2/7
頂上から覗く景色
一体どれだけの時間、階段を登ることに意識を向けていたのか、辺りは既に暗くなり始めていた。
青みがかってきた空に、夜の星が淡く主張するように輝きだし始める。
やっと辿り着いたそこは、京都の街並みを一望できる場所だった。
昼の焼け付くような暑さから一転
不快感を刺激する生暖かい大気に眉を寄せ
汗で首に張り付いた髪の毛を無造作に引き剥がした。
ホッと一息ついてから、崖から身を少しだけ乗り出す。
空が徐々に黒色のクレヨンで塗り潰され
上から見渡す街は夜の香りを漂わせ始める。
ジッとその光景を眺めながら、雛菊は真っ黒な瞳を密かに輝かせていた。
真っ黒な瞳……黒曜石の様に美しく、又黒曜石の様に鋭い光を放つその瞳
雛菊が見下ろす街のその先に、一体何を見つめているのだろうか
もうすっかり暗くなりきった空
鈴虫の音色だけが耳に入ってくる。
だんだんと瞼が重くなるのを感じ、そろそろ帰ろうかと長い髪を翻した。
パキッ……
枯れ枝の踏み折れた音が静かなあたりに大きく響く
雛菊は、ピタッと動きを止める
ガサガサガサッ……草木が揺れ、生温かい風が雛菊の頬を舐めた。