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壁一面のポスター

地下鉄の道というのは、だいたい、古いので暗い感じがする。


しかし、最寄り駅は大きなポスターが沢山張ってあるので、色々見れて少しは楽しみにしていた。

今田修平 36歳。

会社員。営業職の中堅。


今日は飛行機を使っての出張のため、始発に乗らなければならない。



羽田より成田の方がアクセスが良いのが腑に落ちない。


地下鉄に向かう。

地上の駅からずっと歩く。


その距離が長いせいか、広告の大きなポスターを見るのがちょっとした楽しみである。


旅行のポスターなどは、雑誌見開き1ページくらいの情報量と大きな写真を見せてくれる。

観光名所に、夜景に、お風呂に料理。


購入腕時計や、ブランドの新商品のポスター。

外人男性のモデルを使っても、いまいちピンとこない。


他にも雑誌のポスターは掲載の内容がどぎつい見出しと共に、内容も触りが書いてある。

これを一枚読めば、一冊読んだも同じ事じゃないか。ここまで内容を出しても良いのかと心配になる。

おかげで、テレビは見ないくせに芸能情報、時事ネタには事欠かない。


多少話が通じなさそうな若い子や年寄りとも楽しく話を続けることが出来るのは、ここのポスターのおかげだろう。


この時間に張り替えているのか、始発の人のほとんどいない時間に、いつも見るポスターが全部剥がされていた。

全とっかえも珍しいな。

いや、一新されたことがあったから、広告の掲載期間が終わるのがいくつか繋がったのだろう。


珍しく色のない寂しい地下道を歩いた。


自分が通った後ろの方では、作業員らしき人達の声がしている。


「角を合わせろー」


とか


「そこ、斜めってるぞ!」


等聞こえるから、後ろの方からまた新しい広告を張っているのだろう。


今度は、どんな広告だろうな。


季節的に花火の広告とか良いな。


そんなことを考えながらも、長い道を歩く。


おや?


気のせいか。


誰かが居た気がしたのだが。


作業の人たちは、角を曲がった奥なので姿が見えない。


変だなぁ。


前を向こうとしたとき、何かが気になり横を向いた。


壁である。


そこに、人の形が黒くある。


ああ、俺の影か。


少し驚いた自分が恥ずかしくなり、片手を軽く上げ、


「こらっ!」


影に殴りつける様な素振りをした。


影は、俺のままに、片手を軽く上げ、握った拳で何度も打つ仕草をしている。


「えっ?」


俺の動きは止まっている。


影が、ひたすらにこぶしを振り上げている。


思わず下がった。


気付く。


影の大きさは変わらない。


俺の影じゃない。


俺じゃない。


この影は、影だ。


納得すると同時に恐怖が襲い走り出した。


声も出していたかも知れない。


横を見る。


影が俺の横に居る。


走りながら、腕を振り上げる仕草をし続けている。


影から離れようと、反対側の壁に行こうと思ったが、反対側にも出られたら怖いので、結局、道の真ん中をスーツケースを転がしながら走った。


エスカレーターが見えた。


なぜか、そこがゴールだと思った。

新しくできたエスカレーターで、壁も奇麗だったせいもあるだろう。


そう信じて、走った。


エスカレーターに乗った。


壁の男は、やはり古い壁の中しか移動できないのか、新しい壁の間際でこちらを向いて手を振り続けた。


数分、電車を待つにも恐怖を感じたが電車に乗って一息ついた。



その後、出張が終わり、帰りにそこを通った。


駅の壁には一面のポスターが鮮やかに華やかに、楽しい情報を載せていた。



しかし、その奥にあれが居ると思うと、ポスターのめくれなどをいち早く見つけ、大きく迂回するという癖がついてしまった。


地下道を歩いていると、額に入ったポスターだけでなく、裏に糊が付いているのか、そのままに張ったポスターなど、間の隙間もないほど張られていた。


つまりは、隙間からもアイツが見えるという事か。


部屋でも、月めくりのカレンダーではあったが、12月の最後のページには、めくれないように四隅とその間にも画びょうを刺している。

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― 新着の感想 ―
[一言] こわっ…… 隙間からアイツもこちらを見ている…… そう考えるとゾッとしますね 美術館のポスターが好きです たまに好きな作家さんのポスターがあると欲しいなあと思います
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