プロローグ
初投稿です。
諸々下手な部分はご容赦ください。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
僕は逃げていた。街灯が壊れた、三日月の照らす暗い道を。
あいつらに捕まらないように。
僕はまだ生きていたいから。
僕はまだ死にたくないから。
弄ばれたく、ない
「ハッ、ハッ、ハッ、ッ!」
大きく割れたコンクリートにあしをとられ、バランスを崩してしまう。
だけど僕は走るのを止めない。止まったらすぐに追いつかれてしまうのが目に見えてる。
「…6時…!」
でもその悪夢ももう終わる。あいつらは日が昇ると姿を消す。その後3時間、あいつらは決して姿を見せない。
ようやく訪れる人類の休息期間 『白昼夢』
「ダァッ…、ハァッ、ハァッ、ハッ…」
躓いた所の近くにあった物陰に隠れる。
疲れで棒のようになった足を投げ出したい衝動を堪えて、なるべく音をたてないよう、膝を曲げ足を抱え、間に顔を埋めて時が過ぎるのをじっと待つ。
遠くの方で笑い声が聞こえる。あいつら独特の甲高い、下卑た笑い声。あいつらが笑う条件はいつも同じ。
すなわち、人が襲われた時。
「っ…!くっそ…」
もう何度も聞いたはずなのに、聞けば自然と体が震えてくる。
「…死にたくないよ…!…まだ生きていたいよ…!」
漏れ出てしまった声。音を立てないようにしてたのに。こうなると、堪えていた気持ちが溢れ出てしまう。
涙が止まらない
(なんか心が弱っちゃってんなぁ…。っちっくしょ…)
自嘲気味に考えていると、なにやら視界の隅が明るい。
どうやら夜が明けたらしい。そういえば、耳触りな笑い声も聞こえない。
どうやら生き延びたようだ。
顔を上げると、澄んだ朝日が目に染み込んできた。
僕にはその光がどうにも眩しくて、目を閉じてしまう。
すると、さっきまで怯えていたはずなのに、眠くなってきた。
この眠気は安心感からくるものなのか。溜まりに溜まった疲労によるものか。
目を擦ろうとしたが、止めた。
僕の手は血にまみれている。濃い濃い赤い液体に。少し乾き始めているそれは、人のものではない。
あいつらの血だ。
憎く醜いあいつらの。
自然の害であるあいつらの。
死に絶えるべきあいつらの。
滅ぼされるべきあいつらの。
生きている事が罪なあいつらの。
汚く穢れたあいつらの。
師匠を殺したあいつの血だ
目を擦るのをやめたら、より一層眠くなってきた。
(今この御時世に、外で一人で寝るとは馬鹿か僕は)
なんて考えていたら、瞼が重くなってきた。
僕はそのまま、睡魔にされるがままに、意識をふっと手放した。
遠くでひとの声が聞こえる。