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俺の物語には主人公だけがいない  作者: モコ
第一章 人生が始まった日
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テレポート?

(コーヒーはLにしておくべきだったな)

緊張と、理解の追いつかない会話に喉の奥がカラカラだ。

まだ長くなりそうだし追加注文するべきか。

幸い今日は暇だ。

というかいつも特に予定はない。


ふと、光の方を見ると光のグラスも氷と解けた水しか入っていなかった。

体感時間では5分ほどだったが、もう30分ほど経っていたらしい。


「結城さん・・・でしたよね?コーヒー追加しましょうか?」

「良いんですか?ちょっと喉乾いてて。お願いします。」

そういうと女は満面の笑みを浮かべた。


先ほどまでいっぱいいっぱいだった頭も、カフェインの効果なのか冷静さを取り戻しつつあった。


拓哉は追加のコーヒーを持って席に戻り、光の席にもコーヒーを置いた。

光はきちんとお礼を言い、頭を下げた。


(言ってることは無茶苦茶だけど、礼儀はしっかりしているな。)

相手を信用できるほどの会話を交わした訳ではないが、不思議とこの子の言うことは信用してもよさそうだ。

そんな風に思える女性だった。


「とりあえず話を纏めると、結城さんは東京の人間で秋葉原にいたはずなのに気が付いたらここにいた・・・と。」

「そうなりますね~。」

光は話たら安心したのか、少し落ち着いた雰囲気になっていた。


「状況的には・・・テレポートって事になりますよね。」

「そうなりますね~。」

なんでこの子はこんなに余裕なんだろう。


「あの時の、謎のまぶしい光・・・。」

拓哉は目の前の女性とぶつかる直前を思い出していた。

「あの時前が見えなくなるほど眩しい光がありましたよね?」

「あー、そういえば私も謎の光に巻き込まれた感じでした!」

「あれが原因・・・なのかな?」

「そうかもしれませんね。」

雲を掴むような推論だが、現状他に原因らしいものも考えられない。

テレポート自体の原因はわからないが、あの謎の光が関わっているのは間違いない、と思う。


「でも吉田さんのおかげで少し状況も分かりましたし、東京に帰ればいいわけですしね!」

「まぁ・・・確かにそうですね。」

帰る・・・。

それはそうだ。

拓哉は残念に思っていた。

現状を把握したわけだし、この子は東京の子だ。

謎は多いけど、とりあえず帰るのが最優先だろう。


だが、せっかくこうやって接点を持てたのに、もうお終いか。

少しでもこの時間を長く続けたい。

そしてあわよくば・・・などと考えていた。


--その時拓哉は、ふとある事に気づいた。


「そう言えば・・・さっきの千円・・・玉?あれ、もう一度見せてもらえますか?」

「良いですよ~。偽物じゃないですからね。」

光は笑顔で千円玉を差し出してきた。


何度見ても見たことが無い。

少なくとも日本で流通している通貨ではない、はずだ。


「他の硬貨はありますか?例えば百円とか五百円とか」

「あー、今は・・・あ、百円ありますね。」

そういうと光は新しく硬貨を差し出してきた。

「これは・・・百円玉ですか?」

「どう見ても百円玉ですよ?」


確かに、どう見ても百円玉だった。

それは拓哉の知っているものと同じだった。

一部を除いて。


(永光三年・・・?)


「あの・・・この永光三年ってのは・・・?こっちの千円玉ってのにもありますよね?」

「今は永光九年だし、別に珍しい年数じゃなくないですか?あ、現金持たない派ですか?」


永光九年。

なんだそれ。

今は令和三年のはずだった。

この目の前の女性が何を言っているのかわからなかった。

(俺がいくらニュースを見ないと言っても九年も年号を忘れることは無いはずだ・・・)


「結城さん、あの・・・」

「なんですか?」

屈託のない笑顔で光が見つめてくる。

女性に見つめられるのは慣れていないが、目を伏せながら続ける。

「今は、西暦何年ですか?」

「え?2120年でしょ?もうすぐ21年になるけど。」


にせん・・・ひゃく・・・?


「えっと・・・、今は2021年ですよ。」

「・・・」

光は目を見開いてきょとんとしたまま拓哉を見ていた。

そして十秒ほどたって、


「ええええーーーー!!!!!」


光の声が店内に響き渡った。


テレポートってことでも混乱しているのに、今度は時をかける少女とは…

気が動転してしまった拓哉はとりあえずコーヒーを飲み干した。

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