食べてほしい。
『では、皆さんのおかわりの希望をお聞きしていきます。』
メイドさん達も食べてくれる事になり改めて誰が何をおかわり希望なのかを麺を湯がいている間に確認していくまゆみ。
『私は一人分は多いので子供達と同じ物を同じ量でお願いできるかしら?』
とメアリー様。
『私もお義母様と同じ物で宜しくお願いします』
『私も同じで、あとできれば子供達に茶碗蒸しを2つ頂きたいのですが』
と女性人はお子様用の味が気になるのだが、量は食べれないらしくミニサイズのまま希望された。
男性人は紅さんとゼフさんが全て同じ量で、刹様と銀さんは2人でうどんを一つ希望。刹様が茶碗蒸し、銀さんはいなりをそれぞれ希望。
あとはうどんだけが3人、いなりと茶碗蒸しが2人という希望だった。
『では、先にいなりと茶碗蒸しをお出ししていきますね?』
と言いながら素早くいなりを八人前作り、新たに茶碗蒸しを召喚する。まず2人分茶碗蒸しを用意しメイドさんに頼み子供達と刹様にお出しする。その次は王様とカイ様、紅さんとゼフさんにいなりと茶碗蒸しのセットをお出しする。そして銀さんにはいなりだけ。
途中で麺が湯で上がったので麺をあげ流水で冷しておく。
メイドさん達の分はおかわり分の後に作る事を予め約束している。それでも余り待たせたくないので、すぐさま玉とりをして先にミニサイズのうどんを3つ作り女性人にお出しして残りの9人分を次々に作る。
9人分の内の3人分はいなりとセットにしてメイドさん達用に私が運ぶ。その間にメイドさん達に紅さん、ゼフさん、アオイにたかふみ君、若い料理人、刹様に運んでもらった。勿論刹様達用の取り皿も忘れずに。
そうして皆に全て行き届いているか確認すると、全員から大丈夫と言う返事があったので。ようやくメイドさん達も席に着いて食べる様に促すとメイド長さんから小声で話しかけられた。
『まゆみ様、誠にあつかましお願いなのですが、あの、そちらに残っている茶碗蒸しを頂いても宜しいでしょうか?…たいへん美味しかったので…』
皆さんと同席する事だけでも恐縮するのにすでに食べている茶碗蒸しのおかわりを要求するのは気が引けるのだろう。
すぐに持っていくのでと先に食事の席に着いてもらい、 自分の分を含め残りの茶碗蒸しをすべてコースターにセットしお盆にのせる。まずメイドさん達に1つずつ配り
『茶碗蒸しをセットに入れるのを忘れてました。残ってしまっているので もし食べれれば食べて下さい』
と持っていく。そうして後の残った茶碗蒸しも彼女らの前に置き
『あとお願いしたいのですが、残った茶碗蒸しを他のメイドさん達にお裾分けに配って頂けますか?数が足りなければ後で人数分出しますので。茶碗蒸しは女性に食べて貰いたいと私がメアリー様に我が儘をいって作らせて頂いたので、食べて感想を聞かせて下さいとお願いして頂けますか?特に貧血気味の方とか喘息など喉の弱い方にはすすめて下さい。血を補う効果のあるうどん出汁に更に卵とほうれん草で効果をアップしていますし、銀杏はせきや慢性的な喘息を改善しますので。』
とお願いする。勿論事前にメアリー様にはテレパスで了承を得ている。
彼女達が少しでもこの場で食事する事に引け目を持たない様に、又この場で食べた事を他のメイドさん達に責められたりしない様に(女性に茶碗蒸しを配って感想を聞く)という大義名分のカモフラージュを施した。
そんな私の考えをすぐに理解したメイド長は
『解りました。その役目、私が責任を持ってお受けします』
と微笑みながら皆に聞こえない様な小さな声で
『ありがとうございます』
と言いながら頭を下げる。
そんな彼女に私も皆に聞こえる様に
『ありがとうございます、宜しくお願いします。』
とやり取りをしているとメアリー様から
『茶碗蒸しって美味しいだけじゃなく体にも良いのねぇ。今日は茶碗蒸しに合わせて女性人向けに献立を組んだのかしら?』
と質問された。刹様があやかしの国から傷を癒しに来てるとはいえ今日のお昼は刹様とは関係なく約束していた事なので あえて女性向けに作ったものに思えたのかもしれない。
『いえ、昨日ほぼ毎日お酒を飲むとお聞きしたので消化を良くする作用のあるみょうが、わかめを使ってさっぱりした物にしようと意識して考えたうどんに合わせようと思いついたのが 茶碗蒸しといなり寿司です。結果的に女性にオススメしたいと思ってしまいました。勿論全て男性 女性関係なく体に良い物は皆さんにオススメです。いなり寿司だっていなりのお揚げさんに使っている大豆は気を補って消化機能を高めるし、美肌効果もあります。うどんも茶碗蒸しもいなり寿司もそれぞれの薬膳的な役割があるので男女は関係ありません。ただ私が個人的にメイドさん達に茶碗蒸しを配りたかったただけです。』
とへへっと笑いながら説明した。
すると突然若い料理人が立ち上がり
『メアリー様、まゆみ様、お願いがあります。』
と真剣な顔をしてメアリー様と私の顔を見ている。メアリー様驚きながら願い事とは何なのか聞くと
『是非ともまゆみ様の弟子にして頂きたい!自分はこのうどん職人の技と薬膳の知識を学びたいのです!』
と席から離れ此方に土下座をしながら大きな声でふたたび
『お願いします。弟子にして下さい!』
と皆の食事の手を固まらせた。




