102:こんなはずでは
side:竜円寺竜彦たち
「竜円寺さん、再生数かなり良いセン行ってますよ。この調子なら百万再生も夢じゃないですよ。アクシデントのおかげとはいえ一気に再生数が稼げた感じです」
撮影係の松江君が竜円寺に動画配信サイトのアドレスを見せて、再生数の上昇っぷりを解説している。この調子ならもうすぐ百万再生に手が届くらしい。百万再生がどのぐらいか具体的にどのぐらいの波及をしているかどうかは竜円寺自身解っていないが、単純計算で百万人に自分のやったことが広まった、程度の認識しかない。
一億再生してくれればほとんどの日本人がみた、ということになるだろうから目標はそこだな。まずは全体で一億アクセスを目指すのが良いだろうな。
「松江君、我々は動画配信者ではないんだ、動画の再生数よりも、我々異能力者が暮らしやすい過ごしやすい、大手を振って異能力者だと言っても差別されたりしない、そういう世界を目指してるんだよ」
「でも、こうやって認知されていくことは何よりの第一歩じゃないですか。まずは知ってもらうことから始めないといけません。その第一歩が無事に踏み出せたということに違いはないです。もっと知ってもらいましょう、私たちのことを。その上で、竜円寺さんが望むような社会に持っていくことが大事じゃないですか? 」
「それはそうなんですが……なんか、予想と違ったところで盛り上がっている感じがしてあまりいい気はしませんね。今度はどんなトリックを使ったのか、とか言われてますか? 」
竜円寺もコメントを読みながら、自分達に対する意見を吸収している。
「山火事は自演だったのではないか? という話がありますが、自演するにしても長回しノーカットで動画撮影してる間に誰かが火をつけに行かなきゃいけないし、火付けだったらそれはそれで出火原因が火付けか自然発火かは判別できるだろうから自然発火の可能性は高い、とコメント欄でレスバしてる人がいますね。この人も味方ってことでしょうか、ありがたいことですね。それに自演してたとしても、水魔法を投げ込んでいた姿と空を飛んでいったのは確実ですから、自演説が有力になったとしてもそっちの説明がつかないので」
「あまりコメント欄が荒れるのは嬉しくないのですが……まあ、それはそれとして、賞状貰いました、という報告動画はあげておくべきですかね? 」
竜円寺自身、まさか自分が表彰されるとは思っていなかったために今回の出来事はちょっとした驚きであった。だが、正しい方向に自分の異能力を使えたのは嬉しい出来事でもあるし、恐怖心を煽ろうという気は全くないので素直にメディアにも顔を出したし賞状も受け取った。金一封があればなおよかったが今回はそれはなかった。
「やはり、この間の動画の鎮火作業で賞状をもらいました、という短めの動画はアップロードして好感度を上げておくほうがいいのでしょうかね」
「ぜひそうするべきですね。何事もなかったのようにふるまうという方法もありますが、私も異能力者として社会の役に立ててうれしく思っています、という方向性のほうが支持者を集められるでしょうし」
「では、次回の動画はそれでいきましょう。それ以外の方針についてですが、私のチャンネルにも実は自分は異能力者なのではないか、という相談が何件か寄せられています。その中で明らかに異能力である人のところへ赴いて相談に乗る、という形でしばらくは活動したいと思います。もし、その本人の了解が得られればその人にも動画に参加してもらう、というような形でどうでしょうか」
ふむ……と竜円寺は考える。確かに賛同者が増えました! と宣伝して異能力者の集まりをよくするのは大事なことだ。しかし、異能力者である以上個人情報の保護にはしっかりとした対応をしなくてはいけない。撮るだけ撮って、実際に動画として流していいかどうかは本人の了承を取ってからでないとだめだ。
最悪無理矢理異能力者を作り出してしまうという手立てはあるが、それで増やしたからと言ってうまくコントロールできるかどうかはダーククロウの一件でもうおおむね見えてしまっている。やはり、無理をするのはあまりよくない。物は試しにときつめの催眠とスキル付与でもって自由に活動をさせてしまったが、それはかえって警察組織側の警戒を強めてしまったことになる。
最終的には対決することになるだろうが、その際に市井がこちらに味方に付いてくれるような形に持っていけるのがベストだ。その為には、まず客寄せパンダとしての役割は存分に受ける必要はあるだろうな、と考えを固めるに至った。
「では、とりあえず賞状をもらった経緯とあの時現地で何をしていたのか、というのについて色々と説明する必要がありますかね。空のガラスのコップと賞状と、それからネット記事を引っ張り出してご報告、という形で一本短めの動画を上げることにしましょう。ガラスのコップに私の水魔法で水を汲んで自然に飲む、というのを見せて、あれがCGではなく実際に出来ることなんだということを立証できますよね? 」
「うーん、かえってまたマジック臭いと言われそうな気がしますが……でも報告は大事でしょうね。とりあえず短い動画になるでしょうから「ご報告」とかで短いタイトル短い内容でサクッと撮って流してしましますか。あくまでご報告ですから、凝った演出とかも要らないでしょうし」
早速カメラとガラスコップの用意をして撮影の準備を始める。この間貰った賞状も机の上に置き、画面に向かって笑顔の準備。カメラとマイクは最初の動画と同じポジションにセットすると、松江君からの動画の録画開始の合図とともにカメラに向かって話しかける。
「どうも、皆さんおはようございます、竜円寺竜彦です。前回の動画の再生誠にありがとうございます。本日は先日の動画の一件につきまして、ご報告というかですね、こんなことになっちゃいました、という話をさせてもらおうと思います」
いつもの笑顔を崩さずに竜円寺がカメラに向かっていつもの口調で話しかける。
「先日の採石場の動画の終わりのほうで、山火事が発生していたんですね。正しくは動画の途中あたりから煙が上がっていたのを動画を見返してこちらも確認した次第ではありますけど、そこについて私が空飛んで行って現地に駆け付けて、水魔法で初期消火を成功させたということで、地元の消防署から表彰されまして。こちらが賞状になります。
感謝状 竜円寺竜彦殿。貴方は……まあ、時刻と場所は伏せておきます。発生した林野火災を直ちに発見して初期消火、鎮火、消防への連絡等に協力された結果大事には至らず防止した功績は誠に顕著で他の模範であります。よってここに消火活動の協力者として感謝の意を表します。
……だそうです。これで、二つ私が異能力者であることを証明できたことになると思います。空を飛んだことと、水魔法で直接木に放水して火を鎮火させた……後で聞いた話ですと、完全に鎮火したわけではなく、地面の下ではまだくずぶっている個所があったらしいですが、林野火災ではこの時期、地面の下で熱を持って燃え続けて、消えたと思ったらまた発火する、というケースが少なくないそうです。それも大量の水を出来るだけ広範囲に撒いておいたおかげで最小限に食い止められた、という話らしいです」
ここで竜円寺が指先から氷と水を取り出して一口飲み、氷魔法も水魔法も使えるんだぜ、ということをアピール。
「皆さんにもう一度説明しておきます。異能力は、ありまぁす。こうして私が消火活動に貢献できたことがその証拠にもなるんじゃないでしょうか。ご意見ご感想もお待ちしております。後、今後もこう言った奉仕活動や社会活動にも協力が出来ればいいなと思っております。竜円寺竜彦でした。チャンネル登録といいね、よろしくおねがいします」
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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。
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