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マルタはどこへ?

 この国の行方は決まった。そうと決まれば、さっそく準備をしなければならない。燐はエルディアにお願いして、マルタに再度会いに行く予定だ。


 その事をエルディアに伝えると即答で了承を得ることが出来たので、準備を整えていると発案者のカナタもついていくという。戦いは終わったが、危険な目に合うかもしれない事を燐が口にすると怒ったような目をするので、燐とエルディアとカナタで向かう事になった。


 直ぐにでもルガンダンに飛びたてるのだが、時間も時間だし翌日の予定で話しが進められる。予定が立ち時間に余裕が出来たせいか、急にカナタが燐を呼び出す。


 燐は翌日の事についての話で呼ばれたものと思っていたのだが、違っていた。


「急に呼び出してごめん」

「大丈夫ですよ。それで、話っていうのは、明日の事ですか?」

「あぁ、いや。そうじゃないんだ。ちょっと、一緒についてきて欲しい所があるんだ」

「???」


 意味はわからなかったが、燐はカナタと一緒にとある場所へと向かう。向かった場所は何度目になるかわからない、燐も好きな場所のひとつである『月灯り通り』だった。


 前にセイラに呼び出された時の事を思い出し、また重い事を話されるのかと思った燐だったが、月灯り通りを抜けてしまう。


 そして、この先にある場所はただひとつだけである。そこは数多くの魂の眠る場所であり、命の終着点。そんな場所に連れて来た訳を燐は理解した。


「燐、ここだよ。まだ名は無いけれど、ロンドの墓だよ」

「ここにおやっさんが……」


 燐はちゃんと理解出来ていたはずなのに、目の前で息絶える瞬間も目にしていたはずなのに、まるでそれが夢だったような気がしていたのだ。お店にいってみたら、あの暑苦しいけど嫌いになれないロンドが普通にクルナンを焼いているような気がしていた。


 でも夢は夢であり、いつかは醒めてしまう。どんなに幸福な世界があったとしても、それは夢なのだ。絶対に現実からは逃げられない。


 夢であれば良いと願ったものは現実で、それを受け止め前に進むしかないのだ。今まさに夢は醒め、燐は現実を受け止めた。


「おやっさんは、死んでしまった。俺の身代わりになって……」

「そうだよ。燐の変わりに、あいつは死んだ。けどね……最後のあいつの顔見ただろう?燐を守れたことを誇りに思って、笑いながら死んでいったあいつを」

「はい。俺はおやっさんの分まで生きないといけませんね」


 燐は宝物庫から花の種を取り出し、創造主の力を持ってそれを急成長させる。家を作ったときに余った花壇用の種がこんな所で役に立つとは思わなかったが、燐は花束を手に持ちロンドの墓の前にそっと置いた。


 カナタも持っていて愛用の弓を墓の前に置くと、2人は静かに目をとじ冥福を祈る。冥福を祈っている時にカナタから声が漏れだし、燐の耳にとどいた。


「ひっく……弟子が師匠より……早く死んでどうするんだい……。私はまだ……あんたに……おしえ……ひっく……事だっていっぱいあったのに……」

「……」


 燐は微かに聞こえるカナタの声を聞きつつ、もう少し目を閉じておこうと冥福を祈り続けた。


 いつの間にかカナタの声も聞こえなくなり、しゃくりあげる様子もなかったので、燐はゆっくりと目を開ける。燐はとなりにいるカナタの方を振り向くと「帰ろっか?」と、言ってくれた。まだ目も腫れているし充血もしていたが、燐は「はい」とだけ言い、城への帰路につきはじめる。


 帰り道、いつもは見惚れてしまう神秘的な雰囲気を纏う月灯り通りもどこか寂しく、燐とカナタの間にしんみりとした空気が流れていた。そんな、しんみりとした空気を壊してくれるのは、やはりカナタの役回りになってしまう。


「あはは。なんか、静かだね」

「そうですね。いつものカナタさんなら、俺の肩や背中をばしばし叩いていますもんね」

「わ、私って……そんな感じかな?」

「えぇ、そうですよ?カナタさんも女の子らしくしていれば、もっともてるでしょうに」

「失礼ね!! 私だってラグーラ・モアの女店主として人気者なんだからっ!!」


 燐の軽口のせいもあるが、カナタも明るく振舞おうとしているのが伝わってくるようだった。それでも、バカな事を言いながら歩き続けていると、いつものカナタに戻りつつある。


 アフターケアとしては不十分かもしれないけれど、今はそれで十分だった。ゆっくりでも足をしっかり踏み締め歩いていければいい。急がなくても、それぞれの壁を乗り越えていけるとみんな信じているのだから。


 その後も大いに騒ぎながら月灯りが照らす帰り道を、2人の影を交差させつつ城へと辿り着くのであった。


 そして翌日、燐とエルディアとカナタは身支度を整え、ルガンダンへと向かおうとしている。そこへ急に羚がやってきて、一緒についていくという。


 理由は分からないが、燐は危険があるかもしれないと断ったものの羚は頑なについていくと聞かない。


「大丈夫だって。こうみえて、俺鍛えるんだぜ?自分の身くらい、自分で守れるって!!」

「鍛えてるのは知ってるけどさ、肉体強化が出来ないと困るんだけどな……」

「肉体強化? それ必要なのか?」

「さすがにドラゴン姿のエルディアさんがルガンダンの上空を飛ぶのは問題だろ? だからといってユグドラシルを飛ばすわけにはいかないしさ」


 燐の言っていることは全くその通りだった。何で向かうにしても友好関係を築こうとしている国を威圧するのでは意味がない。だから予定では国境付近までエルディアさんに乗せてもらって、そのあとは肉体強化をした足で向かおうと思っていたのだ。


 その予定では羚を連れて行くわけにはいかない。正直、足手まといにしかならないからだ。解決策が見つからず燐が困っていると、セイラが話しに割り込んできた。


「ねぇ。私がさ、魔法で姿を消してあげようか?そうすれば、ずっと飛んでいけるよ?」

「おぉー、さすがセイラちゃん!! それで頼むよ!!」

「セイラちゃ……わかったわ。燐もそれでいいかしら?」

「……どうせ拒否させてくれないんでしょ」


 羚は胸を張っているが、セイラが余計な事を言わなければ無理矢理にでも置いていけたはずなのにと燐は気を落とす。そして、出来れば問題が起こらなければいいと燐は心の底から思いつつ、セイラの提案通りに事が進みルガンダンへと飛び立った。


 エルディアの背には燐・カナタ・羚の順番で跨っている。本人達はお互いを認識出来るが、外からみたら姿を確認する事が出来ない。その為、飛んでいる鳥たちが驚いている様も見る事ができた。両翼を羽ばたかせるたびに暴風みたいな衝撃が発生するのだからしょうがないといえばしょうがないのだが。


 何度もエルディアの背に乗っている燐とカナタは慣れたものだが、羚は今回が2回目という事もありテンションが上がりすぎて、落下しそうになる。


「お兄さん、そんなにはしゃいでると落ちちゃうよ。ほら、ちゃんと捕まってな!!」

「あぁ、すいません。それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


 肝を冷やした羚は落っこちないようカナタに背後から抱きついた。


「ちょっ、あんた!! どこ触ってるのさ!!」

「いやぁ……落ち着いたら……怖くてさ」


 今の羚は魔力を持っていないので、肉体強化だとか防御膜なんかを使用できない為、安全器具のついてない飛行機に乗るような状態である。セスナとかに乗ったことがある人ならばわかるだろうが、結構怖いものなのだ。


 カナタはしょうがないと言った感じで羚の不可抗力のセクハラを受けつつ、ルガンダンを見据えた。そして、そんな事が背中越しで行われていると燐は感じつつも口は挟まず、カナタの愚痴や叱咤があれば素直に受けようと思っていた。


 そんな心配事もルガンダンの国境が見え、そこをあっという間に通り過ぎゼルダン家の屋敷が見え始めると気持ちを切り替えた。燐の誘導でエルディアが崩壊しかけているゼルダン家へと降り立った。


 姿は見えていないはずだが、降り立つ前からすでにオルディネが頭を深く下げていたので、認識は出来ているのだろう。エルディアの背からみんなが降り立つと、かけられた魔法を解除し姿が顕になった。


「お待ちしておりました。燐様にカナタ様。それにお連れの方々もはるばるご足労頂いて大変恐縮です」

「……マルタの姿が見えないようですが、どこか別のところに?」

「申し訳ございません。マルタ様はもうこの国を離れております。そして、この国は既にシャークリアの属国という立場にあります」

「逃げた……のか」


 燐は思うところはあったが、深くは追求しなかった。燐をはじめとしたみんながどうしようかと思っていると、オルディネが場所を準備していると言ってくれたので、とりあえず移動する事にする。


 その時、廃墟とかしたゼルダン家の屋敷の影から小さな影が飛び出した。

いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


おはようございます。

まだまだ台風が抜けていきませんね。

私の所はと言うと、なぜか快晴です!!雲ひとつありません!!

まだ近くにいるんですけどね(笑)


8月に入って夏本番という感じですが、だれずに頑張ってこぉー☆


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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