初めての調理場
ミツジに連れられて本城の調理場に来たまゆみは目をキラキラさせて楽しそうに作業をしている料理人達の動きを見ていた。
2人が調理場に入って来た事に気づいたゼフは まゆみの嬉しそうな笑顔を見て驚いた、ミツジからアオイ邸での出来事を聞いていたゼフはミツジが予定を変更してアオイ邸にまゆみを迎えに行く事を許可していたので2人で戻って来る事はわかっていた ただまゆみが泣いていたと聞いていたので落ち込んだまゆみを慰めるつもりでいたのに そのまゆみは明るく笑顔で嬉しそうにニコニコしながら調理場の中を見回しているのだ。
『嬢ちゃん?落ち込んで泣いていたんじゃないのか?』
笑顔のまゆみについ思った事を口にだしてしまったゼフに まゆみは顔を赤くして
『違います!落ち込んでも泣いてもいません!本当に誤解なんです。』
と必死にゼフとミツジを見て恥ずかしそうに顔を赤くして訴える。
まゆみの必死の姿が可愛くてゼフもミツジも思わず笑ってしまうと
『もう!笑い事じゃぁないんですよ?本当に誤解なんですから。あまり皆から誤解されていると恥ずかしくて皆の顔が見れません!』
少年の様な服装で顔を赤くして恥ずかしがる姿が可愛くてついつい笑ってしまったゼフとミツジは笑いを堪えながらまゆみで謝った。
まだ納得していないまゆみは唇を尖らせてはいるのだが 目は調理場で働く料理人達に移っている。
『気になるか?』
ゼフが尋ねると素直に気になると返事をするまゆみ、そんなまゆみを連れて調理場の作業を一つ一つ説明しながら見せるゼフ。
王族専門の料理人の中でも料理長でもあるゼフが突然
『なぁ嬢ちゃん、ここにある料理をアレンジ?してくれないか?』
回りの料理人は料理長であるゼフが素人であろう少年の様な服装の女性
(召喚されたアオイの婚約者)に何を突然言い出すのかと驚きの顔を向ける、そんな料理人達には構わず『嬢ちゃんのアレンジに俺は驚いた、まだまだ沢山知ってるんだろ?ここには材料もふんだんにある。どうだ?頼めないか?』
と驚くまゆみに頼むゼフ、初日にアレンジの事やうどんの種類の事を興味深そうに聞いていたゼフを見ていたのでまゆみは快く承諾した。
『そうですねぇ、まずボンゴレは魚介類を足して鷹の爪を加えて下さい。後は塩で味を整えれば魚介類のペペロンチーノ風になります。ドレッシングは玉葱のみじん切りと大根おろしを少量、醤油、柚子の果汁を加えて和風ドレッシングにします
後はスープ、コンソメスープにはじゃが芋、人参、玉葱、トマトをサイコロ状にして茹でた大豆を加えにつめれば ミネストローネ風になります』
と出来上がった料理を見て次々とアイディアを出していくまゆみに固まる料理人達。
そんな料理人達にまゆみは
『こんな感じです。味や作業は私がするより料理人の皆さんに任せた方が美味しくなると思うので皆さんがして下さい。』
と頭を下げる。
それを楽しそうに見るゼフにまゆみは思い出したという様な顔をして手招きする。
ゼフが近づくとまゆみの手には何冊かの本がありそれをまゆみはゼフに差し出す。
『うどんの本と一緒にパスタの本も召喚しました。イロイロ載ってるので見て下さい』
と笑顔で渡された本には画質の綺麗な写真のどれも美味しそうな様々なパスタが載っている。
『嬢ちゃんの世界は料理だけでなく料理の本までこんなに進歩しているのか?』
この世界は日本でいう昭和四十年代位までしか発展していないので当然料理本もカラー写真ではないし画質も悪いので料理がいまいち美味しそうに見えない物ばかり、やたらと文字が多い物ばかりなのでまゆみの渡された本を見てゼフはその美しさに
驚き目を耀かせている。
ゼフが見ている本を見てミツジも
『うどんの本も本物がそこにあるみたいで状態がわかりやすくて驚いた』
と自分がもらった本の事をゼフに説明している。
そんな2人にまゆみは
『お店に持ち込んだ物しか召喚出来ないみたいなので本はこれだけですけどまだまだ沢山のレシピ本があります。試してみないとわからないですけど他のレシピも出せるなら出して又お渡ししますね?』
と笑顔で2人にまだまだこれはほんの一部に過ぎないと爆弾発言をする
それを聞いたゼフは真剣な顔で
『ありがとう 嬢ちゃん、宜しく頼む』
とまゆみの両手をにぎりまゆみを見つめる。
そんなゼフの手をミツジは引き剥がし、自分がにぎり直した。
ミツジが手をにぎり見つめると不思議そうに笑うまゆみの顔があった
『あっ、すみません無意識ににぎってしまいました』
と顔を赤らめ慌てて手を離すミツジにまゆみは笑いながら
『大丈夫です。それだけゼフさんとミツジさんに喜んでもらえるなんて、本を召喚して良かったです。』
と嬉しそうにゼフとミツジを見る。
その後他の料理人達からも自分達にも、アレンジを教えてほしいと頼まれ ちょくちょく調理場に来る事を約束させられて調理場を後にするまゆみ達であった。




