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ある騎士の2度目の恋  作者: ダイフク
13/28

13.消えた婚姻



婚姻承諾の返事を出す直前に、それは突然届いた通知で無効になってしまった。


突然のユラニア王国の王の譲位と、前王の婚姻申し込みの無効化、更に、その翌日の女王即位と王配の決定。

そして、一日王の婚姻。


どこの国も豊かなユラニア王国に、関心を持ち始めていた所でも、婚姻による縁続きの拒否のような発表に、困惑を隠せない。

コルニエ王国もそうだ。


アーロンは、ラリエット王女と婚姻を結び、年々豊かさを増すユラニアの秘密を分けてもらおうと思っていた。

必ずそこには、コルニエ王国を救う手段があるはずだと思ったのに。


唯一の希望を砕かれ、次の対策を考える為に、アーロンはガルロフの情報ギルドに向かった。



「もう一度言ってくれ。ガルロフがどうしたと?」

「引退したのです。突然の事で、我々にも分かりません。ただ、今後は一切関わらないと言われました。」

「それだけでは分からない。彼と話をさせて欲しい。」

「無理ですよ。あの人が姿を消したいと思えば、我々にはその行方を辿ることもできません。」



呆然と城に戻り、父王の執務室へ向かった。

たった数日で何が起きたと言うのだろう。目の前が真っ暗になった気がする。


「父上、アーロンです。」

「……。」

「父上?」


執務室の机に突っ伏すようにローエンが倒れていた。


「誰か!医者を呼べ!」


慌てて駆け込んでくる、護衛や文官。大臣達。

混乱する中、着いた医者の指示に従って寝室に父王を運んだアーロンは、医者から驚く事を伝えられた。


「それは、真なのか?まさか、父上が……。」

「はい。陛下もご存知です。」


かつて15年前の戦いで左腕に負った傷は、腕を麻痺させ、そして、徐々に体を弱らせていた。

当初、忙しくしていた事もあり、腱を切られた腕が動かなくなっただけど見逃していた毒のせいだ。

腕の麻痺で痛みを感じなかった為、手遅れになったと言う。


「治せないのか?余命1年だなどと、私を謀るつもりか?」

「いいえ、殿下。」

「認めない!私は……。」

「ただひとつだけ可能性はあります。」

「なんだ?教えてくれ!」

「ユラニアの医術が進んでいる事をご存知ですか?」

「そういえば、ガルロフが怪我が早く治る軟膏の話をしていた。」

「そう、それです!」


この医者は、ガルロフと親しくしていたなと、アーロンは思った。先日の怪我の状況もこの医者が診たのかもしれない。


「かの国に援助を頼んではいかがでしょうか?」

「しかし……。」


今は無理だという言葉を飲み込んだ。あの国は、今回の結婚騒動で騒ぐ各国へ、半年間の交流停止を宣言した。


「どうして、こんな時に……。」


しかし、父王の命はあと1年。そして、交流停止は半年。半年を無為に過ごせば、手遅れになるのは間違いない。


「陛下はいつ頃気が付かれるのか?」

「おそらく、2、3日内には気付かれるでしょう。」

「そうか。」


それなら1週間もあれば、意地でも政務に戻ろうとされるだろう。


─あぁ、どうして今、ガルロフと連絡がつかないんだ。彼なら何とかする方法を考えついてくれたかもしれないのに。


考えても彼はいない。家臣は王の体調不良で動揺していて頼れそうな者がいない。宰相もショックを受けて寝込んでしまった。


どうする?どうすればいい?



もっと落ち着いて考えていたら、アーロンはこんな行動をとることはなかっただろう。

アーロンが己の行動に後悔を感じたのは、城を飛び出し、一人ユラニアを目指して馬を走らせて2日目の事だった。


「私は何をしているんだ……。」


突然馬を止めて、一人呟く。朝も晩もなく走り続け、ユラニアまでの半ば近くまで来ていた。

ここから城に戻るべきか、秘密裏にユラニアに潜り込み、王家に何とかして援助を願い出るべきか。


一国の王子として、してはならない行動だった。

それでも体が動いてしまったのだ。戻って父の寿命を待つのは耐えられないだろう。


大きく息を吐き、ハッと掛け声をかけると、アーロンは手網を握りしめて、馬を走らせた。

ユラニアまでは最短であと3日。



******


半年間の交流停止は、ユラニアにとっても大きなデメリットがある。それでもラリエットがその政策を推し進めたのには理由があった。


密貿易


移民受け入れに寛大な国であると言うことは、良からぬ者が入り込む危険性を孕んでいる。

そこで、この期間に密貿易に関わる人間を洗い出し、今後の再発を防止するシステムを構築する必要があった。

半年でも少ないぐらいだとは思うが、それ以上は難しい。


幸いユラニア王国に入るには、2つの道しかない。交易路として利用されている、山道と港。山道のある山以外は途中険しい崖もあり、荷物を運ぶ荷馬車は通れない。

ただ山道も細く、荷物の運搬には適していない。

また開かれた港以外の海岸線も崖になっていて、周りも岩場だ。そして、通行証が無いものは、港の船から外には出られないよう柵が設けられている。

それでも密貿易は行われているのだ。


だから、この2箇所の監視網を厳しくし、この2箇所以外は、完全に利用できなくすれば良い。

そして、監視に適した人材を育て、派遣する。


そして、海にも山にも既に監視の目は向けられていた。


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