若い料理人 視点
俺の名はミツジ、料理人ゼフの息子であり同じ料理人である。
昨日第二王子のアオイ様の婚約者となる女性が召喚されたというのは知っていた。
しかもその女性に料理を作ってもらいに来るであろう (あやかし族)の刹様が早々に実行に移し、なんとその女性の料理が適合したのでしばらくこの国に滞在する事になった事も。
その女性の料理というか発想力は素晴らしい物で我が国でも最先端を行く本城の料理をいとも簡単にアレンジをしてしまったとの事、しかもそれが美味しかったのだと親父から聞いた。
更に夜になると刹様に作ったうどんがおいしいくてイロイロと出されたつまみの数々に親父も驚いたのだとか、しかもそのほとんどを彼女一人で作業し、料理人の自分は少し手伝いをする程度だったと誉めていた。
そんな親父に誉められた女性料理人とはいったいどんな女性だろうと今日のお昼を楽しみにしていたのだ。
だが、アオイ様とたかふみ様と現れた女性は 熟練された女性というより女の子に近いまだまだ若い女性だった、 アオイ様の婚約者になる方なのだから当たり前か。
自分の想像と現実の差に落胆しついメアリー様達の前で(こんな娘の料理を)などと思ってしまった。
女性の名は まゆみ というらしい、アオイ様と同じ歳のようで普通に まあまあ可愛い方だと思う。
特別美人ではなく特別可愛い訳でもない。
だが彼女のまとっている雰囲気は俺の想像していた女性のように落ち着いていて作業はまさにテキパキとしていた。
そんな彼女の人柄なのか 王族の皆様が食事の準備から見たいと早くに集まり12時の鐘の前には勢揃いだ。
これには親父も俺も驚いた。
ただ、俺の驚きはそれだけでは済まなかったのだ。
彼女は開始を宣言すると 早速麺を湯に入れ 茶碗蒸しをだし皆に配りだす。
その茶碗蒸しの美味しさときたら!出汁が旨いのだろうとても旨くて俺はおかわりをした。
彼女は麺が茹で上がると素早くお子様達にうどんを作り 大人用のうどんもどんどん作っていく。
一度に3人分ずつ 見惚れる位素早く作り皆で食べだす。
俺は昔から親父と供に王族の方達と食事をしていたので横にいる親父と同様うどんを食べた、彼女も俺が食べると分かって作ってくれた。
……食べてすぐ 俺は固まってしまった。(なんだこれは?今まで食べていた軟らかいうどんとは大違いだ!それにこの出汁!冷たく冷やされているのに出汁の味がしっかりしているし、麺は硬すぎず 表面がツルツルしている。こんなうどんは食べた事がない。)そんな事を思っていると彼女はメイド達にも食べさせたいと言い出した、ついでにおかわり分も作るので希望の物を聞いて回ると。
その姿はまさに俺の理想、いや想像していた通りで優しい彼女はテキパキと皆のおかわりを聞いただけで間違いなく用意しメイド達の分も用意しさらには彼女達とこの場に居ないメイド達にもと茶碗蒸しを用意し
薬膳の効果が女性に向いているから食べてほしい、自分の我儘だとお願いまでしている。
俺はあせった。
急いでおかわりのうどんを食べ 彼女に気持ちを伝えなくては、貴女は俺の理想の人ですと …違う、貴女のうどんは俺の理想の料理ですと。
焦りすぎて回りが見えていなかった俺は彼女に怒られた。
怒っている顔も可愛いなと思っていると刹様から突っ込まれる。
俺の否定も肯定も聞かずに自分も自分もと皆が言いだせば彼女は可愛らしく首を傾げて胸を掴み (私の方が心を掴まれました)と大告白をする。
その笑みその仕草は爆弾のように俺の心を刺激して 冷静を装うのに苦労した。
だがしかしせっかく冷静になった俺にうどん作りのミキシング作業を伝授すると彼女は言う。
先に親父に伝授していたのを見ていたが 彼女は親父の手を掴み親父にピタッと寄り添うようにしていた、
それを俺にしてくれると思うだけで嬉しくて恥ずかしくて言葉が出ない
頷く俺にピタッと寄り添い手を上から握る彼女に意識を集中…せず、ミキシングに意識を集中し彼女の教えを頭と体に叩き込む。
彼女と一緒に住む狼どももミキシング作業を希望したが、彼女が断るのを見て俺は誇らしく感じた。
俺の理想の女性が目の前の女性なのだ。
まだ彼女は正式なアオイ様の婚約者ではない。ならば正式な婚約者になるまでは、回りの狼どもから俺が守ってみせる!その為には彼女の側に居なくては、いや居たい。
これからどうするかよく考えよう。




