21話「魔王国への街奪還作戦からの~」
勇者の魔剣破壊で九条さんは自我を取り戻していた。温泉宿で暗殺部隊っ子たちの介護もあり今は元気に屋敷の中庭で剣の練習をしており、私への謝罪の面会順番を待っているとの事。もう私への敵意もなく時々介護した獣人っ子のモフモフを触らせてもらいながら過ごしている。
「普通に会話できる状態に戻りましたね。」
「そうですね。今回奴属首輪解呪に呼んだ彼女のおかげです。」
執務室のソファーで飲み物を頂きながらクッキーを食べている彼女がいた。事前に紹介されたが、彼女はここから東の果てのオーブラント皇国から隠ぺいした上陸艦で連れてきたらしい。
「今回のご協力感謝いたします。」
「問題ありません。困っている人を助けるのが私の使命です。」
皇国ともあって、彼女の服装は清楚な白に包まれた法衣来ていた。金髪美人のお胸様は"D"と思われる。髪は法衣のフードで今は確認できないがとても清楚な人物である。
「報酬は如何致しましょうか?」
「教会に幾ばくかのお布施を入れていただければ、問題ありません。」
「承知しました。」
ソフィアに目配せして拘束時間と解呪人数からそれなりの金額を用意するように指示を出した。彼女の都合もあるので早々に戻る必要ではないが、もう1日だけ温泉宿に宿泊してから国に戻ることとなった。温泉がとても気に入ったらしいので、定期的にこちらに着たいとの事だが、隠ぺいした上陸艦で目隠しされてきたとの事でこの大陸の移動速度で考えると2月以上の移動時間が必要との事実を知った彼女は、定期的にお迎えが欲しいとお願いしてきたので、軽く承諾しておきました。その後彼女は宿に戻っていった。
「温泉宿の効能は変更できるの?」
「仕様変更はできません。」
ソフィアにそれとなく温泉の効能変更をお願いしようとしたが、変更出来ない?しないとの事です。宿泊させれる人も限られてくるのと、男性用の脱衣室がないのでどうするのか確認したところ、男性は私だけ利用可能で女性専用との事らしい…。
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リリア姫の回復を確認しに温泉宿のホールに向かったところ、リリア姫の前で膝を付いて謝罪しているソフィさんが目に入った。
「貴方の謝罪は受け取るわ。特に傷跡も残らず回復したのだから問題ないわ。」
「いえ、それでは国王に申し開きできません。」
リリア姫は若干困った顔でホールに入ってきたこちらに気が付き、助けて欲しいと言わんばかりの目線を送ってきた。
「貴方の悪いところは頑固なのよ。」
「……。」
リリア姫の要望もあり大人の対応でソフィに話しかけることにした。
「ソフィさん、リリア姫も困っておられます。どうかここは謝罪を受けてもらったことで、一旦落ち着きましょう。」
「それでは、私への処分が…。」
本当に頑固なんだと思うが、この対応は艦長をしていた時によく遭遇した場面なので本人の落としどころを決めてあげると解決しやすい。
「では、こうしましょう。今回の奪還作戦で無事に王都までお守りすることで如何ですか?」
「それは、当然のことだ!だが今回の作戦には犠牲が出る可能性があり…。」
当たり前のことを言ったが、ソフィアから今回の作戦にはこちらの部隊の揺動でかなりの無理を押し付けられていることは確認している。下手をすれば命を落とすことも考えられる作戦であった。
「どうでしょうか?」
「解った一旦ここは、引きましょう。」
理解できる大人で良かったです。リリア姫もホッと発展途上の胸を撫でおろすのであった。と思っていたら。リリア姫が胸を押さえて睨んできました。あれ?心の声は届いていないよね?オッホン…。
「リリア姫、今回の作戦の前に諸々確認したいことがあり屋敷までお越しいただくためお迎えに伺いましたが、宜しかったでしょうか?」
「えぇ、十分に温泉を堪能…。さっさせて頂きましたので問題ありませんわ。」
若干の返答に引っかかりはありましたが、温泉を気に入ってもらったので良かったです。返答したのち顔を赤く染めたリリア姫たちを屋敷の執務室までご案内したのであった。ソフィも耳まで赤くして歩いているが…。見なかったことにしよう。
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執務室でソファーに相向かいに座りまずは、怪我を負った経緯を確認しようと思う。執務室ではシャノンが飲み物を準備しており!?頭に猫耳?お尻に尻尾?…。ソフィアが頷いて確認しているので、何かあったのかもしれないが似合っているので良しとしよう。リリア姫も気が付き猫耳をじっと見ている。ソフィさんは尻尾を触りたいのかワナワナてを動かしているが、こちらの目線に気が付きリリア姫の後ろに控えるが、目が泳いでいる。フッこの程度で狼狽えていたら本物の獣人っ子たちを見たら悶えるぜ!って後ろのソフィアを見たら豹耳と尻尾が…。ブフォッ飲み物リリア姫に吹き出しそうになって何とか堪えた自分を褒めてあげたい。
「良い趣味しているわね。」
「エッえぇ、屋敷の使用人に獣人の子を雇ったので合わせております…。」
リリア姫に若干残念な人みたいな目で見られたけど、指示してないよ。ソフィアに一任してるからね。ソフィアはドヤ顔で頷いているし…。私の趣味…。良い趣味ですよ!まったく!カワイイは正義です。
「さて、今回の顛末ですが、準備も整ったのでこちらに転移するときに襲撃を受けました。襲撃した者はソフィが間際に処理しておりますが、現状王城へ戻るのは危険と思います。」
「そうですか。では作戦はこちらからの出立でも問題はございませんか?」
気になるのは、リリア姫が出立するのに口上とか宣戦ができなくなることが心配でしたが、そこは宰相がやるとのこと、こちらは既に揺動とのこともあり別働での移動となる。
「問題はないわ。」
「やはりキグリの陰謀で間違いないと、お考えで?」
今更の紹介でグランシス王国の宰相はキグリ=モドレスタと言う。人間属で40歳で魔法師団の団長から宰相を仰せつかった。帝国との接触は4年前に外交支援に訪問した時に仄めかされたのではと確認されている。それから4年の歳月をかけて獣人族の奴隷を使っての勇者召喚。多くの幼い命が散ってしまった事実があり。召還を止めるためにリリア姫も各地で支援の呼びかけを行っていたが止められなかったとの事。
「貴方ともう少し以前に出会えてたらと思うと本当に悔しいわ。」
「それはお察しします。」
リリア姫から暗殺首謀者の明確な回答はなかったけれど、ほぼ間違いなく確定していることなので、それよりも今後の対応を考える必要がありその先の計画を話始めるのであった。
「奪還作戦で確実に勇者を利用しキグリは帝国に寝返るわ。その揺動作戦を貴方に任せている間に私とソフィでキグリの寝返る瞬間を捕らえるわ。」
「実力を疑うわけではありませんが、2人では無理があると思いますが?」
2人だけで捕らえられるとは思っていないので、確認したところ作戦に参加しない騎士団長と数名の騎士が捕縛時に合流する予定とのことで、こちらは揺動に専念していれば良いらしい。キグリの目的は王国軍が奪還を失敗しその後、魔王軍との全面的な戦争になることで王国の衰退を図っているとのことだが、そこにこちらの戦力が加わったことで大きく計画にズレが生じたことで計画を早めたらしい。
「まぁ何にしても、浅はかなことですね。」
「その点に関しては、父上も見る目が無かったとしか言えないですわ。」
王国の体制に問題は無かったと思う。多分キグリも最初は良い宰相だったと、しかし帝国に行ってから人が変わったように行動するようになったらしいが、本質的に彼自身に野望が渦巻いていたのかもしれない。まぁ何にしても王国への忠誠が揺らいだ段階でアウトなのは確定しております。ただ彼も被害者である可能性は否めないが手遅れな部分を大半占めてしまっている。
「出発はいつ頃を予定しておりますか?」
「今晩から移動をお願いします。準備は宜しくて?」
こちらは待機を命じられてから準備を整えているので、いつでも対応可能な状態であった。こちらに着てしまった勇者:九条さんをどうすべきか悩むところと、リリア姫の衣装は修繕したが、武器は持っているが2人の鎧はどうするのか確認が必要と思われる。
「リリア姫の防具はどのように致しますか?」
「問題ないわ、マジックポーチに収納しているのでどこかで着替えさせてもらうわ。」
キターー!ファンタジー定番の収納ボックス?マジックポーチ!鎧が入ってるのは容量とか気になるが、やはりダンジョン産でしょう。2人ともポーチを触っているので、多分あれがそうでしょう。ソフィアが早速解析しているが、原理は不明らしい。また地下の研究にまわる事でしょう。
「貴方たちも持っているのでしょう?こちらは国宝ですけどどうやら皆さんお持ちですわね。」
「えぇ、色々ダンジョンで集めましたので主要メンバーは持参しております。」
「そう…。特には詮索はしないでおくわ。」
えーえーその対応でお願いします。何かあればダンジョン産で胡麻化しておりますが、流石に限界が来ていますね。実際には持ち込みですけど、現在持っている物はどうしようもないですからね。
「お願いします。」
もう隠すことも無いので、詮索されないならそれで良しとしましょう。
「勇者様はどうされますか?」
「そうねぇ、そちらも同郷なのか気になりますが…。まぁ良いでしょう。こちらで対応しますので、貴方は揺動の細かい指示に専念してください。」
「承知しました。勇者様の面会が終わりましたらそちらに行くように伝えておきます。」
「お願いしますわ。」
リリア姫との打ち合わせも終わり彼女たちが退出した後、九条さんとの面会を迎えるようシャノンにお願いしソフィアの豹柄尻尾を眺めながら待つことにした。
『んっソフィアの豹耳と尻尾動いてる?』
彼女たちが付けていた耳や尻尾なんだけど、時々動いていたのでそういう仕様でわざわざ造ったのかな?高性能なギミックで触ってみると触られたことが解るのかソフィアが反応していた。
「艦長、ダメです。」
そんなこと言われると悪代官になってしまうではないか~
「良いではないか~うへへへ…。」
執務室の扉ですが、シャノンがしっかり閉めていなかったため、九条さんが来ていたことに気が付かず、ソフィアとのじゃれ合いを見られてしまい彼女からボソッと、
「へんたい…。」
いやいやいや!また嵌められました。シャノンがウインクしてるから確信犯だよね!
ウォッホン。「…。」
雰囲気が悪そうなので、シャノンにコーヒーとクッキーを出してもらいました。お互いソファーに座ろうと思っていたら突然、九条さんが土下座をしてきた。
「ごめんなさい。操られていたこともわかっていたけど、幼い子たちを助けてもらったことを聞いて、とても勘違いをしていました。」
どうやら九条さんは私も転移させられて、その時に多くの犠牲が出ていることを知りながらも、獣人っ子たちを奴隷として扱っていると勘違いしていたらしい。魔剣の呪いも若干影響があったが、セシルさんに治してもらったことも聞いたこともありこの状態になっている。
「とりあえず、謝罪は受け取ります。ソファーに座って落ち着いてください。」
「ありがとうございます。」
それから九条さんからこちらの世界に転移させられてからの経緯を聞いて、今後どうするのかの話をした。キグリの陰謀も伝えたので今後そちらに加担することは無いと思われるが、当面はリリア姫の指示で動くように話した。本人も納得していたので問題はこの先になるのだけど…。
「ところで、あなたは日本人ですよね。」
見た目はゲームのアバターでイケメン22歳の外国人に見える設定ですが、中身は48歳のおじさんです。どう返答すべきか悩んだが、正確に答えるようにした。
「そうですね。中身は日本人です。」
「中身?」
簡単にゲームの世界からこの世界に転移してきたことを話したが、重母艦の話とかアンドロイドの話は伏せておいた。また武器が特殊なのはそういうゲームから来たことだけを伝えて、犠牲のある転移ではなかったことも伝えた。
「そう、何だか理解できないことですが…。犠牲が無かったことは良かったです。」
「そうですね、困惑することもあると思いますが、お互い元の生活に戻りたいことは確定していると思いますので、協力は惜しまないです。」
若干疑いの目を向けてきたが、彼女は元の日本に戻りたいと思っている。ただし戻る際にまた多くの犠牲が出るのは避けたいとのこともあり。微力ながら情報収集に努めるとの事です。
「では、細かい話はこのイザコザが解決してから、こちらに伺います。」
「そうしていただけると助かります。」
後、九条さんはステータスを確認することが出来るとの事で、現在はLV40だそうです。私は?まぁ来た世界が違うから無いのかもしれない。九条さんとの話も終わり、夕方に向けての準備をし出発するのであった。リリア姫は勇者と行動を共にするとのことでお任せしました。
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次回は無双シーンになります。ラサの行動をあえて書いておりませんが、次回またいろいろなごちゃごちゃした内容になるので、読者を混乱させないように書いていきます。宜しくお願いします。
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