110:対決、ジャガーノート 1
竜円寺の事務所らしき建物まで来ると、流石に異能力者達も人払いがされたことに気づいたらしく、建物から不思議そうに出てくる者もあった。今の所まだ何もお互いしていないため、一般人と警察官の集団、という形でしかまだない。どちらかが戦端を開かない限りは静かなものである。
「あなた方が……第六課ですか」
一人の女の子が建物から出てくる。未成年に見えるが、こんな未成年も味方につけていたのか。竜円寺は相当色々な人を仲間に誘っているらしい。
「……そうだ、我々が公安内事第六課、別名異能力者対策課だ」
「何しに、きたんですか。竜円寺さんを捕まえに来たんですか」
小声だが静かに語り続ける。これから始まる戦闘に比べたら静かなものだが、確実なやり取りを続けていく。
「最近異能力者による犯罪が急増している。その中の幾人かが竜円寺竜彦氏の関与を認めた。竜円寺氏には重要参考人として質問をしておきたいことがある。まだあくまで任意だ。素直に応じてくれるなら何事も起きない。力づくで逃げ出す、という場合は……どこまでも追いかけさせてもらうことになる」
全員が戦闘警戒をし始める。この女の子が戦闘能力を有しているようには見えないが、最後の足止めに来たことは解る。
「竜円寺さんは……今でかけています。中にはいません」
「周辺の監視カメラの映像から、竜円寺氏がここにまだ居ることはわかっている。話だけでも聞かせてもらいたいんだが」
「……」
「……」
にらみ合いが続く。内村課長が到着するまでには時間がかかるだろうし、もし令状が下りなかった際は戦闘になったどさくさで検挙したいのがこちらの目的だ。さて、このままにらみ合いでひたすら時間を使い続けてもいいんだが……いつまで彼女とにらみ合いを続ければいいんだろうか。
「吉中さん、代わるよ」
中から別の異能力者らしき人物が複数人出てくる。どうやらこっちは戦闘員らしく、そこそこの異能力の強度を持っている様子が見て取れた。
「竜円寺さんならここにはいないぞ。帰ってくれ」
体で押し返すようにして入り口をふさぐ。その行為自体が中にいますって言ってるようなものなんだが、そこをつつくとかえって逆上して襲い掛かってくれないもんかと思うところだが、そこまでして今のうちに騒ぎを大きくしてなし崩し的に捜査名目で暴れるか……どっちにしろ俺の出番は竜円寺が出てきてからだ。
「だからいないって言ってるだろ! 帰れ! 」
「あっ」
岬さんが押されたふりをして転ぶ。これで公務執行妨害でこいつは逮捕できる。
「君、公務執行妨害で逮捕ね。現行犯だからほい、手錠」
「何をする、触ってすらいないぞ! 」
「転んだってことは触っただろ、みんな見てたぞ」
近藤さんの主張に対して、周りの職員が皆頷く。これはこっちに利がある。自分たち以外には異能力者しかいないのだから、一般人の目はない。つまり、目撃者が自分達しかいないのだから言い張れるのは問題ない。まずは一人、確保できた。
「そっちがその気ならこっちも出るところ出るぞ! 」
「出る所がこっちだぞ、それでもやる気か? 」
近藤さんがどんどん煽る。煽っている間に中から更に人が出てくる。こんなに居たのか、と思える程度に中身はいっぱいに詰まっていたらしい。もしかしたら今竜円寺は手駒を増やすために色々とやっているのかもしれないな。
「どうしたどうした」
「逮捕って声が聞こえたぞ」
人は増え始め、こっちの人数より多くの人数が出てきた。全員が身体強化を持っていた場合ちょっと面倒くさいな。どんな方法で竜円寺が異能力者を増やしているかまではわからないが、流石にこれ以上人数が増えるということはなさそうだ。
一人は確保したとして、残りの構成員たちがこちらの職員に突っかかり始める。まもなく大乱闘に発展するだろう。
「こちら進藤、一人を公務執行妨害で逮捕、残りのメンバーも一触即発状態なのでそう時間はかからないと思いま……始まりました」
あちこちで構成員とこちらの職員の押し合いへし合いが始まる。流石に二人目以上は即座に逮捕という形にはならず、拳を振りかぶって襲ってくる構成員に職員が受け止めて、そこからなし崩し的に戦いが始まった。
外での騒ぎは中からでも聞こえるはずだ。竜円寺はそのまま出てこないということはないだろうが、騒ぎが一段落するか、途中で出てくる可能性は大だ。精々派手に皆には立ち回ってもらおう。
「こちら進藤、わざと音を出したりして響かせるようにします。竜円寺が出てくるまでに時間稼ぎをされている可能性もありますが、竜円寺の性格からして自分だけ逃げていくという選択はしないと思います。今は精々暴れますよ」
「こちら内村、手加減の必要はないからな。護送車をそちらに送る。捕獲した異能力者はカルミナが順次スキルを引きはがしつつ、無力化してやってくれ」
「こちらカルミナ、りょーかい。捕まえたやつをどんどん食べていけばいいのね! 」
「そうだ、しっかり頼むぞ」
カルミナは早速出番が出来て楽しそうだな。このまま成長して美少女から美女へ変化していくのかと思うと過程が少し気になるし、ある一定のところまで成長したところでまたフィリスのアイアンクローで無理やり小さくされてしまうことを考えるとちょっとかわいそうではある。
身内のことはともかくとして騒ぎは段々おおきくなり、職員と構成員の殴り合いの喧嘩も始まった。身体強化を使えている分だけこちらの怪我についてはそれほど心配ないだろうし、軽い打撲ぐらいならフィリスに頼らずとも俺の治癒魔法でも充分に癒すことは可能だろう。
「警察がなんぼのもんじゃいオラァ! 」
「警察舐めんなよコラァ! 」
うちの所員に関西人がいたかどうかはともかく、かなり乱雑な言葉遣いになりつつある。流石にまだ周りの建物や電柱やガードレールに被害は出ていないが、このまま綺麗に落ち着いてくれることを望むところだ。
しばらく外でごたごたと戦闘をしているうちに、建物の中から異様な空気が漏れ出てくることを感じ始めた。そろそろおいでなすったか、竜円寺竜彦。
やがて本人が到着したらしく、建物からゆっくりと出てきた竜円寺に対して、その姿を確認して手を止める構成員たち。こちらがわも思わず手を止めていた。
竜円寺がでてきたことで、こっちの目的の最初はまず達成することができた。後は竜円寺との直接対決、ってところか。さて、まずは説得からだ。
「随分荒っぽいことも得意なようですね。転び捜査なんて始めるとは思っていませんでしたよ」
「こういうのは早め早めの……ってな。このまま異能力者犯罪が増えると困る。もちろん竜円寺が意図的に犯罪まで犯させようと考えているとは思っていない。しかし、こっちも仕事なんでな。異能力者を増やすこと自体は禁止させることはできないが、犯罪者予備軍が増えていくとなれば話は別だ。何故、そこまでして異能力者を増やそうと試みる? 」
「私はね、全ての人が異能力者になればいいと思ってるんですよ。人類が新たなステップへ上がる手伝いをしてるだけです。確かに異能力による犯罪が増え始めているのは私としても想定内ですが、それよりも異能力者が増えることを最優先にさせていただきました。みんなで異能力者になればよりたくましく、より強く、そしてよりはるかな理想に近づけると思っています。第六課の皆さんには悪いですがねえ」
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