11:カルミナの性能
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マツさんのゲル
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ダンジョンで潮干狩りを
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こちらもよろしくお願いします。
夕食を終えて、カルミナがポテチの袋を開ける。
「勇者、これ中身少ない! 」
「最近は何処もステルス値上げっていってな、中身を減らしてお値段そのままとかでインフレを誤魔化してるんだよ」
「けち臭いわね、やっぱり一日一袋じゃなくて二袋にするべきだったわ」
カルミナがゴスロリ衣装のどこから出ているかわからない尻尾をブンブンと振りながら、それでもいとおしそうに一枚ずつ食べていく。
「それで、今日はパソコンでどんなことを検索していたんだ? 」
「今日はですね、交通ルールについて学びました! いずれ外へ出られるようになった時にルールを守れずに浮いた存在にならないように気を付けなければいけませんからね。馬車が走っているときは貴族の馬車なら轢かれても仕方ないとか、そういう奴です」
「こっちの国に貴族はいないから、馬車……自動車は基本的に避けて歩かなきゃいけないぞ」
「はい、それも学びました! 自動車……トモアキ様は持ってない様子ですけど、いつか乗ってみたいですね! 」
ふむ……なら次出かける時は乗合馬車ならぬバスで出かけてみるのもいいな。俺は向こうの世界で歩きとおすことに慣れてしまっているし、フィリスも同じくだ。カルミナは……そういえばこいつどうしようかな。流石に置いていくわけにもいかないからな。何かしらそれまでに考えておくことにしよう。
「なんか私を置き去りにして何処かへ出かける相談してるようだけど、外に出かけるなら私も付いていくわよ! 独りぼっちも暇だし、私を独りにしておいたら何が起きるかわかってるわよね! 」
カルミナがいたずらをする気満々の態度でふんぞり返りながらポテチをかじる。うーん……
「ちなみになんだが、カルミナは透明になれたりするのか? 」
「透明化? 隠蔽の魔法なんて初歩も初歩じゃないの。完璧に存在感ごと消えることができるわよ! 試しに……ほら! 」
そう言い始めると、早速魔法を使いやがった。使うなとあれだけ念を押したのに……しかし、はっきりと見えない。いや、言い方がおかしいな。完璧に隠蔽できていると言えるだろう。魔力の波も観測されない。かなりレベルの高い隠蔽魔法が使えるようだ。
「ちなみに声のやり取りは出来るのか? 」
「私がしゃべらなきゃ気づかないでしょ? 」
真後ろから声が聞こえる。どうやらポテチの袋ごと透明化して俺の背後を取ったらしい。油断してたとはいえ、勇者が背中を取られるとは、この一週間で俺の勘も少し鈍ったらしいな。
「それなら一緒に外出できるな。無賃乗車は仕方ないが……こんなんが世の中にいるとバレるよりはマシか。必要悪と考えておこう」
「魔王なんだから悪で当然よね! 」
ペタンコどころか存在すらうかがいしれない透明化の向こう側で、どうやらカルミナはえっへんという感じで胸を張ったポーズを決めているらしかった。
「ううむ。これで外出は問題ないか。どこか行きたいところがあったら教えてくれ。何とか都合してみることにするよ」
「本当ですか!? ぜひ行きたいです。このぱそこんで色々探してみますね! 」
フィリスの顔がぱあっと笑顔になる。こっちの世界にあって向こうの世界にないものはいくらでもある。そういうところに連れて行って、部屋から出れないストレスを解消してもらおうという話だ。それにせっかく色々服をもらったり買ったりしたんだから、それを着て外出する機会があるほうが良いに決まっている。
「じゃあ、俺風呂に入ろうかな。いつも通り一番風呂を頂くことにするよ」
「はい、ごゆっくり」
◇◆◇◆◇◆◇
side:フィリス
トモアキ様が風呂に入っている。その間に着替えを洗濯籠から洗濯機にうつし……トモアキ様の着ていたワイシャツが目の前にある。トモアキ様が一日仕事を頑張って汗や色々な成分が移ったトモアキ様のワイシャツ。そっと鼻に近づけてスウ……っと呼吸する。
なんて素敵な香りなんでしょう。働いた男の匂い。それ以上に大好きなトモアキ様の匂い。胸いっぱいに広がるその香りを深呼吸して存分に堪能する。堪能……
「じーっ」
その様を洗面所の外の柱からそっと顔の半分だけを覗かせてしっかりとみているカルミナ。
「ッ! 」
「ふふふ……みーたーわーよー」
見られてしまった。どうしましょう、やっぱり消しましょうか。
「勇者の服の匂いを嗅いでいる聖女なんて、勇者が知ったらどう思うでしょうね……面白ものを見ちゃったわ。これはお風呂から出たら勇者に報告ね」
「それは困ります! ……そんなことをうっかり口走った際には私はこの身を粉にしてでもあなたの行動を止めないといけません。黙っているなら今まで通りポテチを一袋提供しましょう。ですが、うかつに喋った時には……封印します。そんなことになったら私もトモアキ様に見せられる顔がありません。黙っておくこと、いいですね? 」
全力の無詠唱行使で空気中の魔素をかき集め始める。今のカルミナならこの威力でも充分お仕置きダメージを与えることは可能だろう。
「ちょっとまって、その威力は消滅しちゃう! ポテチ食べられなくなっちゃうから! わかった、黙ってるからその魔法解除して! 」
「なんかうるさいぞー、もうちょっと静かになー」
風呂場からトモアキ様の苦情が飛んできた。もうちょっと静かにしないと……
「カルミナ。今の行為のことはとにかく黙っていてください。私がここにいられなくなるような事態になればおそらくあなたも追い出されてポテチが食べられない日々が続くことになります。それでもいいというなら好きにトモアキ様に報告すればいいでしょう。私は自害の用意をしてきます」
「あー、待った待った! 黙ってるから! 言わないしこれからも黙っててあげるから!
「うーるさーいぞー」
「わかりました。もしもトモアキ様の耳に入るようなら即刻消しますからそのつもりでいてくださいね」
さて、これで一難去りました。もうちょっとだけ匂いを嗅いで落ち着いたら、次にお風呂に入る準備をしないといけませんね。トモアキ様のエキスがたっぷりと詰まったお風呂のお湯の味を確認して、トモアキ様の健康状態を確認しなければなりません。一日の楽しみはちゃんと味わっておかないといけませんね。
◇◆◇◆◇◆◇
ふー、いい湯だった。しかし、何を騒いでいたのだろうか。後で確認してみるか。
「風呂あがったけど、何を騒いでたんだ? 」
「それはですね、えーと……カルミナがですね、カルミナがもう一袋欲しいとわがままを言いだしたのでそれをなだめていたんですよ」
「そう来たか……でも、家にポテチの在庫はないからな。それに約束は約束だ。忘れずに色んな味を買って帰ってくるから、毎日の楽しみにしててくれ」
「しょうがないわね。今日のところは大人しく従っておいてあげるわ! 」
たしかに、物足りないかもしれないな。何かしらのイベントがある日には大袋のポテチを買ってきて労わってやることにするか。
「ともかく風呂あがったから、フィリス、お風呂どうぞ」
「わかりました、お風呂いただきます」
ウキウキしながら風呂に入っていくフィリス。よほど風呂が楽しみらしい。フィリスは比較的風呂を綺麗に扱ってくれるので助かっているが、カルミナはあちこちに泡を飛ばすから後の掃除がちょっとだけ面倒なんだよな。いずれちゃんと風呂の使い方を学んでいってもらうことにしよう。
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後毎度の誤字修正、感謝しております。