寒い日には、
いつもとは違い珍しく朝から肌寒くて目を覚ました真由美の第一声はなんとも色気の無いある意味料理馬鹿ならではの言葉だった。
「豚汁が食べたい……」
…………いつもと違いふかふかの毛布が恋しくなり手探りでまわりを探るもあるわけもなくて、薄手の肌掛け布団の中で身体を丸めながらまだ起きるには早いのでもう少し寝ようと意識を手放しながら無意識に声にだした言葉だった。
「豚汁が食べたい」
こんなに肌寒い日には確かに温かい物が食べたくなるのは理解するけど何故に豚汁なのか、それはただ単に自分の気分であって理由などは無い。
こちらに来てからは自分でうどんを作るか仕事の顧問として提案する料理は比較的に和食?の部類であるが鍋だったりアレンジだったりするのでがっつり和食では無い気がする。
その分朝は和食を選択する方が主になり尚且自分で手を加えたり一品足す事もある。
基本洋食が主だった王族の皆さんや城の人達には喜ばれているし、自分の食べたい物を選択しているので不満は一切無い、一切無いという事はつまりはいつもの真由美の思いつきが目を覚ます前に無意識で声に出ただけなのである。
(とりあえず豚汁は食べたいけどもう少し寝よう。)
無意識の声を肯定してもう一度寝直す真由美であった。
「と、いう事で今日のお昼のうどんは豚汁うどんにしようと思います❗️」
「何がだ!」
「突然❨と、いう事で❩と言われても意味がわからないのでそう思った経緯から説明しましょうね?真由美さん?」
朝ご飯を食べだした途端の真由美の暴言?にいつものごとく尽かさず突っ込むアオイに子供に言い聞かせる様に説明を求める孝文、二人共真由美と共に暮らしだし、真由美の思考がすぐに料理の事に向くのは理解しているので大方予想はついている、いるのだが突っ込まずにはいられない。
いつもなら朝食の準備をしながらだとか、ご飯を食べながらだとか、会話をしなが今日のうどんは何にしようかとか、夕飯は何が食べたいとか、それなりに料理馬鹿らしい?が流れがあるのに今朝は普通に挨拶をして普通に天気の話等をしなから朝食の準備をして食べ出したらの発言だからだ。
本人からしたら今日の天気の話「今日は珍しく寒いよねぇ~、朝、寒くて一度目が覚めちゃったよ~」
=寒かったから温かいうどん、温かいうどん=豚汁うどん、で、今日のうどんは豚汁うどんに決定しようと思う、と、いう事らしいのだが、流石にこれには二人共分かる訳が無くいつも以上にマイペースな真由美に脱力したのだった。
「兎に角、今日のお昼のうどんはその豚汁うどんにするんだな?豚汁とはどんな汁物なんだ?」
アオイの言葉に驚いた真由美は直ぐにジフ料理長の所に行き豚汁がこの世界に無いのか聞くと城下町等一般人には知られているが一般の家庭料理に属する豚汁は王族には提供した事は無いと言われた。
「確かにお味噌汁も朝食の時だけだし、此方から希望し亡いとなかったけど、確かに一般的だけど、味噌汁が良いのに豚汁が駄目って…」
言われて気がついてみると確かに城の食事は洋食よりだったし、朝だけ希望して選べるが朝食から豚汁は一般家庭でも前日の残り物とかでなければまず作らないだろう。
なんとなく納得はしたが豚汁が食べたいのにはかわりがないし、別に豚汁が駄目という訳では無く今までが合わなかったから出さなかっただけで機会があるのだから出せば良いだけだ、と、いう訳で王族初の豚汁、純粋な豚汁だけでも提供出来る様に小さめの鍋に別に用意して余れば最近取得したチートな時間停止機能つきなアイテムボックスにしまっていつでも食べれる様にいた。
豚汁には里芋を小さめと大きめと形を変えて小さめの里芋で良い感じにとろみをだしよく絡まる様にした。
「今日はいつもより絡まり具合を重視したので麺も平打ち気味にしました。もっと麺の幅をとり、平打ちにして豚汁や豚汁に似た味噌汁に入れた物を私の住んで居た地方では❬だんご汁❭と呼んでいました。たまに食べたくなるんですけど今日は豚汁が食べたかったので豚汁うどんにしてみました。勿論出汁はうどんに使う出汁から豚汁にしたので効果はいつものうどんと同じです。豚汁だけも用意しているので気になる方は声をかけて下さい。豚汁が駄目な方は普通のうどんも出来ますので遠慮せず言って下さい。」
真由美の心配は杞憂に終わり、全員が豚汁を気に入り、豚汁のみも持ち帰りたいと刹にお願いされた為、別に作っておいた豚汁も全てなくなったのであった。
因みにあやかし族でも王族では食べた事がなかったらしく銀さんと紅さんがまわりに広めたいと意気込んでいましたとさ。




