チート化計画
(う~ん、)
一人難しい顔で唸る真由美につぶらな瞳の小さな生き物が近付き肩に降り立つと頬にスリスリと身体を寄せて甘えきた。
「真由美~、どうしたの~?お腹すいたの~?」
可愛い生き物は自分の大好きな主人の気持ちなどわかっているのだが、相手にして欲しくて仕方ないだけなのだ。
「うん?あっ、ごめんごめん。少し考えてただけだからお腹は空いて無いよ~、パールはお腹が空いたの?」
そう笑顔で可愛い生き物を指先で撫でると生き物が喜んでいるのが分かる。
小さな可愛い生き物は精霊であり真由美の契約者、この世界では神に近い存在で普通では見る事も出来ない存在なのだが、真由美の中では可愛いペットの様な扱いである、パール本人?もそれで構わない様なので誰も咎めない、というか咎められないのだが…。
それはさておき、真由美が何を考えているのかというと自分の能力についてと、その回りの反応についてであり、回りが諦めた感じの顔で反応するのが納得出来ていなかったのだ。
(絶対に私だけとかおかしいから!私がチートしているならメアリー様も孝文君もチートなのが当然なのに!)
真由美自身も自分が規格外な事は多少は理解している、いるのだがそれだけで回りが真由美だけを特別視する事には納得出来ていなかった。
(多分環境のせいで思い込んでるだけだと思うんだよね~)
そう思いながらならば行動するべしとほくそ笑みながら撫でる真由美に嬉しそうにすり寄るパールであった。
「という事でコレをお貸ししますので好きなのを選んで読んでいってください。何冊か読んだら感想を聞かせてくださいね?」
「分かったわ。とても楽しみだったの!このタブレット?本当に便利な物が出来ているのね?これで好きなだけ本が読めるなんて素晴らし過ぎるわ!」
興奮しながら喜んでタブレットを受け取るメアリーに操作の仕方を教えていく真由美。
時代の進化が違い過ぎる世界だからとスマホとタブレットは皆には見せない様に一人の時だけ使っていたのだが、真由美のチートが自分の知識?のせいならとメアリーと孝文にそれぞれにスマホとタブレットを与え異世界ものの物語を読ませチートが異世界人には鉄板で真由美に可能だったのなら自分達にも可能的な事なのだと理解?して欲しかったのだ。
メアリーも孝文もこの世界に召還された者、ただその時代は今の様なチートだの召還だの異世界者の物語は流行ってなかった。
流行ってないし、真由美と孝文の子供の頃でさえ図書館か図書室に行って借りるか読むしか大量の本に接する事ができなかったのだ。
メアリーは貴族のお嬢様で屋敷に図書室があったそうだが規模は小さいし本の種類が違い過ぎる、そもそもメアリーの時代はアニメすら広まってない時代。
そんな二人なのだが同じ世界だったし、テレビや電話の存在は知っているから進化に驚くだろうが理解はしてくれる、家族以外の人には見せられない事も理解してくれると思い自分のチートは二人にも可能性があるから自分の可能性を確かめて欲しいと今回頼んでみたのだ。
結果、二人は喜んでと最新の技術に驚き、メアリーはタブレットを、孝文はスマホをと、嬉しそうに受け取った。
一通り操作の仕方を教えてあまり読み込まない様に注意も忘れない。
この世界にきてスマホもタブレットもチート化?して充電知らずになっていて気がつけば何時間でも読んでしまう、二人がどうかは分からないが真由美は普通に一日中でも読める人間だ、ただし真由美が部屋に籠ると誰も彼もが真由美の様子を心配する為頑張っても半日も籠れないのが現状だし、二人も日々忙しいのでそこまで時間は取れないかもしれない、ただ読書にはまる人は少しの時間でも惜しんでは読書するというはまり過ぎる可能性があるまして二人にとって目新しい物語と豊富な種類、それは心配だ。
「決して無理して時間は作らないでくださいね?睡眠時間を削ったり、職務に支障が出る様なら即中止にしますからね?」
自分からお願いして読んで貰うのにノリノリで既にはまりそうな二人に心配しながら念を押す真由美。
メアリーと孝文がチート化できれば次に可能性のあるメアリーの血族者である現王と皇太子であるカイとアオイ、カイの子供のメイとルイだ。
メイとルイはまだ小さいので読書は将来的に少しずつでも構わないし、なんなら今から言い聞かせれば素直な子供は普通に受け入れてくれるだろう。
問題はカイとアオイの二人と現王であり、王は忙しいので時間が取れないだろうし、あとの二人も完全にこの世界の子供でチートどころか地球の常識が通用しない、異世界ものの読書でどこまで思考を柔軟化出来るかにかかっている。
基本素直な二人だから読書にはまれば大丈夫だろう、小説物は好まれないかもしれないがアニメにははまりそうな気がする。
二人だけでなくメアリーと孝文でさえ漫画の多さに目をキラキラ?、ギラギラさせていたし、漫画だけでなく小説物もあると教えると更に喜んでいた位だから………うん、心配ないし、問題ないかもしれない。
二三日後にメアリーと孝文の様子を見に行こう!
タブレットとスマホを貸したのは失敗したかな?と密かに思う真由美であった。




