昼食は食べ比べ
調理場の見学を終えたまゆみはゼフとミツジと3人でホールに向かった
ホールにはすでにメアリーがいてまゆみ達を待っていた。
『あれ?メアリー様もうお越しになってたんですか?まだ時間にはかなり余裕があると思ってたんですが』
メアリーが自分達を待っていたので時間を間違えたのかと思い時計を探すまゆみ、そんなまゆみに微笑みかけて時間は間違っていないとメアリーは言う
『ふふっ、だって今日は麺から打つのでしょう?麺を打つ所から見ていたいから私 早く来て待っていたの。』
茶目っ気たっぷりの笑顔で待っていたと言われ まゆみは嬉しくなり
『そんなに楽しみにして下さってたなんて、とっても嬉しいです。メアリー様の為にも他の皆さんの為にも美味しいうどんを打ちましょうね?
』
とゼフとミツジに頑張ろうと気持ちを伝えると2人も嬉しそうに微笑み頷く。
早速厨房機器と麺線機を召喚し ゼフ、ミツジ、まゆみの順番で麺を打つ事にした。
ゼフが打ち終え、その次にミツジが打つ、ミツジが麺を打ち終えそうな時、王族の方達が次々とホールに到着し
『間に合わなかった』
と皆肩を落としていた。
皆も麺打ちから見たかったらしく昨日より早目に来てみたらしい。
そんな皆にまだ まゆみの麺打ちが残っているとゼフが伝えると皆は喜んだ、だがまゆみが
『では、皆さんも揃われたので麺を茹でていきますね?』
と言い 昼食の準備を始めだしたので皆が麺打ちは?と不安気に訪ねる
『今日はゼフさん、ミツジさん、私の3人の麺の違いを食べ比べてもらいます。なのでゼフさんの麺から時間をおかずに なるべく打ちたてを食べてほしいので先に茹ではじめます。私は早打ちをするので麺を茹でてる時間で間に合います』
と麺を茹でている間に麺打ちをすると説明すると何だか期待の目で見てくる王族の皆、そしてゼフ親子。
麺を茹で釜に入れタイマーをセットし人数分のつけだれを作る。
甘めで濃い目の醤油出汁に甘めにたいた肉、柚子皮を入れひと煮立ちさせる、その間に3センチ幅にカットしたネギを素揚げする。
肉と柚子を入れた出汁を深目のつけだれ用の器に入れネギをのせれば完成。
お子様達の分から柚子皮を取り除き代わりに甘いキツネ揚をきざんで散らしたらお子様用も完成。
そこで皆が麺打ち、麺打ちを忘れているとまゆみに突っ込む。
『?忘れていませんよ?私が麺を打つのはミツジさんの打った麺を湯がいている間ですから もう少し後です。』
そう言いながら茹で釜の中の麺を(たも)とよばれる網ですくい、茹で途中の麺を何本か指で摘まんで固さを確かめる。
『そろそろなので皆さん席に着いて下さい』
と皆を席につかせ幾つかの寿司桶を持って来てその中に麺と茹で釜の中のお湯を入れ皆の手の届く場所に置いていく。
『さぁ、出来ました。今日は麺質を
楽しんでもらおうと 釜揚げつけ麺にしてみました。麺を食べ比べてもらうので他の物は用意してません。足りなければ後から何か作るつもりです、では、まずはゼフさんの麺からです。桶の中の麺をつけだれにつけて肉を絡めて召し上がって下さい』
そう言ってまゆみは皆を促しながら今度はミツジの麺を茹で始める。
皆が食べ始めたのを見て
『では、私は麺を打って来ます』
と麺線機に向かう。
そして早打ちというだけあってあっという間に3分もかからず麺を打ち終える。
ゼフ、ミツジ、メアリーは最初からいるのでまゆみの麺打ちがゼフ達と比べ物にならない位早いのがわかる
『本物に早打ちなのね?あっという間に終わってしまったわ』
と感心するメアリー、ゼフとミツジは ただただ凄いと呟いている。
麺を打ち終えたまゆみは又茹でている麺をすくい、
『皆さん、今食べている麺の食感を忘れないで下さいね?特にゼフさんとミツジさんは自分の打った麺と他の人が打った麺がどう違うか、それがわからないとミキシングの違いもわからないので、しっかり確認してくださいね?』
そうしてミツジの麺を皆の前に出し同じ様につけだれで食べる皆を見回す。
次に自分の打った麺を茹で釜に入れていると 皆から (あっ)とか(違う)の声が聞こえて来て まゆみは満足気味に微笑みゼフとミツジを見た。
『ゼフさん、ミツジさんはわかりましたか?』
と2人に訪ねると
『ああ、食べ比べると分かるな、最初に自分の分を食べた時は昨日の麺と比べてあまり違いはないと思っていたんだが、ミツジの麺を食べたら自分の麺と食感と固さの違いがわかったよ』
『確かに親父の麺の方が固い、でもツルツルしてない。俺の方は麺は少し軟らかいけどツルツルしてる。昨日の麺との違いは俺もわかりません』
『昨日の麺とは比べなくて大丈夫です。昨日は氷水でシメテますから麺の食感が変わります。それぞれ、かけ出汁、つけ出汁、温かくても冷たくても出汁や提供の仕方で違う食感、食味になります。又逆に食感の違いをわかりにくくする事もできます。なので今日は同じ出汁で茹でたてを食べ比べてもらったんです。』
と言い 今度は自分の打った麺を皆の前に出す、それを食べた皆から
『全然違う。』
『本当、面白いわね』
と言われ更に満足気に微笑む。
『良かったです。今回はゼフさん達の約にたてればと違いが分かる物にしたんですが皆さんの反応が気になってたんです。只の食べ比べで同じ食べ方なんて違いが分かっても楽しんでもらえないかと心配でした、でも皆さん 楽しそうに食べて下さったので とても嬉しいです』
と皆を見て微笑むと皆から
『美味しかったよ』
『楽しかったよ』
と言われ泣きそうになる。
そんなまゆみにメアリーが
『本当にありがとう。まゆみさんがどんなに皆の事を考えてくれたか、まゆみさんの作ってくれた物を食べられば貴女の人柄が良くわかるわ。それなのにこんなに皆の事を考えてくれるまゆみさんに侮辱するような事を言う人達がいるなんて信じられないわっ!』
と刹やアオイ達をチラリと見る。
メアリーや他の皆も今朝の出来事を知っていたのだろう。
メアリーや他の人達に見られて
刹やアオイ達は
『本当にすまない事をした』
『すみませんでした』
と身を小さくしながら謝罪した。
そしてその後まゆみを調理場に向かわせたメアリーや王族の皆から説教をうけるアオイ達であった。




