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Musica*Classica  作者: 弘瀬海
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第四小節「悪魔と幽霊」

悪魔―イヴォナは、符楽森達をキリと睨むと、そのままツカツカと特に何も気にしない様子で彼らに向かって歩いてきた。そしてバッと扉を開け…ようとしたが、鍵がかかっていたのだろう。ガンッと扉を鳴らしただけの彼女は、バツが悪そうに符楽森を睨んだ。

「何見てんだよ。」

ドスの利いた声が辺りを静寂に包んだ。

「い、いや、ごめん。」

符楽森は情けない声でそう応え、青中に涙目で必死にSOSを送ったが、青中は符楽森の様子を見て、笑いを堪えるのに必死だったため、SOS信号は呆気なく空中に霧散むさんした。

「まあなんだ、イヴォナさん…でいいかな?俺は青中共史。これからよろしくな。ほら、拆音も。」

出会って早々険悪なムードになってはいけないかと思ったのか、青中は一先ひとまず符楽森の様子と楽しむのを止め、イヴォナに対して自己紹介をすることにした。

「ぼ、僕は符楽森拆音。指揮専攻の。よろしくお願いします。」

青中に催促され、符楽森も辿々(たどたど)しく自己紹介をした。しかし、彼女からは何の言葉も返ってくることはなかった。

 そこから数分、彼らは何の言葉も音も発しなかった。あまりに気まずい空気は、辺りをヒンヤリと包み込み、彼らの周りだけ気温が二度程下がった。そんな場所に救世主が現れた。

「ばぁ。」

突如3人の背後から声がした。微かで今にも消えそうな、冷気のように冷たい空気を帯びた声。まさか、今度こそ本当にこの世の者ではない何かが現れたのだろうか…。3人は恐る恐る後ろを振り返った。するとそこには…

「ぎゃあああああああああああ!!!!!」

そこにはなんと、白の髪、白の肌、白の服を着た少女の霊が立っていた。符楽森とイヴォナは断末魔のような凄まじい叫び声で合唱し、青中はこれ以上ないくらい目を丸くしてそれ(・・)を見た。しかし、当の幽霊はキョトンとした顔で3人を見ていた。

「なんでそんな驚くんよ〜。これから一緒に暮らす仲間なのに。」

一緒に暮らす仲間?もしやこの家の地縛霊か何かで、この寮にいる限りこの幽霊と一緒に暮らさなければならないのか?符楽森はここまで考えて思考を止めた。これ以上考えたら駄目だと脳内アラートが鳴っていた。

「あ、もしかして、君が鍵宮…」

青中がそう言い終わる前にそれ(・・)は答えた。

「そう。白音。皆さんよろしくお願いします。」

鍵宮はそう言いながらペコリと会釈した。符楽森とイヴォナは暫し沈黙し、その後イヴォナはその場から逃走を図った。がしかし、鍵宮にしっかりと抱きつかれた。

「なんで逃げるんよ〜。別にさっき叫んでたの見て”以外に可愛いキャラしてるんだなぁ”とか思ってないから〜。」

じゃあそのニヤけ面は何だ。符楽森は心の中で突っ込んだ。

「そうだよ!イヴォナさん噂と違って結構乙女なんだなとか思ってないから!」

青中も鍵宮に続き、笑ってるのか喋っているのかの中間くらいでそう言った。彼の目には少々ばかり涙が浮かんでいた。

「離せっ!やめろ!」

イヴォナの必死な抵抗により、彼女は鍵宮からの拘束から解放された。と同時に彼女は目にも留まらぬスピードで森の中へと逃げ込んでいってしまった。

「あちゃぁ…やりすぎたな…。拆音、追うぞ。」

「なんで僕が!」

「私達これから一緒の寮に住む仲間でしょ?連帯責任だね〜」

白ちゃん(・・・・)分かってるね〜」

白ちゃん(・・・・)天才だからね〜」

 符楽森の脳内はぐちゃぐちゃだった。なんで僕も追う羽目になるのか。なんで共史と白音さんが急速に打ち解けてるのか。というか白ちゃんって何。

 符楽森は考えるのをやめた。とにかく今はイヴォナさんを探さなくてはならない。そう自分に言い聞かせ、森へと駆け出していった。この出来事でとある大きな出会いを引き起こすことになるとは、符楽森は未だ知る由もなかった。

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