13話「共戦」
「さて、一つ聞いてくれるか?」
「おぅ、始めてくれ。成る可く手短に頼むな?」
「今回の件、共同戦線を張って、可能な限りで協力して欲しい事を僕達は望む。可能か?」
玲夜は今、丸いちゃぶ台風の机を二人で囲みながら一人の男性と話していた。椿とSは既に家に帰って来ていたが、違う部屋に今は連行してある。椿は特に何もしてないが、ドM気質な性格であるSは別の部屋に縄で縛り付けておいた、ついでに口にも布噛まさせて話す事も出来ない様にしておいた。傍から見れば目を逸らしたくなるかの様な虐待行為だが、互いに公認の上でやっている為問題はない。
そして今している話はかなり真剣な内容であり、今後の生活と命の存亡が掛けられた重要な話である為、今だけは嘗ての旧友の手を借りなければならない。玲夜はいつもより真剣な表情を見せる。
基本的にはあまりこんな厳しい表情を見せたり、畏まって堅物な口調で話す事は稀なので、本人としては苦労する事であった。
「答えとするなら、YESだな。今回の件は他の私設組織の奴らにも知れ渡ってる。恐らく襲撃時は皆、TEAM5の連中とそれに便乗して乗り込んでくるリジェネレイト共を駆逐するだろうな…」
個人的には嬉しい回答であった。YESと答えてくれなければ、他の奴らに共闘を申し込まなくてはならなかった。この中でも彼に頼むのが一番楽だろうと玲夜は感じていた。
「ありがとう「ミゲル」今回の一件は大事になりそうだから、誰かに助けを借りようと思ってたんだよ」
「まぁ大舟に乗ったつもりでいろよ、手助けはする。だが、報酬の分け前はおいしく頼むぜ?」
「言われなくとも……」
目の前に座るアンティークゴールドの髪、ストレートヘア(前髪は右流し)イケメンと言える程の整えられた美形の顔を持つ男の名前は「ミゲル・コナード」年齢は二十六歳だ。
今は個人で運営する私設武装殲滅組織「Code‐R」の隊長のポジションを任されている人物だ。「Code‐R」自体そんな大層な人数が所属している組織ではないが、決して少ない訳でもない。言わば「TEAM5」や「KILLERV」等と同じく、少数精鋭の組織である。内部構成は分からないが、決して弱いチームではない事は確かであった。
彼が家に来たのは少し前の事であった。昼が近付き、エプロンを着ながら食事を用意し、椿とSの帰りを迎え、昼飯を食べた後、玲夜は今後予想される襲撃に備えて誰かと共闘するべきではないかと考えていた。思い付いたら即行動、玲夜はスマホを使って彼に連絡をしていたのだった。
その後少し時間が流れた後、彼はちゃんと来てくれたと言う事だった。
そして私設組織を持つ前、嘗ては一人の軍人であり、一時期は国の命を受けてリジェネレイトと相対する為、前線で戦っていた人物だ。武装としては基本使用している銃はドラムマガジン仕様の軍用散弾銃である「AA-12」他にもマチェットナイフも愛用している。その他にも武装は山の様に所持しており、戦局に合わせて臨機応変に武装を変換していると聞く。しかし多くは実弾の兵器らしい。
ビーム兵器が普及している世界の中でも彼は変わらずに実弾兵装を使い続けている。ビーム兵器を使え、と無理意地はしないが、今の世界ビーム兵器が主流となりつつある為、個人的にはそろそろ武器を変えてほしいものであった。
ただでさえ実弾を無効化する強固な肉体を保有するリジェネレイトだって一部確認されていると言うのに、戦局に対応出来なれば、戦場では骸に化す事が定石であった。玲夜はこの事に対して、僅かながら心に煙の様なモヤモヤがあった。
そしてミゲルと玲夜は軍人時代と言う昔からの知り合いであり、付き合いも長い。更には玲夜とSが出会う繋がりを作ってくれた自分とSにとっては大切な人物だ。詳しい事はまた追々話すとして、まずは目の前の事についての話をするべきであった。
玲夜は口を動かし、話を続ける。
「いつ奴らは来ると思うか?」
「襲撃は恐らくだが今夜か、明日…って言った所だろうが……正直俺には分からん。元は職業軍人とは言っても、何でもかんでも俺は分かるって訳じゃないからな…」
二人は一旦互いに口を噤む。互いに目を合わせずに首を傾げて、僅かに下を俯きながら、腕を組み思考を加速させる。玲夜は何も言葉が出てこなかったが、ミゲルは彼より先に言葉を出した。
「そう言えば、俺に頼むのは全く構わないんだが「石動」とか「相楽」には頼まないのか?あの二人なら実力も折り紙付きだし、俺なんかよりも……」
ミゲルはまだ何か言おうとするが、玲夜がそれより上に言葉を被せる。どうやら、今ミゲルが言った「石動」と「相楽」と言う人物には何か事情がある様であった。
何処か暗い様な表情を見せる玲夜を見たミゲルは、そう感じた。
「雪兄ぃは外区調査が終わってないらしいし、双影に頼んだら、門前払いされそうだから頼んでないんだよ……」
「成程、色々事情ありっぽいな……あ、後お茶出してくれるのは有難いんだが、俺はスキットル持ってるから大丈夫だぜ?」
そう言うと、ミゲルは履いていた動いやすさを重視したズボンの後ろのポケットから、所属している組織のロゴが象られており、愛用しているスキットルを取り出した。
本来スキットルはアルコール濃度の高い酒を入れておくボトルなのだが、嘗てヤケ酒をして二日酔いして、最悪な目に合っているミゲルは、それ以降あまり酒を飲まなくなっていた。
その為恐らくあのスキットルに入っているのはアルコール濃度の高い酒ではなく、普通の飲料水だろう。そうでもしなければ、今目の前でゴクゴクと飲んでいる理由が分からない。
「昼過ぎから酒か?」
「酒はもう懲り懲りだぜ、今は代わりに炭酸水入れてんだよ。てか、お前も文字入りの湯呑み、何個持ってんだよ」
そう言いながら、ミゲルはスキットルを右手に握り、時折飲み口を自らの口に近付けて飲みながら、湯呑みを左手で手に取ると、中身を零さない様にしながら、じっくりと観察する。
「えぇっと、なになに?「勝ちに拘る奴は否定するべし」か、まるでスポーツマンを真正面から否定してるみてぇな言葉だなぁ、おい」
ミゲルはどこか嘲笑を見せるかの様な笑いを見せる。しかし玲夜もそんな彼に便乗するかの様にして僅かに嘲笑うかの様な笑いを見せる。そして玲夜も口を開く。
「だって、下らない勝負に熱くなっている奴を馬鹿にして怒らせるって、楽しいと思わないか?」
玲夜の悪い所の一つが露見する。玲夜は生まれつきなのか、それとも環境が彼を歪ませたのかは知らないが、自分が下らないと思った勝負をしている人を見下し、否定する事があるのだ。
特にスポーツとかに熱くなり過ぎている選手や指導者を容赦なく否定する時の姿はまるで否定して快感を得る程の勢いである事も稀にある。心に齎された歪みは取り除く事は難しい、消すのは簡単ではない、更に止める者も傍にはいなかった。
結果、心の歪みが時間をかけて、それが普通となる。それが今の玲夜だと言う事だ。他者の否定を何とも思わず、悪い事であるとも思わずに平気な顔をして蹴落とし、見下す。一見すれば愚者の甚だしい程に愚かな行動かもしれないが、それが彼の欲求を満たす行為の一つでもあった為、制御する事は出来なかった。
「まぁ、思考はそれぞれだ。別に俺は何も言わないさ…」
「あれ、もう行くのか?」
「手短に、と俺は最初に言ったぞ?用も済んだし、俺は戻るよ………あ、冷蔵庫の中のチョコレート貰っていい?」
「二つまでなら構わないけど」
「サンキューじゃ、貰ってくぜ」
そう言うと、ミゲルはその場から立ち上がり、足早とその場を立ち去って行く。確かに手短に済ませろ、とは言っていたがまだ家に来て長い時間は経っていなかった。あまりに早い退場に玲夜は少しだけ疑問の表情を浮かべた。
しかし、いつまで誰の家に居るかなんて、個人の決める事だと思った玲夜は疑問の表情をかき消すとその場に座りながら、ミゲルの背中を見送る。そして帰り際、ミゲルは一度玲夜の方を振り向くと、落ち着きのある表情と据えた双眸で玲夜に言葉を投げる。
「じゃあ……滅びゆく者の為に…」
「あぁ…」
その言葉の意味を彼は理解していた。理解する以前に、絶対的に理解する必要性があった。そうではなければ、戦う意味も守る意味も分からなくなりそうであった。
何の為に、何の大義があって、誰を守るのか、それを決めるのは自分自身ではあったが、戦う意味を失えば、戦士は戦う事など簡単には出来なくなる。
そうなれば、殺しを楽しむとか戦いを好む狂戦士にでも自らを凶変させなければ、何の為に戦うのか分からなくなるだろう。
今の自分には滅びゆく者を守る為に、一人の戦士として、仕える国を守る為に、そして自らが大切にしている仲間を守る為に戦っている理由がある。
そして、部屋の玄関の扉が開く音が聞こえた頃、別の部屋に連行しておいた椿とSが部屋から飛び出して来た。ミゲルが居なくなった事を察知したのか、ミゲルが扉を開けて十も数えない内に二人は部屋から飛び出す。
椿はこれと言って変化はなかったが、Sの事は縄で縛っておいたので、身動きがある程度取れない状態であった。
「あ、やっべ。縛った事忘れてた、今縄解くな」
「んんっ――」
口には布を噛まされている為、口から出る声はくぐもっており、言葉にもならないかの様な声しか漏れてこない。
玲夜は見兼ねたのか、まるで平常運転の様にして彼女を縛り付けて拘束する縄を簡単に解いてしまい、口に噛まされていた布も取り外した。
「はい、これで大丈夫」
「こホッ、こホッ……放置…されるの……良い…かも♡」
喉を僅かに細い手で抑えながらSはそう呟いた。また何かに目覚めてしまったのかもしれない。別に玲夜自身は基本的にどんなプレイや性癖が来ても、ドッシリと構えるつもりである為大丈夫だろう、と感じていた。受けだけは勘弁したいものであるが。
「で?ミゲルさん…どうだった?」
椿の質問に玲夜は一度頷くと同時に答える。
今回の件、答えはYESだと彼女に一言で伝えた。別に何か答えを伝える上で、言葉を捻る必要性は感じなかった。
答えを受け取り、椿は言葉を返す。しかしあまり期待はしたくなかった、大体今の椿は(Sも含む)頬を赤らめており、まるで今すぐにでもベットに押し倒されたいかの様な表情を浮かべていた。
聞く気にならない、と言うか聞かなくとも分かる気がするのだが一応聞かなくてはならない様な気がした為、玲夜は質問を彼女に投げかける。
「ど、どした?そんな物欲しそうな面して……?」
「今日、夜は……もう……デキない…」
「今、エッチしてくれない?もう、子宮疼いちゃってきゅんきゅん、ってしてるの…お願い♡」
玲夜の想像していた事であった。しかし、断る事も出来ないだろう。玲夜は素直に彼女達の少しHなオネダリを受け入れる事にする。
「分かったよ、どうせ時間はあるんだ。じゃあベットで待ってて、ゴム取ってくるから」
そう言って玲夜は一度、椿とSから視線を外し、その場から立ち上がる。避妊用のコンドームを取りに行こうとしたのだ。
しかし、玲夜が立ち上がろうとした矢先、玲夜の腕を椿が強く掴む。突然腕を強く掴まれた事で、さっきの会話に何か問題があったか?
と心の中で考えたが、先程までの会話を一時的に振り返っても、何も問題はなかったはずだった。しかし何故止められたのか、玲夜には分からなかった。
玲夜は恐る恐る、後ろを振り返る。後ろを振り返ればそこには椿が居るはずだ。
「え、どうした?」
「今日………がいい」
声が小さくて聞き取れなかった。玲夜は再度何を言っているのか要求する。
「え、何て?」
「もう、私もSも避妊薬飲んでるの……だから、ゴムなしの生がいい!」
気が付けば彼女の事をその場に押し倒していた。そこまで物欲しい表情で頼まれ、勇気を出しているかの様な表情で頼まれてしまえば、玲夜も流石に断る気にもなれなかった。
押し倒して、一度甘い口付けを交わすと、壊れてしまいそうな程に愛しく、年齢に似合うかは分からない豊満な胸に手を伸ばす。そしてそのまま上の服も下の服も華麗な手解きで脱がしていく。脱がしていく事で彼女の豊満で大きい胸や丸みを帯び、張りのある大きな尻、それを強調するかの様な細いウエストや抱き締めただけで折れてしまいそうな細い手と足が顕となる。
「ったく、こんなデカい胸ぶら下げて、デカい尻揺らしやがって。今気持ち良くしてやるよ♡」
「玲夜ぁ♡お願い、気持ち良くして……妊娠させてもいいんだからね?」
「私…忘れら…てない?」
※この後二人仲良く生でヤリました。




