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露天風呂の新ギミック

やっとお風呂です

 露天風呂最上階。そこに燐とキャロルはいた。空を仰げば満天の星空が広がり、一際輝きを見せる満月によって幻想的な雰囲気を醸し出している。


 寝転がれば空と一体になったような気させ感じさせるそこで、燐はキャロルに話しかけた。


「これまで何度も一緒にお風呂に入ったけど、こんなにゆっくりするのは初めてかもしれないな」

「そうかな?」

「そうそう。いっつもキャロルは走り回っていて、ドールタークから帰ってきたときもプールで大騒ぎしてたじゃないか」

「えぇー、私そんなに子供じゃないよー!!」


 キャロルが可愛らしい膨れっ面を見せるので、燐は笑いながら腕を伸ばす。その伸ばした腕を戻すと、キャロルが手をぎゅっと握ってくるので燐も握り返した。


 2人は手を握りあったまま空を見上げ、どこまでも吸い込まれそうな夜空を見ながら目を閉じる。目を閉じれば、これまでの事で鮮明に浮かびは消えていく。


 どれもこれも大切な思い出でかけがえのないものだ。辛いことも悲しいこともあったけど、それ以上に楽しい事だっていっぱいあった。


「俺とキャロルが始めて会った時はさ。キャロルは無口で、怖がりで、いきなり階段を転げ落ちそうになったよな」

「うん、あった。私、人間の男の人が怖かった。大人はみんな私を傷つける。優しい顔で近づいて、酷い事をいっぱいした」

「キャロル……」

「でもね。お兄ちゃんに出会って、そんな人ばっかりじゃないんだってわかった。みんなに何て言われても変わる事のなかった私を変えてくれた」


 キャロルは燐の手を強く握りしめることで、その心の感情を現している。燐に出会わなければ今の自分は存在していなかったというキャロルの考えは間違ってはいないだろう。


 アリアを守り、アリアを傷つけた人に復讐を遂げても心は満たされなかったに違いない。結果、そうする事しか選択肢を与えてくれなかった世界を恨み、悲しい人生を歩んでいた事だろう。


 そんな悲しい未来を阻止してくれたのが燐であり、キャロルの大好きなお兄ちゃんである。それ以上は何も望まない、キャロルは燐やアリア・セイラやエルディアがいて毎日を楽しく暮らせるだけで満足だった。


 それなのに絶対にかけてはいけなかったピースが、人の悪意で欠けてしまう。それでもアリアと同じ様に恨む事はせず、強く生きる選択をしたのだ。まだまだ弱い部分もあるけれど、キャロルならきっと大丈夫。


「俺はキャロルのお兄ちゃんとして、まだまだかもしれない。だけど、俺はいつでもキャロルの味方だから」

「うん。そんなこと……もう知ってるよ」

「そっか」


 燐とキャロルはそのあとも星空を眺めながら、いろいろな話をした。これまであった事を全部話すんじゃないかってくらいの勢いで二人は話し続ける。


 それでも半分も話しきれずに、少しのぼせてきてしまう。キリもよかったので燐が話をきり、キャロルの頭を洗ってやる事にした。


 さすがにそこまで子供じゃないキャロルだったが、言われるがまま燐に髪を洗われている。燐の手が耳に触れるたびに、ぴくぴくと可愛らしい耳が動き回った。


 普通ならば耳に水が入らないように伏せているのだが、緊張しているのか耳は立ちっぱなしである。


「キャロル、気持ちいいか?」

「うん、気持ちいい……。もう少し後ろも……そのへん」

「はぃはぃっと。ここで宜しいですか、お嬢様?」

「……」


 わしゃわしゃという音が響き、キャロルの髪の毛がツヤツヤになっていく。燐はキャロルに声をかけると、いっきにお湯をかけた。


 泡だらけだったキャロルの髪は洗い流すことによって、さらにツヤを増していることがわかる。完全に泡を洗い流されたキャロルはばっさばっさと首を振った。


 やっていることはまるで犬のようだが、案外燐も同じ事をする。


「よっし、きれいになったな!!」

「綺麗になったぁ~」

「じゃぁ、もうそろそろ降りようか?」

「うん!!」


 キャロルが階段に向かうので、燐はキャロルを呼びとめた。実は降りるのが面倒なので、何かないかと考えていたのだが失敗に失敗を重ねて辿り着いたものがある。


 それはウォータースライダーだ。重力魔法や風魔法でのエレベーターも考えたのだが、安定感が悪く操作が難しいばかりか、空気の通り道がなかったり上昇板が壁との摩擦ですぐにひっかかってしまう等、苦戦を強いられていた。


 結果、極太な主柱の中を螺旋状にくりぬき加工した、ウォータースライダーという方法で完成させたのだ。


「ちょっとキャロル、階段の裏側をみてごらん」

「階段の裏?……わかった」


 キャロルが燐に言われるがまま階段の後ろを覗くと、ぽっかりと大きな穴が空いていた。中は魔法玉を使った照明が使われており暗くはないが、先の見えない恐怖に少し尻込みしてしまう。


 そんなキャロルを見て、燐は「大丈夫だから」っと言って、キャロルを座らせると軽く背中を押してやった。


 スライダーの中から悲鳴とも取れるような声が響き渡るが、燐は気にしない。むしろ笑っていた。そんな悲鳴も一番下からドボンっという大きな音が聞こえたのと同時に聞こえなくなったので燐もスライダーへと飛び込む。


「おぉぉぉぉぉ!!!案外スピードが出るな!!それにちょっと、目が回りそうかも?」


 燐は出口が近づくと少しスピードを緩め、キャロルとぶつからないようにゆっくりと入水した。どうやらキャロルの姿はないみたいである。


 燐がキャロルを探していると、どこからか声が聞こえ、後ろから凄い音と水しぶきを上げてキャロルが滑り落ちてきた。


 どうやらキャロルはもう一度滑るために、最上階まで上がっていたみたいである。


「あはははは!!!お兄ちゃん、私これすきぃ!!!」

「怖くなかったか?」

「全然!!ねぇ、今度は一緒に滑ろうよ!!」

「んー……。それは、また今度な?」

「えぇー!!」


 さすがに兄妹のような2人でも、裸で密着してスライダーを滑るのもどうかと思うので丁重に断った。燐は次回までに水着を作ろうと思ったのは、今は燐の心の内だけのお話である。


 そんな事を考えながら燐はキャロルを連れ脱衣所に向かい、準備しておいたバスタオルでキャロルを拭いてやると嬉しそうにしていた。


 その後はキャロルにまかせると、燐も体を拭き寝間着を着込む。あとは寝るだけなので、夜風で髪を乾かし寝室へと向かう。キャロルも燐のあとをトコトコとついていき、隣に並ぶと笑顔を向けてくれる。


 そして二人は自然に手を繋ぐと寝室の扉を開いたのだった。

いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


おはようございます。

お風呂回でしたー。

泣いたり笑ったり、みんな忙しいですね。

今回の事を通して、少しキャロルにも大人っぽさをだしてみたんですが

まだまだ子供でいてほしいですね。

時間的にあとは寝るだけですね(笑)


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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