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第11話 合流。

「やぁ、みんな」


 少し間を空けてから、僕はタラスクを伴って酒場へと戻った。アデル、ルカ、ユティファの三人は暗い顔でテーブルについていたが、僕の顔を見るとパァッと表情を明るくする。ちなみにセレスティンは、ロープで縛られて床に転がっている。意識はどうやら戻っているようだ。


「マルコ! 戻って来てくれたのか!」


「マルファ様に、説得されたのですね!」


「マルコ、ごめんなさい、私、私......!」


 三人は椅子を跳ね除けて立ち上がり、僕の周囲に集まった。セレスティンは「ケッ!」と悪態をついている。


「みんな、ちょっと待って。僕は確かに聖王カインド様に声をかけていただいて、聖女マルファ様の聖術でここまでやって来た。だけど誤解しないで欲しい。僕は今更パーティーに戻るつもりはないんだ。もう、みんなとの関係には区切りをつけた。今は自分の思うがままに生きている。事情はマルファ様に聞いたけど、それでも僕は勇者パーティーには戻れない。傷ついた心が、戻る事を拒否しているんだ。だけど」


 そこで一旦言葉を区切り、僕は続けた。三人は固唾を呑んで耳を傾けている。


「みんなの呪いを解く事、そして新しい勇者を探す事。この二つに関しては協力するよ。それが片付いたら、僕は消える」


 僕がそこまで言うと、アデルは諦めたように額をポリポリと掻いて苦笑いした。


「まぁ、それはそうかもしれんな。俺も同じ立場なら、同じ結論に至るだろう。何せ恋人を寝取られたんだからな。だけど、ありがとうな。お前が協力してくれるなら、心強いよ」


「そうですね。出来ればマルコに次の勇者になって欲しかったですが、それは贅沢と言うもの。協力してもらえるだけでも感謝です」


 アデルに続き、ルカも納得した様子で頷いた。そして少しの沈黙の後、ユティファが辛そうに口を開く。


「あのね、マルコ、私......許してもらえないのはわかってる。だけどこれだけは言わせて。来てくれて、ありがとう」


 ユティファの目から、大粒の涙が溢れる。僕はいたたまれなくなって、彼女から目を逸らした。


「もういいよ、ユティファ。君とよりを戻す事はないけど、憎しみや怒りも感じてはいないんだ。だから少しの間だけど、仲間としてよろしくね」


「......うん!」


 ユティファは涙を両手で拭って、満面の笑みを見せた。僕は不覚にも、少しドキリとした。


「マルコ、ところでそっちの人は? マルファ様と一緒にいた人だよな?」


 アデルがタラスクを指す。


「ああ、彼はタラスク。マルファ様の従者だよ。セレスティンを抑えるのに必要だろうって、同行させてくれたんだ」


 僕の言葉に頷くタラスク。


「俺は魔獣だ。国喰らいの邪龍タラスクと言えば、名前くらいは聞いた事あるだろ? と言ってもマルファとの契約で悪さはしないから安心してくれ。俺の仕事はセレスティンの見張りとマルコの護衛。それ以外の事はしねぇから、そのつもりでな」


 タラスクの自己紹介に、勇者パーティーの面々はざわめく。


「く、国喰らいだと......!」


「あの悪名高き邪龍ですか......!」


「タラスクって、実在したんだ......!」


「チッ......!」


 四人の表情には緊張が見えたが、仲間だと知る事で安心もしたようだ。


「あのタラスクが味方ってのは、何にせよ心強いな。よろしく頼む」


「ああ。足手まといだけにはなるなよ」


 タラスクはアデルと握手し、その後ルカ、ユティファとも握手した。その後彼は麻で出来た大きな荷物袋をアデルから借り、その中にセレスティンを突っ込んだ。


「おい、何すんだこの野郎、出しやがれ!」


 セレスティンはジタバタと暴れたが、袋の口を縄で縛られて、タラスクの肩に担がれる。


「るせーよ。しばらく荷物になってろ、このお荷物野郎」


 バゴン! と頭の辺りを殴られ、セレスティンは動かなくなった。気絶したのだろう。


「あ、えー、あはは。やりすぎだよタラスク。えっとみんな、それじゃあ作戦会議をしよう。基本的にダンジョンの案内は僕がするから安心していい。みんなも知っての通り、入るたびに構造が変化するのがダンジョンだ。だけど僕の頭にはそのパターンが全て入っている。だから戦闘面にだけ、しっかり気を配ってね。僕は戦いはからっきしだからさ」


「ああ、そうだな。信頼してるぞマルコ。武器のメンテナンスも戦闘も、俺に任せておけ」


「もちろん私も戦いますよ。それに傷の手当てもお任せください」


「わ、私も後方から弓で支援するわ。罠の解除もしっかりやるね!」


「うん。よろしくね!」


 僕はみんなに笑顔で答えた。そして呪いを解くためには、ダンジョン最下層にある石像を破壊する事が必要だと伝えた。マルファ様にそう教わったと。


 だけどセレスティンを殺さなければならない事は、どうしても言い出せなかった。




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