109:能力者拡大
竜円寺に対して待ちの姿勢の間に外勤と内勤を繰り返しつつ、自主訓練を繰り返していった。戦闘訓練についても徐々に対応可能な職員も増え始め、物理的に犯人を捕まえる用意をしつつ、ただひたすらに待った。
そして、時が来た。
「傷害及び器物損壊の現行犯で逮捕だ。逃げれると思うなよ、こっちも異能力者だ」
「クソッ、予定と違うぞ。なんでこんなに人材がそろってるんだよ、第六課がこんなに強いとは言いてない」
「こっちも時間があったんでな。戦力強化はどっちも同じってことだ」
近藤さんがきっちり犯人を抑え込み、特殊手錠をかける。どうやら今回の異能力者は身体強化ではなく他の異能力を持った人間であったらしく、それほど激しい肉体労働にはならなかった。近藤さんも日々の訓練と異能力の向上にしっかり努めていたらしく、腕力で異能力者を制圧することが出来た。
と、ある日を境に急激に異能力犯罪が増加し始め、出動回数や検挙回数が増えた。それ自体は問題はないのだが、昨日まで一般人だった、というノーマークの人物たちが異能力者として覚醒して何らかの犯罪や条例違反を犯し、そのたびに一般警官に逮捕されたりして、脈絡もないことを話し出したりして第六課が出張る機会を得ることになった。
取り調べの結果、幾人かの証言から竜円寺との利益関係を見出すことに成功したので、内村課長はそれを一斉捜査の理由の一つとして裁判所に家宅捜索の令状を申請できるよう手はずを整えている。ここにきて急激に一般人にまで異能力者が拡大してきたとなると、竜円寺の初頭目標は達成されて、人数を増やす段階に入ったのだと予想される。
ただ、一般人を巻き込む形で異能力者として覚醒させることになるので、当然ガードの緩い、または倫理観の薄い人間がターゲットになる割合も高くなり、その一部が現在拘留されている犯人、ということになる。
異能力者犯罪が増えた分だけカルミナの出番も増え、異能力者から異能力を引きはがして一般人に戻す作業が増えた。おかげでカルミナは異能力者から引きはがした異能力の分だけ成長し、肉体的に言えば身長も十センチぐらい伸びた。成長期と言えなくもない年齢だったが、このままより成長して力を取り戻し始めた場合、またフィリスによる強制浄化で小さくなってもらうことになるだろう。
ただ、竜円寺たちとの対決が近づいてくるのかもしれない、という予感のする中でカルミナの力を抑えることには内村課長も俺も反対気味であり、戦闘力はあったほうがいいということでカルミナは成長と力の取り戻し具合に喜びつつ、ポテチも一袋では満足できなくなってきたらしい。
新しい異能力者が送られてくるたびにカルミナの出番の可否が問われるため、カルミナへの負担は俺達に比べて大きいので、ポテチの量でストレスが減らせるなら……と、一日一袋から異能力者の数だけポテチを食べていいということになった。
「じゃあ十人捕まえたら十袋食べていいのね! 」
と、こんな具合である。まあしばらく続きそうではあるし、異能力者が無限に湧いてくるわけでもない。どこかで打ち止めになるだろうからそこまでで一旦打ち止め、ということで一時的にフィリスもOKを出した。
それぞれ捕まえた各容疑者取り調べの上で、一連の異能力者が複数人犯罪を犯していることと竜円寺との関係を繋げるのが仕事ではあるものの、どうやら異能力を開発されて浮足立った者たちだけが犯行を行っている、というのが現状らしいこともわかってきた。
つまり、異能力貰って調子乗ってやらかした奴が今メインで捕まっているというのが実情らしい。竜円寺にとってはこれは予定内の行動だったのか、それとも予定外に調子に乗る奴が増えてしまったのかは解らない。
しかし、これを機に竜円寺包囲網を狭めて、本人が現れ次第関係を問い詰めて、もしも関与を認めるなら犯罪組織として暴力団対策課に引き渡す。そして表向きの法律では騒乱罪として検挙することができる、と内村課長は言っていた。
そのためには全員の口を割らせないといけない。そしてその全員が竜円寺関係者である、ということを認めさせる必要がある。そこまで口の軽い奴はそう多くないので一人一人聴取して話を聞いて回っている最中ではあるが、今の所五分の一、という程度だ。それでも集団というものには違いないので、充分とは言えないが多数の事件の裏に竜円寺が関与しているという証言を取ることは出来た。
「みんな待たせたな。後は竜円寺の居場所を確実に突き止めて令状を取れれば一気に事件を解決させることができる。とはいえ竜円寺自身の強さはおそらく進藤レベルだ。竜円寺と相対しても進藤以外が相手にすることはおそらく不可能だろう。戦闘になる場合はしっかりと注意して無理をしないことが寛容だ。被害を出さずに戦いたいのはこっちもあっちも同じはずだ。もしかしたら竜円寺のほうから進藤を名指しで挑んでくる可能性もある。あくまで最優先は竜円寺の確保、現場の治安回復が第二だ。なんとしてもここで竜円寺を確保しろ。まずは竜円寺の現在地を把握だ。今竜円寺は何処にいる」
各場所の監視カメラをフル活動させ、竜円寺の写っている映像を全て確認させ、池袋周辺に竜円寺の姿を確認できたのが二時間前。そこから動いてない辺りを考えると、竜円寺の拠点は池袋にある、と考えていいだろう。
周辺の監視カメラを二時間前から現在までさかのぼって確認し、竜円寺の居場所をほぼ特定。裁判所に捜査令状を要求して強制捜査の準備をし始めた。公安の裏組織とはいえ令状なしでいきなりガサ入れ、ということは出来ない。
「令状申請は既にやっている。発行され次第俺も合流して竜円寺のアジトを捜索する。それまでに一悶着あるだろうが、現場の判断に任せる。ただし、人払いは確実にやっておいてくれ。どれだけの規模の戦闘になるかもわからないが、出来るだけ怪我人の少ないように取り計らってくれ。みんなもそれなりに強くなっただろうが、竜円寺本人が出てくると一気に巻き返されて全員そろって逃亡を始めるかもしれない。そうなったら全国指名手配になるだろうが、出来るだけ警視庁の中だけの問題で対応し切りたい。間違っても町田方面にだけは逃げられないように注意してくれ」
「「「「「「はい! 」」」」」」
「では、各自池袋の予想されている竜円寺の潜伏先に向かってくれ。竜円寺が本気を出してきた場合の対応は進藤、任せたぞ」
「はい、今度は遅れは取りません。全力で行きます」
「うむ、では後でな」
内村課長は令状が届くのを待って正式な捜査を開始する課長組と、先行して竜円寺に接触できれば時間稼ぎをしてその間に誰かが攻撃してきた場合の反撃として転び捜査的な手法でなし崩し的に戦闘を開始しようという寸法だ。
全員が肩を並べて指令を聞きつつ、池袋方面へ向かう。どうやら竜円寺は自分の居場所から動いてない様子で、示されている竜円寺の潜伏先に動きはない様子だった。
池袋駅に到着してもまだ竜円寺は動いてない様子だ。どうやらこちらの情報が洩れている、ということはないらしい。ライブ配信などをする様子もないらしい。どうやら動画撮影中、というわけでもないようだ。
安心して竜円寺の潜伏先に到着した。雑居ビルの四階にあるらしい竜円寺の居場所がある一室、そこに近づいていくと、少しずつ人の気配が出始めたので人払いの結界を発動させる。しかし、人が離れていく様子はない。どうやら今竜円寺の周りにいるのは全員が異能力者、ということで間違いはないようだ。
ようやく一区切りつけられる時が来た。さあ、後は出たとこ勝負だ。
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