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21.良策

 皇帝補佐官のヴァイオスは、内務大臣の執務室で説明を受け、僅かに渋い顔をした。


「その様な大事であれば、まず、私に教えて頂きたかったです」


 大臣の執務室は、皇帝の執務室をそのまま小さくしたような部屋である。吊り下げ型の燭台はなく、部屋の四隅に内務大臣の背の高さほどの燭台が立っている。


 内務大臣の座る執務机の背後にある窓からは、町が見える。朝、降った雪によって、町はうっすらと白く染まっている。今は止んでいるが、すっきりとしない空模様である。


 内務大臣は、薄く微笑み、口を開く。

「陛下の命に係わる大事であるからこそ、先に陛下にご報告し、居を移されるよう進言致したのです」

 ヴァイオスは、沈黙した。内務大臣の言っていることは間違ってはいない。


「どちらまで行かれるのですか」

「ウェリヴァルスが良いかと。あの辺りは、冬でも気候が暖かいですし、町の様子も良い。あそこのウェリハール城は、100年前の皇帝が愛人の為に作った城ですから、こじんまりしていて警備が容易です」

「行き帰りの警備は?ウェリヴァルスまで、優に十日は掛かりますよ。この間に狙われては元も子もない」

 アヌログは、思わず笑った。

「補佐官殿。心配なのは分かりますが、何の手も打たず、ここでじっとしているのも良策とは言えません。皇帝陛下の兵をお疑いですか?言い出せば切がありませんよ」

 ヴァイオスは、またしても黙り込んだ。確かに、じっとしているのも良策ではない。

「警備には、あまり目立たない格好をさせて下さい。馬車も格を落として。でないと、陛下が移動中なのがバレバレですから。貴族の、暇な五男坊の様な様子で。宿は私が手配します。宜しいですね」

「勿論。御助言頂き、ありがとうございます」

「こちらこそ、大臣閣下にあれこれと根回しをして頂いたようで、感謝申し上げます。それにしても、陛下の命が狙われているなどと、貴殿に報告してきたのは何方でしょう?」

「正体は言わない約束です。元は一味の者で、罪悪感から私に知らせてくれたのです。一味の事を教える代わりに罪を問いません。陛下の了承は得ております」

「成程。内務大臣の人徳あっての事でしょう。重ねて感謝申し上げます」

「いいえ」

と言って、アヌログは、にっこりと微笑んだ。


 その後、ヴァイオスは、皇帝とも話し、自分は首都に残ることにした。あくまで休暇では無いので、秘書官を付けることにした。身の回りの世話もできるリメリオと、文書作成の専門家のラウネンだ。


 半月後、ヴァリスマリス一行は、ウェリヴァルスへ向けて出発した。馬車3台、騎馬20騎の、極めて控えめな隊列であった。

 

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