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盗難車の末路

私の実家は都会の喧騒とは程遠い長閑な田園風景の広がる田舎町。

町内の誰もが知り合いで、最近越してきた人以外、昔から玄関に鍵も掛ける事を知らない、そんな犯罪からは一番遠いと思われていたところだった。


この田舎で育った私も例外ではなく、就職をし都会に出るまでは鍵の重要性さえ疑っていたのだが。


都心から電車で30分、都会の片隅とはいえ女の一人暮らし。

鍵を掛けることの大切さをその当時付き合っていた彼に散々言われ習慣づいたのだが・・・


ゴールデンウィークの始まりの日私は迷う事無く私は自分の田舎へと帰る事にした。

就職して10年、幾人かの彼と過ごす事もあったが結婚には踏み切れず、ここまできてしまった。

中にはそうなりたいと思った人もいるのだけれど、私の思う時期と彼の思う時期とはタイミングがずれ結局別れてしまったり。


今の彼とはもう2年にもなるが最近はすれ違いばかり、もう限界かもしれないと思っている。

このゴールデンウィークだって、2人の都合が合わずお互い別々の予定だ。


それで私は実家へと車を走らせていた。

自分の住む町から実家へは車で2時間半程、ドライブには少し遠いが、段々と見慣れた風景になってくるのは感慨もひとしおで。

もうこの車で何度往復したのだろう、そんな事を考えていた。


ゴールデンウィークには結婚した友人達も沢山里帰りする。

彼女たちの束の間休息。

普段は皆ばらばらの場所に住んでいる私達。

友人達もこの時とばかり子供達を実家の親に見てもらい夜通し話に花を咲かせる、そんな事をできるのもこちらに帰ってくる楽しみだった。


実家まであとほんの1キロのところまでやってきた。

国道から県道に入り、町に唯一のコンビニが目に入る。

ここに住んでいたころはよく来たものだ。


私は久し振りにこのコンビニに寄って見る事にした。


”おじさん元気かなぁ”


等と呑気なことを思いつつ車を駐車場へ。

あれほど都会へ出て鍵に敏感になってしまったのに、どうしてだろう?この田舎の雰囲気なのか、ここへ来るとそんな事はすっかり消え去ってしまい。


私はエンジンを切ったものの鍵を車に付けたまま店の中へと入ってしまった。


「おじさん久し振りっ」


「おお、美晴ちゃんじゃないか!元気そうだな」


そういうおじさんは少しだけ小さくなってしまったようで、やっぱりここで商売するのは大変なのだろうそう思わざるをえなかった。


少しの閑談の後、数日過ごす為の必需品、雑誌にお菓子やいくつかの飲み物を買い

”おじさんまた来るねー”と店をでたのだが


車を止めたはずのその場所は何もなかった。


何が起きたか全く解らず只呆然とその場に立つことしか出来ない私。

車が盗まれたと気がつくまで数分かかってしまった。


先程でた店にまた舞い戻り、おじさんに助けを求めた。

私よりも慌ててしまったおじさんは警察へ連絡してくれようと受話器をあげるも、間違って消防へ掛けてしまったりして、そんなおじさんをみて逆に私の方が冷静になれたようだった。


やがてやってきたお巡りさんに事情を説明し、盗難届けを出した。

その中で、最近はここら辺も随分田畑を手放した人が多くてかなりの数の住宅が出来たとの事。元々の住民達も鍵を掛けないでいられる時代では無くなったのだと聞かされた。

盗む者が悪いのは当たり前だが鍵をつけたままの状態で車を離れた私にも落ち度があると言われ随分凹んでしまった。


おじさんはというと、終始申し訳なさそうな顔をして何度も頭を下げるのだった。

先ほども言われた通り、鍵を掛けずに車から離れてしまったのは私だとおじさんに言ってやっと解ってもらえたのだが、おじさんは送ってくれると引かずに結局実家まで送ってもらう事にした。


本当はショックで堪らなかったけど、おじさんの前でそんな顔をすることも出来ず笑顔で話しをしながら実家へと向かった。

おじさんは両親にも深々と頭を下げ帰って行った。

 


難しいカテゴリに挑戦してしまいました。一生懸命努力はしますが、無理のある設定もあるかも知れません。何かお気づきの事がございましたら言っていただけると幸いです。

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