限定
皆初めて食べたという ぶりしゃぶはとても好評だった。
ぶりに似たぶりより旨味の強い切り身を鍋の中でしゃぶしゃぶとくぐらせ ほんのり白く色ずいた身は刺身とは又違う食感でポン酢で食べるといくらでも食べれる、水炊きとも 牛しゃぶとも違う魚ならではの美味しさがあり 是非違う魚でも試してみたいという事だった。
魚料理だが本格的な和食とは違う様な気もしていたまゆみは皆が満足してくれているのでホッとした。
まゆみにペースを落とせと言われ席も移動したアオイとたかふみもなんとか潰れずに雑炊まで食べる事が出来満足している。
満足しているのだが、目の前のまゆみが生ビールをジョッキで5杯も飲んでいるのに 未だに平然とした顔色で飲み続けている事には眉を寄せている。
『どこが強くないだ、ジョッキで5杯も飲んで平気な顔してりゃぁ酒豪だろうが笊だろうが言われるのは当然だ。あのまま隣に居たら俺達は又潰れてたわ!』
『確かにペースを落とそうとしてもまゆみさんのペースに乱されて潰れていたでしょうね。』
アオイがまゆみに向かってそう言うとたかふみがそれに同感だと言い、刹達もそれに頷き同感する。
あまりに回りが自分の事を酒豪だと決めつけるのでまゆみは反論した。
『確かに5杯は強い方かもしれないけど、私だって酔って記憶を失くした事もあるし、途中で気分が悪くなったり眠った事だってあるよ?本気の飲み比べなんかしたら絶対弱い方だと思うんだけどなぁ。ただ長時間飲む環境で飲んでたから他の人より長く楽しんで飲めるだけで…』
自分が酒豪やら笊だと言われるのが気にいらないらしく、短時間で飲んだり飲み比べなどすれば自分は弱いというまゆみ。
まゆみの中の酒豪とは人と飲み比べをしても酔わない 強いお酒をぐびぐび短時間に飲める人らしく、自分はそれが出来ないから酒豪でも笊でもないと言う。
『じゃぁ、アオイ達と飲み比べをしてみればいいんじゃないか?』
お互いに納得出来ないアオイとたかふみ、まゆみにミツジを加えて4人で同じ条件で飲み比べればはっきりするじゃないかと 紅が提案した。
もしその勝負でまゆみが勝ちそれでもまゆみが納得しなければ自分達と飲み比べをすればいいと。
『それはいい案だ。もし潰れても僕達が介抱するし、無理なら途中で棄権すればいい。どうだい?まゆみ、勝負して皆を納得させてみては?』
そう問いかける刹にまゆみは首を降る。
『もし潰れたり、途中で気分が悪くなったりしたら皆に迷惑をかけるし、そんな姿を見られるのは恥ずかしいです。それに飲み比べといっても私が飲めるのはビール位で、ん?あっ、そう、そうなんです。日本酒は飲むとすぐ顔に出て酔いも回りやすいし、焼酎も酎ハイしか飲めません。ワインも赤には弱いし ウイスキーもブランデーも飲めないし、やっぱり酒豪じゃないですよ!』
と得意ではないお酒があるから酒豪ではない、飲み比べはしたくないと言うまゆみ。
ビールをあれだけ飲んでも顔色一つ変えず平然としているのにお酒を飲んだら変わると言われてもと信じないアオイ達や皆に それならばとまゆみはミツジに熱燗を用意してもらい皆の前で飲む事にした。
『顔が赤くなるのを見せる為に飲むなんて変ですけど、証明する為ですしね?』
そう言いながら用意された熱燗を飲むと飲んだそばから頬を染めていく、ほんのり赤く染められた頬に皆驚くと火照った頬に手をあて熱を確認しながら皆を見るまゆみ
『これで信じてもらえました?』
そう言い皆を見る瞳は少し潤んでいる。
冷酒ではなく熱燗にした事で一瞬で熱を帯びた瞳と頬、平然と飲む姿からほろ酔いの色気のある女性に変貌するまゆみに息を飲む男性人。
こんな姿を見せられて平常心で一緒に飲む自信はない、他の者に見せたくないと思ったアオイ、たかふみ、ミツジの3人はすぐさま熱燗を奪い
『疑って悪かった。まゆみはビールが好きなだけで酒豪じゃない。』
とビールをすすめる。
『お酒や苦手な物は信頼して身を預けれる相手とだけ飲んで普段はビールの方がいいね。』
と刹達もビールを進めた。
『皆を信頼してない訳じゃないんですよ?せっかく皆で飲むのなら楽しく最後まで一緒に飲みたいので酔い易いお酒は控えてるだけで熱燗や冷酒はたまになら飲みますよ?』
皆を信頼してないから他は飲まないのではなく皆と最後まで飲みたいからビールを飲むのだと説明すると皆からなるべく他は飲まずにビールにしておけと言われた。
皆が自分の主張を素直に受け入れてくれたのだと喜びビールを飲むまゆみ、頬の赤みが少し薄れ瞳の潤いも少しやわらぐ。
飲むお酒の種類で雰囲気が変わるなんて思ってもいなかったアオイ達は
自分以外の者の前ではビール以外は飲ませない様にしようと心に決め、
まゆみ以上にビールを飲める様になろうとビールを飲みはじめる。
再びビールを飲み続け頬の火照りもなくなり平然とした表情に戻るまゆみに対してアオイとたかふみの2人
は瞼が重くなり顔の赤みが増してくる、急に酒に強くなる訳もなくアオイとたかふみは限界に達し潰れる前に自室に戻り寝る事にした。
今日も途中から参加したミツジは自分のペースを守りまだまだ飲める状態なのだがビールで腹が膨れてしまい苦しいのでと日本酒に変えて飲み続ける。
決して太くはない体のどこに入るからわからない、食べ初めから7杯目のビールを飲み続けるまゆみの平然とした顔を不思議に思いながら見るミツジと刹達。
『そんなにビールは美味しいかい?』
『はい、美味しいです。』
刹の問いかけに笑顔で答えるまゆみ
ビールに関してだけは酒豪で笊だと思うミツジや刹達であった。




