左の散歩道
夜中一人で散歩をする。
いつも自分が通勤で通る道、小さい頃通ったであろう懐かしい道、まだ未開拓の道、様々だ。
夏の夜の昼間より少しひんやりする夜が散歩をするベストな夜だ。
涼みながら考え事をし、景色を眺めながら月や星を眺めながら歩く。目的地は決めていない。ただ歩く
最終的には家に戻れればいい。
今日は未開拓の道を歩く。
灯りは少ないが月明かりで十分辺りを見渡せる。
心地良い風に吹かれながらのんびり歩いていると
十字路に差し掛かった。さぁどちらに行こう。
左右前の3択、もどかしい全て練り歩きたい。
だがそんな事をしていると出勤時間に確実に間に合わない、これが連休であったらなど考えてると思いついた。そばに落ちていた枝を立てた。
そっと指を離す。 ポト… 左を指した
今日は左だ。
道は先ほど通って来た道より灯りがない。
月明かりだけで行けるか不安だが決めたことだ行くしかない。
突き進んで居ると左側から
ミテ…ミテ…ミテ…
と聞こえた気がした。
声がしたような気がした方を向くが何もない当然だ。
自分が歩いているのは住宅街だ、敷地を仕切る塀が建っていてしかもそこは空き家になっている家だ。
だが塀には穴が空いていた。そこから聞こえたのかと少し耳を澄ます。
ミテ…ミテ…見で!!
!!!!!
びっくりして後ろにのけぞる。
少しの冷や汗と鼓動が早まった。
ドキドキしながら穴を覗き込むと、そこには何もない。聞こえたものは気のせいだ。気にしすぎだと、自分に言い聞かす。
今日は帰ろう。引き返そうとした時、
『見て』
はっきりと聞こえた。これは塀のうちからではなく
自分の真左、囁きかけているような近さだ。
脂汗が出てきた。恐る恐る左に視線をやる。
首だ。首がこちらをまじまじと見ながら笑い、語りかけてくる。
みてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみて
その後は全力疾走だ。来た道をすぐに戻った。
玄関前に着く頃には汗で服はびしょびしょ、息も上がってしまっていた。
シャワー浴びて出勤時間まで寝ようと考え家に帰った。