戦いの火蓋
今回「誰だ、こいつ」みたいなやつがいます♪
エルディアが空から偵察してくれるお陰で、敵の接近を予測できるのは強い。
その間に城の正面には、シャークリアの兵士720名・国の為にと立ち上がった戦士達350名が集結していた。総勢1070名となる大編隊だ。
しかしながら集結してくれたシャークリア兵の中で戦闘経験がある者達というのは即ちメリス直属の護衛隊の事を指す。実質1000名を超える勇士が集まってくれたといっても、まともに戦える者なぞ100名もいれば良いほうだ。
それに助勢してくれた国民達も元冒険者であったり、過去他の国で雇われ兵をしていた者達もいるものの、やはり毎日訓練を積んでいる現役の軍隊と満足に戦える者となると100名いれば良い方だろう。
それでも戦わなければ、このシャークリアの国は蹂躙され賊徒が蔓延る国となってしまう。
「みなさん……よくぞ集まってくれました。私には力がありません。けれど一人で戦う事の辛さも、一人で戦う必要もない事も教えられました。私には皆の力が必要です。傷つかずに勝てる相手でもない事は明らか……それでも共に戦って欲しい!!」
メリスの言葉に城の正面が、これから始まる戦いに雄たけびを上げる。未だ覚悟の出来ていない者もその声を聞き、自身を奮い立たせているのだ。
けれど、いざ戦場へ……命の遣り取りを始めれば恐怖に負け、逃げ惑う者もでてくるだろう。そうでなくても、敵は遥かに強大。気持ちだけで守りぬける確証なんてないのだから。
攻撃魔法を不得意とし、癒しや幻覚魔法を得意とする妖精族。弓の名手と言われ、様々な魔法の知識も持っている森の賢者とさえ謳われるエルフ族。
勝ち目がない事はない。けれど、人族は決められたレールさせ捻じ曲げ進む力を持つ者達だ。絶対魔力量が劣る欠点を創意工夫で乗り越え、強大な軍事力として備える事で他者を蹂躙してきた。
今回の事だってそうだ。本来ならばメリスの結界で魔法はおろか、身体能力まで制限をかける事が出来る固有魔法のはずだった。
それをどういう訳か、通常通り強力な魔法を使い攻めてきている。それも賢者クラスが数百人単位で編隊を組み侵略してきている点も信じがたい話だ。
エルディアからの報告で攻撃魔法の弾幕を駆使してゆっくりとだが確実に近づいてきている事を聞いていたメリスが、理解不能の状況に顔を青くしていたほどである。
もちろん物理的に武器を使えば突破も出来るのだが、それでも多大な時間が掛かる手筈だった。それなのに魔法を連発して、それらを打ち破ってきている事実は予想外の展開である。
【回想】
「エルディア様。敵は魔法を自由に使うことが出来る恐れがあります」
「そうだな。魔法にも対抗できる城壁魔法なんかを取り入れよう。これで魔法を使ってくれるなら2・3個もあれば間違いなく底をつくだろう。巨大な城門破りの道具を持ってきても、魔力で編まれた壁はそう簡単に壊れないさ」
メリスの心配にエルディアが微笑みで返す。こんなにも頼りになる皆がいる、絶対に大丈夫だ。
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正直メリスは不安でいっぱいであった。不確定要素が多すぎて、次は何が起こるかわからない恐怖は計り知れる物ではない。
そんな場所に大切な者達を送り込もうというのだ。この事実を知れば、メリスのやっている事は正気の沙汰ではないという者も出てくるに違いない。
それは、みすみす家族や友人を死地に送る事と同義なのだから。それでもメリスは前を向いていなければいけない。すでに俯き悩んでいる時間は当に過ぎているのだから。
それでもまずは一緒に戦ってくれる者達にメリスは戦況を伝えねばならない。魔法を使うこと・使う魔法も強力なものばかりな事・隊を率いているのが見せ掛けではない、正規騎士で間違いないという事をだ。
その力はわからないが、エルディアの話によると身に着けている装備から間違いなくて手練れの正規騎士であることがわかっている。
メリスが全ての情報を完全に開示すると、やはりというか兵士の間に不安が過ぎり、先程までの勢いが暗く落ち込んだものへとかわっていく。
「燐様。手筈通りお願いします」
「本当にやるんですか? 俺、演技の才能とかないんですよ?」
「大丈夫です!! それにもう、燐様の事ですから考えてくれてるんですよね」
「……」
メリスはこんな状況だというのに、楽しそうに笑う。勿論それが作り笑顔である事は燐には一目瞭然だった。
燐は心の中で深い深い溜息をつき、メリスにお願いされていた事を実行するために集まった皆の目の前に姿を現す。
一見その姿は凛々しいものに見えるが、本当は顔が引き攣っているだけだ。そんな燐の鼓動もドクドクと高鳴り、痛みさえ感じる気がしていた。
ゆっくりと集まった皆の正面に立つと、燐はゆっくりと深呼吸をして話し始める。
「今回の戦いで総大将を勤めさせて頂く、八神燐というものだ」
燐様……? さっき、総大将だって……。英雄……様が。
ざわざわ ざわざわ
燐の放った言葉に、集まった者達がざわめきだす。共に戦ってくれるとは思っていたが、自分達の総大将という事までは誰も考えていなかった為か、ざわめきは大きなものだった。
ざわめきが落ち着かない中、燐が次の言葉を続ける。
「よくぞ集まってくれた……この国を愛すべき者達よ。我らは今、運命の境界に立たされている。だからこそ此度の戦いに参じてくれた事を、私は誇りに思う!! しかし中にはこれから始まる戦いに不安を感じたことだろう。所詮我らのような戦う術も知らない者が強大な敵に立ち向かえるのかと……」
燐の声がざわめきを打ち消し、辺りが静まり返っていく。総勢1070名の視線が燐に注がれ、次の言葉を静かに待っていた。
「しかし我らには大切なものを守りたいという強い意志と強固な絆がある。これから始まるのは、友人を……家族を……この国の存亡をかけた一戦。もしこの戦、負けることあらば愛すべき者達は嬲られ殺され、生き残たとしても死よりも苦しい宿命を背負うであろう。もしその宿命を変えたいならば、心を奮い立たせ、誰にも負けない力とせよ!!」
燐の言葉を聞いて恐怖に体を震わせている者はもういない。拳を握り締め、負ければ全てを失うのだと再自覚したのだ。
戦場とは凄惨な所だ。それでも戦わずして逃げることは、大切なものを全て失うという事に他ならない。
もう迷っている者も恐れを抱く者も、この場にもういなくなっていた。
皆の表情を見て燐は、宝物庫から準備を進めていた武器を取り出す。出現場所は上空数10mの高さに設定し、取り出した剣を降り注がせる。
降り注いだ剣は大地に突き刺さり、その様を見た者は皆、圧倒されその場から動く事ができなかった。
「さぁ自らその剣を抜き、その意思を示せ。それは天下に約束されし無双の剣。邪悪なる侵略者を打ち滅ぼし屠る最強の剣なり!! さぁ、共に戦おうぞ!!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
絶叫にも似た叫びが木霊し、次々と剣を抜き差っていく。
その剣は燐が作っていた試作品魔法剣の改良版を完成させたもの。炎を纏った剣は鎧ごと焼き切り、氷を纏った剣は触れただけで全てを凍てつかせる。攻防一体の風の剣はカマイタチを纏い、不用意に近づけば肉が削げ落ちるだろう。
ただ1つだけ、耐久度がない事だけは改善する事が出来なった。それでも、この戦いは耐えきる事はできるだろう。
これで燐の仕事は一先ず終わった。後は皆と共に戦いの火蓋は切るのみである。
いつも読んで下さり有難うございます。
感想・意見・誤字報告ありがとうございます。
おはようございます!!
梅雨と言えば台風ですよねー
でも、雨の量で言えば同じくらいなんですけどね(笑)
出かける方、出かけている方は
災害みたいな雨には気をつけて下さい!!
ヾ(≧∇≦*)ノ~~いってらっしゃーい♪
それでは次回更新でまたお会いしましょう。




