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ある騎士の2度目の恋  作者: ダイフク
22/28

22.幽閉された国王



2人は、場所を移し、アイーダの部屋に来た。

この屋敷で最も安全な場所は辺境伯と、その娘の部屋だから。


「コルニエ王国に関する事だから、王太子とガルロフも呼んで。それから、辺境伯と騎士団長も。」

「父上も?わかったわ。」


アイーダは、廊下に出て、待機する騎士に辺境伯達を呼びに行かせ、素早く人数分のお茶の用意を整えた。


呼ばれた彼らは一様に深刻な顔をしている。アイーダ達が、彼らを呼ぶのはよっぽどの事だからだ。


「揃ったわね。コルニエ王国で叛乱が起きて、王が幽閉されたわ。例の温泉事業反対派よ。」

「そんな!父の周りは影騎士が守っていたはず。こんな数日で劣勢になるのは考えられない。」

「彼らが裏切ったのよ。15年前には命を賭して仕えたと聞いた事があるのに、時代が変わるとその関係は弱くなるのね。」


ため息まじりのラリエットに、ガルロフは首を横に振った。


「違う。15年前、王を守った一族は、働き盛りを失い、コルニエを離れたんだ。今の影は財務大臣の息がかかっている。」

「あぁ、それでなのね。反対派の先鋒は財務大臣だもの。調べの結果、彼は何年も少しづつ横領を重ねていたようね。今年、コルニエの財務状況が悪くなったので、いっそ王家を乗っ取ろうとでも思ったのかしらね。」


「横領!?」


驚くアーロンにラリエットが頷き、アーロンの顔が一気に血の気を失った。


「まさか、だって、財務大臣は、母上の兄なのに……。それなのに、2人を裏切って?」


ガルロフも彼を疑った事はなかった。15年前、彼も反乱のメンバーで、力を尽くしていた。どちらかと言えば、目立たない温厚な人柄で、身分の低い者にも優しい人だった。彼には誠実な印象しかなかったのに。


「ふむ。この事態を放置すれば、既に取り掛かっている温泉事業にかなりの影響が出そうだな。もう基礎工事は済んで、国内での部材製作も進んでいるのだろう?」

「その通りですわ。これを横取りされては、被害額が大き過ぎます。放ってはおけません。辺境伯、お手伝頂けますね。」

「良いだろう。どうするね?正面突破するか?それとも海と山の両面から行くか?」


アーロンは驚いた。ユラニアは小国で、コルニエは大国だ。戦力だって到底叶わないだろう。

それなのに、正面突破?自殺行為だ。


「止めてくれ。そんな事をすれば、この国にどれ程の被害が出るか。頼むから落ち着いて考えて欲しい。」


だが、周りの人間はニヤニヤするだけで、焦る様子すらない。他国の戦力が分からないのだろうか。


「小国だから弱いと?誰がそんな事を決めた?」


辺境伯が口角を上げてニヤリと笑った。


「小国を舐めたら駄目だ。それにな、王子様、温泉事業で損をするとうちの女王が言ってるが、損するのは女王だけだ。なぁ、ラリエット、あれ、お前の小遣いだろ?」

「もう、せっかく内緒にしてたのに。どうしてバラすんですの?意地悪ですわ。」

「小遣い?あの金額が?」

「まぁ、そうね。だから私の一存で決めたでしょ?私だって一国の女王なんだから、国のお金を使う時は、議会を通しているわ。」

「……。」


そんな話なのだろうか?辺境伯は豪快に笑っているが、アイーダは苦い顔をしている。


「だが、ラリエット、ひとつ問題がある。」

「何?アイーダ。」

「人手が足りない。」


戦力ではなくて人手?混乱するアーロンに、他のもの達も、あぁそうだなと、納得している。説明をして欲しい。


「だから、辺境伯に頼みたいの。2週間で片付けて戻って下さいね。」


2週間?往復で1週間は必要で、残りは1週間だけ?


「ううむ。忙しいなぁ。となると、出発は明日か?」

「その通りよおじ様!あ、と、失礼、辺境伯様。」

「仕方ないな。じゃあ、準備するから、必要情報の書類を用意してくれ。おい、行くぞ。」


辺境伯は騎士団長を連れて出ていった。

話についていけていないアーロンとガルロフを気の毒そうに見遣り、アイーダも立ち上がった。


「私も支度を始めるわ。ガルロフとアーロンも行く?」


まるでお茶しに行く?とでも言うように声をかけられ、2人は、コクコクと頷いた。


「じゃあ、支度する前に、少し練習しようか。ついてきて。」

「ねぇ、あれ使うの?私も行きたい!」

「女王様は駄目。」

「はぁい。」



連れていかれたのは、地下室だ。


「はい。これ構えて。反動があるから、気をつけてね。そうそう、腰だめにする感じで、足をしっかりと。腰入れておかないと、後ろに吹っ飛ぶから。」


サクサクと支度され、構えの姿勢をとらされた2人は、その武器に目を丸くする。これは何だろう?


その視線に答えるようにアイーダが自分で見本を見せた。


ガガガガガガガ


彼女が腰で構えた武器が遠く離れた大岩を弾き飛ばして、大穴を空けた。


「いつもは、他国に合わせて剣や槍を使うんだけど、人も時間も足りないから、仕方がないわよね。」

「お、お嬢様、これは?」

「名前?自動小銃よ。」


こんな武器で攻め込まれたら、コルニエ王国はひとたまりもない。もしかして、国を滅ぼすつもりなのだろうか?

アーロンは絶望で目の前が真っ暗になった。


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