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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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106/120

106:若さゆえの過ち

「そうですか……やっぱり無理ですか……」

「無理、というよりお金の使い方の問題かなー。例えば全国で同時に偽札を使い始めるような騒ぎになれば躍起になって犯人を捕まえようとするだろうし、各都道府県警が血眼になって製造工場を探そうとするだろうけど、東京近辺だけでお金を使おうとしたらすぐに包囲網ができ上がっちゃって私にたどり着くまですぐになっちゃう可能性は大きいと思うよー。そう思ってるから私も実際に使ってないわけだしねー。そういえば、名前聞いてなかったね。私は安西美代。貴方はー?」

「私は吉中、吉中杏と言います。安西さん、バレるとしてどのぐらいの時間がかかると思いますか? 」

「そうだねー。早ければ一日、遅くても一週間ぐらいかなー。誰がどの偽札をどこで使ったかなんて現代では判別できるようになってるだろうしねー。コンビニなんて監視カメラだらけだからばれたら一発よ、一発ー」


 安西は物事がそうそううまくいかない、ということをよく解っており、吉中杏の思い付きがいかに軽率であるかをたしなめようとしていた。そもそも、犯罪に手を染めるのは竜円寺の望んでいる形とは違うだろう、ということも理解している。そんな中で、まだ幼い子が犯罪の首謀者として考えていることを実行させるのをよしとはしていなかった。


「まあ、やり方がないわけでもないんだけどねー。ただ、私たちのやろうとしてることって異能力者は悪いことをする人たちなんだってイメージを植え付ける行為になるわけじゃない。そんなことを竜円寺さんが素直に受け入れるとは思えないんだよねー。やるならもっと別の方法で、増えたり減ったりしてもおかしくないようなものをこっそり増やして、それをお金の形に変えて運用するような……そんな方法があればいいんだけどねー」


 増えてもおかしくないもの、と言われて、杏はハッとなった。竜円寺が向こうの世界から持ち込んでいるというあっちの世界の金貨。これは物理的にどれだけ増えていてもおかしくないものではある。そもそもこの世に存在しないはずである、存在してはいけない物質として蓄えられているものなら、増えたところで犯罪にはならないんじゃないだろうかと、杏は思いついた。


「方法、あります! 今思いつきました! 」


 杏は机をガタッと揺すり立ち上がり安西の顔に詰め寄る。安西は少し身を引き、杏と思わずキスしてしまいそうな近さから離れる。


「方法があるなら一応聞いておくけど、大体の方法は使えないとは思うよー。で、どんな方法を思いついたのー? 」

「竜円寺さんのアイテムボックスの中の、向こうの世界の金貨です。この金貨は他の世界から持ち込まれた金なので、どれだけ交換してもおかしくないはずです。勇者だったんですから十万枚、二十万枚と持ってても不思議はありません。それに竜円寺さんが同意してくれるかどうかまでは解りませんが、そもそもその金貨だって世の中に出回るのはおかしい代物なんです、それがいくら増えたところで問題にはならないと思いませんか? 」


 安西はその方法なら確かにばれる確率はぐっと下がるが……果たして竜円寺がそれに納得するのか? というほうに頭の考えを即座にシフトさせた。彼女もその方法なら確かに足は付きにくい、と考えた。


 竜円寺を説得するだけの材料を引き出せるかどうかも問題だが、あまりに大量に同じ金貨が出回りだすと、これは何処の国の金貨なのか、いつの時代のものなのか、そしてそれがどうして今になって大量に流通し始めているのか、という説明がいずれ必要になってくるであろうことも予測は出来た。


「割と良いセンは行ってるんじゃないかなーとは思うけど、竜円寺さんを納得させられるかどうかが問題だねー。あの人の持ち物をひたすらコピーして同じものを作り出すことは負荷的には難しいものじゃないけど、それを良しとしてくれるかどうかかなー」

「竜円寺さんは……こんな私でも何か役に立つことはあるから、自分を変な能力の持ち主だからと言って卑下する必要はないって言ってくれました。おかげで私も気持ちが楽になったところもあります。むしろ、そのおかげで今こうして安西さんと普通にお話しできている部分もありますし……それまではひそひそ声で人の悪口言ったりするのが聞こえたりして、ちょっと人間不信だったところもありますけど、それでも今日こうして人と向かい合って話せる勇気を出せたのも竜円寺さんのおかげなんです。だから、何かの形でお礼ができるようになりたいです」


 勇気を振り絞って告白する杏に安西はまあ、まず座りなよと落ち着かせてから自分のことを語り始める。


「それはわかるよー。私も持ち物が増えたり減ったりして個人的にはお得な能力だなーとは思ってるけど、万引きを疑われたこともあったかなあ。実際にご飯代も少なくて済んでるし、私としてはお得かなーって思ってるだけのスキルだったけど、これでも増やすべきものと増やすべきものじゃない物の分別はつけてるつもりだけど、今回は黒寄りのグレーゾーンかなーって」

「ともかく、竜円寺さんに相談しに行きましょう。せっかく使える異能力なんですから、使える分は便利に使うべきです。私が聞き取ってしまったのもそうですし、ここに好きなだけ増やせる異能力者がいるのもきっと運命なのかもしれません。みんなで幸せになるためにがんばりましょう」

「まあ、口添えだけならしてもいいかなー。でも、説得は自分でやるんだよー、自分の意思でそれを推し進めるなら、杏ちゃんが自分で竜円寺さんを説き伏せるのが最低条件だからねー」


 そのまま会計をして二人、竜円寺の所へ戻る。みんなが帰った後の片づけを竜円寺はまだ行っていた。


「おや、たしか安西さんと吉中さんでしたね。どうしたんですか、忘れ物ですか? 」


 竜円寺は口調を変えず、忘れ物なんてあったかなあと言いつつ後片付けの続きを始める。


「あの、竜円寺さん。ご相談があります。お金のことです」


 杏は精一杯の勇気と知恵を振り絞り、竜円寺を説得にかかった。竜円寺は聞かれてしまっていたのか、とバツの悪そうな顔をするが、手持ちの金貨を増やす案には消極的反対、という姿勢を見せた。


 たしかに、現実に持ち込んでいる時点で何らかの問題が発生する物的証拠であり、その持ち込んだ量にも限度があり、そろそろ限界がくることもわかっていたので、二時間に及ぶ説得によって最終的には折れた。


「わかりました。お二人の言う通りにしてみましょう。ただ、問題が起き始めた時点で手を止めようとは思います。いくらなんでも無限に資金源があるということは知られてしまうだけで自助組織ではなく犯罪組織だと認識される確率が高くなりますし、能力を知られた安西さんが何らかの犯罪組織によって拉致されてしまう可能性もありますからね。あくまで今増やせる量、ということで納得はしようと思います」


 杏は賭けに勝った。そして安西は食事をたっぷりと用意してもらい、食事をしながらの金貨の無限増殖に手を付け始めた。


 竜円寺はこれで良いのだろうか、と思い始めた。自分が思い描く理想図というのはこういう形だったのだろうかと。しかし、この異能力の便利過ぎる一面と共に、秘密を共有するたくましい仲間が増えたという考えは確かにあり、この三人と松江を含めた四名の秘密の共有は続くことになる。


 まずは組織を充実させていくことが先決だからこれは必要な資金集めなんだと自分を納得させ、安西が金貨を増やしていく様を見届けることにした。

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金は海外から持ち込む時に税金(消費税?)がかかるので、こっそり金を持ち込んで脱税で摘発されることが時々起きます。 ゆえに故買屋等にある金額以上の金が持ち込まれると警察に連絡する義務があったような!? …
金貨無限増殖チート!
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