第1話 剣士、パーティを追放される
それは魔王の本拠地である魔王城を目前にしている時だった。
「君はこのパーティには必要ない」
え?
俺の聞き間違いかな。
今、ルカはなんていった?
ルカは勇者だ。
「……なんでだよ」
「アベル。君のジョブは剣士だろ。他の仲間はどうだい」
うーん、やっぱりそこか。
俺とルカ以外の2人のジョブは剣聖とアークウィザードだ。
確かにこれじゃ俺みたいな剣士はただのお荷物だな。
「本当にすまない。けど君の力では魔王は倒せない」
「そうかな。俺も努力してるけど……」
「はぁ? アンタ何言ってんのよ。私たちの前から消えてよ」
アークウィザードの少女からの厳しい一言。
こいつ……
昨日の夜、他の2人に内緒で朝まで楽しんだのに。
その時はお互いサカりのついた獣だったな。
俺はムカついてその事を剣聖とルカに話そうと思ったが止めた。
「すまないね。でも人類と俺たちの為だと思ってくれ」
剣聖のおっさんからもこう言われる。
「……わかった。今までありがとうな」
俺は3人にお別れをしてその場を離れた。
だいぶ距離を離れて後ろを振り返るともう姿は見えなかった。
「さてこれからどうしようか」
行くあてはない。
帰宅しようか。
家の鍵はズボンにしまってたな。
俺はズボンのポケットに手をつっこむが見当たらない。
「あれ? どうしよう。本当に困ったぞこれは」
ヤバい。
家の鍵が見当たらない。
どっかで落としたのか。
スリなのか。
「うーん。今日は宿に泊まるか」
俺はとぼとぼと歩いて町のある方向へ向かう。
追放されてから気付いた。
町までの道で気付いた。
「思い出したぞ。家の鍵はたぶんダンジョンで落としたんだ」
今日、俺がダンジョンに潜ったのは一カ所だけ。
でもあんな複雑な迷路で小さい鍵を見つけるのは無理だな。
諦めるか。
でも金ならある。
これなら宿に泊まれる。
俺は上着のポケットから財布を取り出して中身を確認する。
牛革の財布じゃなくてミノタウロスの革製だ。
ミノタウロスとはモンスターの名前だ。
モンスターだが草食で危害を加えない限りは人を襲わない。
銀貨が24枚と銅貨が79枚か。