表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕のための物語。  作者: ココナッツ
2/3

第1話

短めです。




『貴方にとって一番嫌いな日はいつですか?』


こんな質問の意図のわからない、する意味あるのかって質問に、もし世界の生存者達全員が答えてくれるのなら、きっと全員、バカにしたような表情で、口を揃えてこう言うだろう。


『2057年4月1日』


この日、あいつら『非人類』が産まれたらしい。

妊婦の腹から、赤ん坊として産まれてしまったのだ。

病院関係者や妊婦の方、さらにそのご家族も、さぞかし驚いたことであろうその事実が、世界中のあらゆる場所で、同時に起こったというのだから、当時世界がパニックに陥ったのは当然だろう。


その後各国は話し合い、産まれてきたあいつらを全員まとめて南極に送ることにした。

これには、今尚人類の間で絶大な力を持つ大企業『ネオパーソンズ』の助言もあったらしい。

「南極に全員送って、そこで研究をしましょう」

という、いかに人が好奇心で作られているかが分かってしまう助言だ。

こんなおかしな名前の会社に唆され、すべての国があいつらを南極に送り、研究がスタートした。

ここまでにかかった期間はたった2日。それもこれも、ネオパーソンズが大量の資金援助から情報操作まで、力を注いだ結果らしい。世界規模のパニックを直ぐに収めたその手腕には、ただ驚くばかりである。


その後しばらくは平和だった。

子供を産めば漏れなくあいつらが産まれてくるから、人類は子孫を残すことができず、退廃の一途をたどっていることを除いては。

これに関してもネオパーソンズが、クローン技術を応用して色々試してるらしいが、詳しいことは知らない。


そして問題は研究スタートから10年後。

あいつらが研究所を破壊し逃げ出した。噂の中にはそれは人為的なものだ、なんて説もあるが、真相は闇に埋もれている。


逃走を果たしたあいつらの数は、全部で約40万。そいつらが少しずつ少しずつ、海を渡ってか空を飛んでか転移をしてか、北上してきたのだ。

あいつらは各地で人々を殺し続け、次々と人類を廃れさせていった。

さらに、あいつらに生殖機能はないはずなのに、どんどんどんどん数を増やしていき、2068年、北上してから僅か1年で、人類の人口を上回っていった。


そして2074年現在、正確な人口はわかっていない。人口を調べる機関である国が滅びたのだ。


だが、少なくとも3900人+αは生きていることを、僕は知っている。



あいつらが北上してきた時、なぜだか襲われず、これまたなんでか今も尚襲われずに残っているセーフティゾーンが、僕が知っているだけでも4つある。


今そこを僕は『エデンの楽園』と呼び、1300人程度の集落のような感じで生活している。

そして4つの楽園同士が細々と交流し、食料、水などの必要物資、ナイフや銃といった武器、情報などをやりとりし、なんとか生きながらえているのが現状だ。

4つ以外の楽園も、もしかしたらあるのかも知れないが、周囲80キロの範囲にそんなものはないし、あったとしても、80キロ以上の道のりを、あいつらに襲われる危険を犯してまでいく必要はない。


ちなみに、+αの人々は、ネオパーソンズの方達だ。

どこからでも見えるんじゃないかと思うくらい高く太いビル。

そのビル自体が、僕の知る4つの楽園の内の1つでもある。

昼でも白く輝くそのネオパーソンズビルで、2000人もの人々があいつらについて研究している。

そしてネオパーソンズは、僕が知らない楽園ともコンタクトをとっているという噂がある。まあ、噂は噂だ。本当かも知れないし、そうじゃないのかも知れない。

それと、僕のいる楽園には、ネオパーソンズの社長の息子なんてのもいる。

ビル内の実験が危険なものばかりだから、こっちに避難してきてるらしい。

こんな世界、どこにいても危険はつきものだと思うけれど。




そんなこの世界の常識を、僕はつい一カ月前まで知らなかった。

あいつらに関することは知っていたけど、それ以外の常識を、一カ月前、走り疲れてぶっ倒れてたところを拾われるまで、ホントにちょっとしか知らなかったのだ。



そいつはなぜかって?



僕は一カ月前、正確に言えば2074年4月1日まで、7歳のときからの10年間を楽園の外で暮らしていたからだ。




僕のことを「大好き」と言ってくれた、僕の大好きなひとと。


僕の、親愛なる師匠と一緒に、僕は楽園の外で、楽園を知らずに、あいつらの世界で暮らしていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ