盗難車の末路2
「ただいま。」
今更ながらに言ってみた。
手にはいつものボストンバックではなくさっきのコンビニの袋と手提げカバンのみ。
いつもだったら
”よく帰ってきたね。お帰り”となるはずなのだが
「全く、何やってんだか、この子は」
と呆れ顔の母さん。
父さんだけが
「まぁ、美晴が無事でよかったじゃないか。」
と私の肩をポンと叩き家へと導いてくれた。
部屋に入り、煎れて貰ったお茶で一息つく。
幸いな事に財布と貴重品は無事だったからそれだけでも良かったのかな。
でもあの服お気に入りだったのに。
そんな事を呟くと
「服はまた買えばいいじゃないか。今は丁度休みなんだから少ししたら買い物に出掛けよう。」
父さんが言ってくれた。
優しい言葉に少しだけ涙腺が緩んでしまった。
出た時とまるっきり変わっていない私の部屋。
たまに帰ってくるので下着や洋服もいくつか置いてある。
でも車がねぇ。
警察の人は物が物だけに直ぐに見つかりますよ。
ただ、無くなった状態かといえばその確立は低いかも知れませんが。
といわれてしまった。
もし、盗んだのが免許を持っていない奴だったりしたら何処かぶつけられていたり、最悪事故を起こした状態で発見されるかもしれない。
年季の入った車だけど愛着はある。
なんせ先月車検取ったばっかりだし。
ただただ、犯罪にだけは使われないように願うばかりだった。
携帯で彼に電話するも向こうの電源が入っておらず、連絡がつかなかった。
私はメールで只一言
「車が盗まれた。」
と打った。
いくらすれ違っていても気がついたら返信してくれるだろう。
そう思っていた。
母さんに声をかけられ、一緒に買い物へ出る事になった。
家族で買い物なんて何年振りなんだろう。
ここに兄貴がいたら、良かったのに。
結婚して、兄貴は海外に転勤になった。
私が家をでて、兄貴まで海外なんて両親は何も言わないけれど、きっと寂しい思いをしているだろうといつも思っていた。
ここら辺は田舎だけに、子供と同居する家が多く隣の家も向いの家にもお孫さんがいる。みんな私の幼馴染の子供達だ。
おばさん達はみんな孫の面倒を見ていて口では大変だといいつつも嬉しそうなのは一目瞭然だったから。
孫を見させてあげられなくて申し訳ないな、とは思うけどこればっかりはね。
どうしようもないから。
心の中で何度目かのごめんを言った。
結局警察からの連絡もなく、散々なゴールデンウィークの幕開けだった