序章 今年14の少年
著:霜月れい
作品説明:
『エルンストの手記』
星子と夢子彼らは2人で1人の存在。数100年に一度ずつ現れ、消えていく。そんな彼らが、現れると在世に必ずナニカが起こる。それは厄や奇跡…と言ったものであり、避ける事は出来ない。はたして、この子達に何が起こるのやら…。なあ、ジェラール、███
ふとした瞬間、何かによばれるような感覚になる。
何かによばれて、意識をそちらへ傾けると幼い女の子が何処か懐かしい風景の中に立っている。マレット髪で一つ結びのその子は何処か見覚えがある。
貴女は誰ですか?
一度、女の子に聞こうとした事があった。
だが、それは掠れた空気になり終わった。声が出なかったのだ。金縛りのようなふうに。
しばらく女の子はその場に立っていたが、やがて口を開いた。
“エルンストの屋敷”
女の子は確かにそう言った。
続けて、そこに真実は眠ると、言い残す。
そしてまた僕は、現実へと戻っていく。
「また、寝てたぞ。ジェラール」
「あ、ロッタさん、いらしていたんですね」
僕の名前はジェラール、14歳だ。
ロッタさんは、僕を養子として家族に引き入れてくれたこの街唯一のお医者さんだ。
「寝るのもいいが、ちゃんと仕事をしてくれよ」
「分かりました」
僕の仕事というのは足りなくなった薬の調達や、家事の事。
「ロッタさん」
「なんだい?」
「一週間の休暇をもらっても良いでしょうか?」
「それは、何故?」
「最近同じ夢を見るのですが、そこに出てくる景色に見覚えがあって…突きとめたいんです」
ロッタさんはしばらく悩んでいる様に見えた。ロッタさんの家事は壊滅的だからだろうと思った。
それから暫くして、ようやくロッタが口を開いた。
「一緒に行こう」