寒くて温かい
暖かい木漏れ日が雛菊に降り注ぐ
いつの間にか眠っていたようだ。
少し獣臭のする毛皮がずり落ち、冷えた空気が体を射抜く
「さむっ……」
落ちた毛皮に潜り込んで、周囲を見回す
洞窟の中のようだ
ゴブリンの姿は見えない
胸がズキッと痛みを訴えた気がした。
雛菊は立ち上がると体をほぐしながら、人里を目指そうと考える
味方のいない今、ゴブリンに教えてもらったドラゴンや気性の荒いモンスターが気になる
それなりに戦えるが、武器を持っていないのは痛い
それにこの世界の人間がどんな存在かも気になる
洞窟の外に出ると、青々した緑が迎えてくれた
ザクザク落ち葉を踏みしめながら、水音がする方へ進んでいく
開けたところにたどり着くと、滝が流れるところに出た。
ゴクリと唾を飲み込んだ
昨日から何も口にしていなかった
口に含んだ水は冷たくて美味しい
雛菊は一心不乱に水を飲んでいく
「ぷはっ……」
乱れた息を必死に整えた
甘い匂いが鼻を掠める。
ドサドサッ……コロコロコロ……
ゴブリンは腕いっぱいに果実を抱えていた
雛菊にも果実を渡すと、己も口いっぱいに頬張りながら横に座り、鼻ちょうちんをつくる
口の端が上がるのを雛菊は確かに感じた。