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北風日記  作者: 小烏屋三休
師永津
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おじいさんに助けられる 1

 というわけで私たちは皆仲良く無一文になった。それまではすこぶる順調な旅だっただけに、残念であったし、まだ先を行かねばならない坂東の叔父と娘には大変なことになった。それに加え、まあ上記のことに比べればささいなことではあるが、私は集合場所に一番乗りをしてしまい、臭い場所で仲間たちの到着を長い時間待たねばならなかった。

 ゆっぴぃは心根のまっすぐな、頼れる兄貴分だった。この臭いものを観察されたらきっと恥ずかしがるだろうから見まい、見ても私の糧になることはあるまい、と私は何度も考えた。ところが他に見るものもないとつい目が引き寄せられてしまうという、恐ろしい魔力がそこにはあった。実際のところ、私は何度もそれを見つめては汗をぐわっと出して、目を逸らしてまじないの言葉を唱え、また見てはぐわっとして唱えて、というのを繰り返していた。大体、ここにあるものは様子がおかしい。先ほどの麦縄が多少変な味がすると言っていたから、それの影響だろうか。きっと古くなっていたのだ。麦縄をすするゆっぴぃをうらやましいと思わなかったと言えば嘘になるが、実際食べなくてよかった。

 ぽつぽつ、と仲間たちは到着した。一人来るたびに私はほっとして、来たものは一様に顔をしかめた。

「なんだこれは。麦縄のせいか」

 皆が仏頂面で待っているところ、最後になってようやくゆっぴぃが到着し、顔を赤らめて、

「ちょっと土でもかぶせてくれればいいじゃないですか」

 と口を尖らせた。

「旦那、言わせてもらうと、それは糞をした本人がしておかなけりゃならんかったことだっぺ」

 もっちぃの言葉に、その通り、と一同がうなずくと、ゆっぴぃは自分の落とし物に乱暴に枯葉をかけた。


 それから私たちは打ち捨てられたあばら家を見つけ、ぎゅうぎゅうにひしめき合いながらそこで一夜を明かすことにした。幸い(こも)だけはなんとか手に入ってそれにくるまって寝たが、それでも冬真っ只中の寒さは南国生まれの私の骨まで蝕んだ。他の人はこともなげにしていて、ぶるぶる震える私を鼻で笑いつつことんと寝入っていた。

 それより数刻前、在命とゆっぴぃは例の知人を訪ね、宿のことや食料のことで相談しようとした。ところが里に足を踏み入れたとたん、また例の荒くれ者たちに追い回されたらしく、這う這うの体で戻ってきていた。

「お二人は背ぃも高いし、在命さんは髪もちりちりだし目立つんだべ」

 手ぶらで帰ってきた男たちにかわいいフツが優しく水を差しだすと、二人は背を丸めながらも、ほっとした様子でそれを飲む。

 目下の食料調達、帰りの路銀、それにとにかくもっちぃとフツが遠国へ行くだけの物資が必要であった。そこで仕方なく、ここの名主(みょうしゅ)(とびきり有力な百姓のことを、ここらではそう呼んでいるらしい)の館に滞在しているという梅太郎に今度は私が助けを乞うことになった。翌日になれば男たちの血気も少しは収まっているだろうし、在命の知人へと続く道よりも、名主の館への道の方が割合に治安がいいらしい。

 この名主には美貌で名高い娘がいるらしく、梅太郎は娘の検分にきた采女司と一緒に行動をしている。かわいい女性にうつつを抜かしている夫にお灸をすえるべく遠路はるばる来たはずが、低姿勢で助けを請わねばならなくなってしまったわけだ。人生というのは本当にままならない。

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