5章 星と夢の記憶
エルンスト家に今年生まれたのは、星子と夢子の双子だった。星子は未来を予知でき、夢子は夢を自由に渡り星子の予言を伝える事ができる。それが、ジェラールとソーンだった。両親は双子の面倒を見ながら星子と夢子の研究に取り組んだ。
やがて月日は流れ、悲劇の晩。
それは一瞬の出来事だった。私は寝ていたけれど、物音で目が覚めるとそこに30代前半の白髪の男がいた。
翡翠の瞳だった。眼鏡をかけていた。
そして、考える間もなく殺された。
僕もまた音で目が覚めた。目の前に知らない男が立っていた。そばでソーンの力が抜けていく。
男は僕を見るなり一目散に逃げていった。
何故?なぜ僕だけ助かってソーンは死なないといけない?。その後、また男は戻ってきた。だが、様子がおかしい。さっきよりずっと人間らしい。やがて彼は外へ出て、大きな声をあげた。
「憲兵を呼んでくれー!エルンスト家が…」
そこで記憶は途絶えた。
だが、記憶を見てはっきりした。
家族を殺したあの男は、
「あの男は、僕を育ててくれたロッタ・フェアレーター
と言う者です」
「だが、ロッタがやったという確証は?それがないと罪に問えない」
「あゝ、そうだ。それに、お前の言っている事が真実かも分からないのに…」
「ロッタから鍵を押収し、エルンスト家に鑑定士と行けば、何かしら見つかるでしょう。それから、これを」
渡したのは、エルンスト家の手記だ。
「エルンストの…手記?」
「はい。そこに書かれている星子のページです。そこに記されている通り、星子には幼児期健忘がない事が特徴的です。ですが、僕の記憶は4歳を境に閉ざされていた。考えられる理由として、酷く辛い出来事を目の当たりにしたから。とか」
場は酷く凍りついていた。そんな中、隊長と思わしき人物が兵に一喝を入れた。
「総員、ロッタ・フェアレーターを拘束せよ」
そこからの事は、どんな買い出しよりも早かった。
ロッタを拘束し、エルンスト家の検証を行い、裁判というように一年が過ぎていった。裁判では、ロッタに実刑判決が出て、一生牢屋から出られないらしい。また、動機は、星子である僕をエルンストから奪うためのものだったそうだ…それ程に星子の価値は高い。夢子もそうだが、ソーンの夢子の発現は遅かったため気づかずに殺した。と言っていた…。