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ある騎士の2度目の恋  作者: ダイフク
24/28

24.これまでとこれから



ユラニア王国は、実はこの大陸最古の国だった。

周りを山や海に囲まれていた為、他国に知られる事はなかったが、最初にこの地に降り立ったのは、100人程の人々だった。


彼らは次元移動で、突如として現れ、この地に住み着いた。

そして、その次元移動こそが落ち人多発の誘因であったと、王族の禁書には書き記されている。


ユラニア王国へは、実に様々な落ち人が現れた。そして、彼らはこの大陸にその後王国を作ったもの達とは、一線を画す様々な物をその子孫達に残してしまった。


それはこの世界において異質で、争いの元にもなりかねないものばかり。そこで、平和を保つ為、王族は考えた。周りが追いつくまで、隠せば良い。幸い他の国とは交流がない。ただ一方的に監視をしているだけだ


そして、国境警備にあたる辺境伯の城の地下倉庫には、開発された様々な道具がしまい込まれる事になった。



数百年、落ち人の頻度は少なくない為、ユラニアは、更に隠すものが増える一方で、他国は追いついては来ない。差は広がるばかりとなっている。



「今回の温泉事業のように平和利用の形を取りながら、少しづつ色々な知識を表に出していくつもり。」

「そうだね。コルニエ王国をいっそリゾート大国にしてみる?」

「あ、それ、いいかも!」

「ちょっと経済的に厳しい今ならば、進めやすいと思う。」

「そうね。うん。今なら先日の恩もあるしね。やってみるわ。あの国は面積が広いだけに何でもできそう。」

「楽しい事が良いわね。」

「そうね。楽しいこと。それで儲かるのが一番だわ。」


南のユラニアには降らない雪の中、落ち人が絵で残したウインタースポーツ。もしかしたら、その能力のある落ち人がどこかに隠れているかもしれない。


芝生を滑るソリを雪の上で滑らせれば楽しいだろう。

そう考えれば、先ずはコルニエ王国への交渉だ。


「募集しましょう。リゾート大国のアイデアを。」

「ラリエット、さっきまで疲れてたのに、凄いわね。」

「楽しい事は今すぐしなきゃ。」

「頑張れ、女王様。やっぱりあなたが適任だったわ。」

「自分でもそう思う。後押ししてくれてありがとう。あなたがいて良かった。」



ラリエットは、アイーダをギュッと抱きしめると、慌てて城に戻って行った。

やっと何とか落ち着いたらしいコルニエ王国は、また大騒ぎになるだろう。そうすると、当分アーロンには会えない。


アイーダは、大慌てなアーロンを想像して、クスリと笑い声を漏らした。


「何を笑っているんですか?」


振り返れば、息がかかりそうな程近くにガルロフの顔がある。何故か再会した頃より若返っていて、こんな近くで見ると少し焦ってしまう。


「な、何でもないわ。ねぇ、最近若返ってない?」

「お嬢様の近くにいる為に、前より鍛錬に力を入れているからでしょうか?」

「肌艶も良いし、髪だって……。」

「そこは、気を使っているんです。身綺麗にしないとお嬢様に嫌われてしまいますから。」

「わ、私は、そんな事……。」

「騎士団長殿も、常に汗臭く無いように気を使っていらっしゃいますよ。」


そう言われてみれば、騎士団長は、常に身綺麗で、髪一筋の乱れもなく、そばによると爽やかな柑橘系の香りがする。


今、近くにいるこの男からは、少し蠱惑的な香りが仄かに漂っている。

懐かしさしか感じていなかったはずなのに、今のガルロフは、異性の魅力を振りまき、何故か破壊力が半端ない。


─もしかして、誘惑されてる?どうしよう。なんだか最近ドキドキする。こんな男だった?


身綺麗にしたガルロフは、男臭くて頼りがいがあり、そして、色気がある。耳元で話をされるとゾクリとしてしまうのだ。


「あ、用事を思い出したから、私は行くね。またね、ガルロフ。」


アイーダは逃げるようにその場を立ち去った。



******



アーロンは、コルニエ王国の王の間で、今では宰相に就任したカインとテーブルを囲んでいた。


「つまり、温泉同様に、共同事業で、リゾート開発をしようと言う事か?」

「その通りです、殿下。」

「確かに温泉事業は、現時点で成功し、我国に大きな利益と人々の働き口を提供してくれた。それは感謝している。だが、何故我国にばかり事業を展開するのだ?」

「ご存知の通り、ユラニアは小国。国土も狭いので、大掛かりな事業には適していません。だが、この国はまだまだ開発可能な土地があるではありませんか。活用しなければ、勿体ないと思いませんか?」


王も各大臣も無言で頷いた。だが、ユラニア先導型の事業を次々に行う事は、ひいてはユラニアの属国となるようで、その判断は難しい。


「我国は、この国を属国にするつもり等、全く考えてはおりません。ただ、アイデアを提供し、共に豊かな大陸を目指そうと思っているだけです。そうですね、貴国が躊躇されるならば、他国にこの話を持っていっても構わないのですよ。」

「ま、待ってくれ!」


大臣の一人が慌ててカインの言葉を制した。他の国に?この美味しい話を持っていくと?


「私の提案内容は以上です。よくご検討頂き、早急にご決断下さい。」


カインが護衛と姿を消すと、賛成派と反対派で激論が交わされた。属国にしないと明言されたのだ。信じて、利益を甘受しようと言う賛成派。

ほんの少し前の反乱を鎮圧した圧倒的な強者であった国が、その気になればすぐにでもこの国をどうとでもできるので、今は国防に力を入れるべきだという反対派。


どちらも譲ることなく話し合いが続けられた。


そして、最終的に王太子であるアーロンが、ユラニアの真意を探る為に、ユラニアに派遣される事が決まり、彼が全権を委ねられる事になった。


アーロンとしては、賛成派と同意見だが、反対派の杞憂もわかる。安易には考えられないと思っている。

全員の意見を胸に、アーロンは、ユラニアに旅立った。




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