異世界2日目の朝
清々しいほどの光の中で目を覚ました小山真由美44歳。彼女は今、放心状態であった。何故放心状態なのかと云うと目覚めた場所に見覚えがないからだった。自分の部屋でもなければ実家でも親戚の家でもない。まるでホテルのスイートルームの様な(実際に泊まった事はない)豪華な部屋のこれまた豪華なベッドの上だからだ。しかも元々自分の部屋以外では寝れない体質?なのに実家でもあまり寝れないのに知らない部屋で熟睡していた事も加わっての放心状態である。思わず声も出るというのは本当にあるんだなぁと思う。
『何処此処?』
自分の声で放心状態からも目覚め
改めて周りを見回すと昨日の記憶が蘇ってきて又々思わず声にだす。
『夢じゃなかったかぁ~』
ため息混じりの少し落胆した様な自分の声に苦笑いするしかない。
(そうだ、召喚?されたんだ。)
そう納得しながら昨日の出来事を思い起こす。
(昨日 一週間の仕事を終え帰宅した途端光と共に異世界の昼の時間帯に召喚されて皆と昼食を食べ 仲良くなった天使ちゃん達と昼寝をして突然来賓して来たあやかし族の刹様にうどんを振る舞ってそのまま飲み会になった そして飲み会の後部屋のお風呂に入って寝た。)
そうした流れで今自分が豪華なベッドの上に居る事を理解してしっかりと目覚めた頭で考えた
『まずは起きよう』
そう決意めいた言葉を出していると部屋の扉がノックされ覚えのある声が聞こえた
『おはようございます まゆみ様。宜しいですか?』
その声の主はたかふみでまゆみと同じこの世界に召喚された青年 この世界では青年には間違いないのだが元の世界では青年ではない。まゆみと同じ中年なのだ。まゆみが44歳ならたかふみは46歳 見た目が青年なのはこの世界では彼は23歳なので当たり前である。何故そんな説明をするかというとこの世界は元の世界と時間の流れ方が違う?らしいからだ流れ方の問題かどうかは解らないがこの世界は元の世界の倍の時間がかかる 簡単に説明するとこの世界の1分は元の世界の2分、一時間は二時間、1日は2日、という感じなのだ。だからなのか解らないけどこの世界に召喚されたまゆみは見た目が変わってしまった。変わったといっても全く違う人になったとか違う種族になったとかではなく44歳だったのに22歳の見た目になっていたのだ。正確にはたかふみと一緒でこの世界では間違いなく22歳の女性なのだが本人はこの状態を知らなかったのでこの世界で初めて鏡を見て叫ぶ位驚いていた。そんな青年のたかふみが若い女性のまゆみの部屋へ何の用かというと朝食のお誘いと朝の挨拶をする為である。彼はまゆみの婚約者にあたるこの世界のこの国の第二王子であるアオイの側近兼執事の様な役割をしていたので同じ屋敷に住むまゆみの世話も同じ様にするつもりでいたのだ。ただ若い女性の身の周りの世話というのはイロイロとあるので細かい所は女性の世話係に任せる事にして後は自分が引き受けるつもりでいる。そんな彼がまゆみの『どうぞ』という言葉に無意識に部屋に入って驚いて後悔をした。
そこに居たのは間違いなくまゆみなのだがまだ彼女は起きたばかりなのかベッドの上に上半身を起こしたままで此方を見ていた。
『あっ、たかふみ君、アオイ、おはよう!』
と何でもない様に寝起きの顔で挨拶をする。しかし挨拶をされたたかふみは赤くした顔を手で覆い顔を背けながら挨拶を返した。そして一緒に来ていたアオイも顔を赤くしながらだが顔を背けずにまゆみに文句を言っていた。
『お前は何を考えているんだ!そんな寝起きの無防備の姿を若い男に
平気に見せるなあ~!それになんだその格好は~肌が丸見えだろうが~
、寝間着はどうした寝間着は?』
と叱りつけているがまゆみには理解出来ていないようだ。
『えっ?なんで怒ってんの?部屋に来たのはそっちだよね?寝間着?寝間着は邪魔だから着ないんだよねぇ、でもちゃんとタンクトップは着てるよ?…ああごめん、普通に寝起きのままで人を部屋には入れないよねぇ~、寝起きに来るって今まで実家のチビ達とか身内だけだったし昔すぎて感覚がなかった。無意識に入れたけど、ちゃんと起きて身支度してないと失礼だよね?たかふみ君もごめんね?』
と自分の寝起き姿を見られた事への羞恥はないのか自分の行動が非常識な事だったと詫びて来た。普通なら若い女性が若い男性に寝起きの無防備な姿を見られたら恥ずかしさで怒るだろう 例え寝ぼけてて部屋への入室を許可したとしても自分の姿を見られたら恥ずかしさで怒るし部屋を追い出す。まぁお目当ての男性を誘惑する場合は違うだろうがこの場合は当てはまらない。まゆみは自分が若い女性だという事を自覚出来ていないようだ。確かに昨日まで44歳の生活をして来た人にいきなり貴女は22歳ですよ!と言って信じられないだろう、実際に若いのだから実感してくれば徐々に慣れるだろう。それまでは此方が気をつけないといけないとたかふみとアオイは思うのであった。そうして まゆみの異世界2日目は始まった。




