を引き出していく。竜円寺は水拳で俺の攻撃を弾くと冷静に返事を返してくる。
「ご心配なく、まだまだ在庫はありますし、何なら増やすこともできますからね。資金源は今や無制限です。我々の組織を止めることは難しいですよ? 」
竜円寺はにやつきを止めずにひょうひょうとした態度でこちらの攻撃を防いでは、あちらからも攻撃が飛んでくる。かなりの重さのある攻撃を受け止めながら、なおも会話を続ける。
「金貨の残留魔力はそういうことか。偽造でしょっ引けないのが残念だな」
「物理的に証明することはできませんからね。さあ、どうします? どうやって私をしょっ引きますか? 」
竜円寺が自分の逮捕の法的根拠を問うてくる。
「俺と喧嘩してる時点で罪は一つ重ねてるからな。それだけでも充分だ。後は騒乱罪かな。結果的にお前の実行したことにしてまとめて首謀者として拘束して証言させることは十分可能だ」
まだ向こうは武器を持ち出してはいない。そこまでする必要がないと判断しているのか、それとも手持ちに武器はないのか。もしくは、こちらが出してくるのを待っているのか。もしかしたら竜円寺も同じことを考えているのかもしれないな。
お互いに相手の手持ちの札を探りながらの戦闘になる。まだカルミナの相手をしている方が頭を使わずに全力で立ち向かう分マシだったかもしれないな。魔王に対して過剰戦力も何も関係なかったからな。やはり、法律というものが機能している分だけこっちの世界は戦闘には向いていないんだな。
こっちはうっかりやり過ぎると過剰防衛か違法捜査になりかねないので相手の出方を見ながらの受け身の戦闘姿勢になっている。竜円寺が火魔法でファイヤボールみたいなものを複数打ちこんでくるので、氷の盾でそれぞれの弾を防いで周りへの被害を最小限にしながら対応。
竜円寺のファイヤボールと俺の氷の盾がぶつかり合うことで炎が氷を溶かし、蒸気が結界内を満たす。ビルへの被害はゼロだが、熱気が俺の額に汗を滲ませる。蒸気ぐらいは逃してくれてもいいものかもしれないが、流石に熱いな。帰還勇者はだてではないということか。
「後は地面を割ったから器物損壊も追加だな。それ以外は……これから考える! 」
再び竜円寺に殴り掛かる。拳に雷をまとわせて竜円寺のボディに向けて一撃を加えると、その衝撃で竜円寺が一時的に痺れて動きが鈍くなったようにみえた。今か? と追撃をかけようとすると、何事もなかったのように竜円寺が突然動き出し、逆に俺に前蹴りを入れてきた。思わずその前蹴りを喰らってしまうが、直前に腹筋をしっかり固めて自分の簡易結界も張り、全力の防御でその蹴りを受け止める。
まるで丸太でぶん殴られたような重い蹴りをくらうと、流石にこっちにも少しダメージが入った、ということを感じたのか、竜円寺はようやく顔のニヤつきをやめた。
「ほう、防がれてしまいましたか。良い蹴りが入ったと思ったんですがねえ」
「その手のやり取りは勇者になる前に散々叩き込まれたからな。悪いがその程度の引っ掛けに素直に引っかかるほど俺も若くない」
腹に着いた砂をパッパッとはらうと、改めて竜円寺に向きなおる。さあ、次はどの手で来るのかな?
「なるほど、これは全力の出し甲斐がありそうですね。久々に暴れられそうです。正直こっちに来てから少々退屈していた所もあったんですよ。私と同等レベル以上のところで戦う相手に飢えていた、と言っても過言ではありません」
「また意見が合ったな。俺も同じことを考えていたよ」
竜円寺がアイテムボックスらしきところから剣を出し始める。これで銃刀法違反も一点追加、と。まあ、もっと重い罪があるからこれはカウントされないだろうが、一応目視で確認はできたということになる。
「得物を持ち出したか。これは本気の殺し合いになるぞ。そのつもりはあるのか? 」
「ここで捕まれば全てパァですからね。悪いですがあなた相手に手加減できる状態では無さそうですから自分の手札は全部使わせてもらうつもりで行きますよ」
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