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魔道大国ドールターク

「さて何から話そうか。そうだね……この国が魔道大国で戦争を加速させていた事は紛れもない事実だった」


 エルディアの声が物音一つしない部屋に木霊する。


 燐達も、それを静かに聞いていた。鳴らしたノドの音までも伝わりそうな空間で、エルディアが続きを語りだす。


「そして……この国が空に浮かんでいる理由は簡単だ。私がこの国ごと逃げ出したからに他ならない」

「逃げ出した?」

「そうだ。私の国は別に戦争がしたかった訳じゃない。日々の生活が少しでも楽になればいいと、技術を確立していったんだ。それが、戦争にも利用できた……そういう事だ。燐……っと言ったか?あんたにはわかるだろ?」


 エルディアは燐の記憶を探り、別の世界から来たことを理解していたのだ。燐もエルディアの言い含んでいる事を理解し、頷いた。


 燐のいた世界でも、戦争が発端で急速な技術向上させた事は有名な話である。勿論この世界でも戦争があるからこそ、技術も向上し生活水準も良くなったという事は少なくない。


 どんな世界でも力は必要だ。力なき能力ちからは、爆弾を積んだ制御の出来ない紙ヒコーキを飛ばすのとなんら変わらないだろう。


 だからこそ自身の力を知り、使い方を誤らないようにしていた。それでも、その力を狙って来る者や恐怖を覚え襲い掛かってくる者、協力を求めてくる者が溢れ返り……争いが起こる。


 争いが戦争に発展してしまえば声高に叫び訴えても止まるはずもなく、已む無く戦わなければならない事は明らかだった。その結果、大地は紅く染まり、その溢れ出た血が河のように流れ出し数多の屍が転がる地獄絵図となったのだ。


 そんな惨状の中でもドールタークは敗北しなかった。ドールタークに近づく者あらば、体のいたるところから血が噴出し、捻じれ四散する。


 遠方より魔法を放てば、そのまま反射し自軍の首を絞めてしまう。弓矢や投石、物理的なあらゆる攻撃は見えない力に阻まれ、されるがままの一方的な蹂躙劇が行われた。


 結果、戦争を通じてその技術も飛躍的に向上する。結果生み出された技術が『完全重力制御魔法』だった。


「戦争が終結すると同時に、ドールタークはただの研究国家から恐怖の名の下……魔道大国として名を馳せた。それでも尚、争いはなくならず力を得んとする者がやってくる。私達は自国のせいで悲しみや争いしか生まない存在ならば逃げ出し隠れ住もうと決めた」


 エルディアはゆっくりと話を区切り、目を閉じた。


 燐もセイラも話を聞き終わり、自分ならばどうしていただろうと考えていた。逃げ出して何になるって言葉にするのは簡単だ、それでも……。


 そんな雰囲気の中キャロルが、場の雰囲気をぶっ壊してくれる。


「お話終わった?私、お腹すいちゃった」

「えっ?あぁ……そうだな。俺もいろいろあってお腹がペコペコだ」


 唐突にキャロルがそんな事を言うので、そこで初めて燐も空腹感を覚えた。


 エルディアがキャロルを見つめ、優しく微笑んでいる。ほぼ無表情だったので、エルディアの笑顔のおかげもあってか燐とセイラも難しい顔をするのを止めた。


 燐は宝物庫から持ってきたお弁当を出し、キャロルの前に並べた。何を作っていいか決まらなかった為、和洋中なんでも取り揃えている。


 それをエルディアが物珍しそうに見つめるていたので、燐は食事に誘ってみた。


「よかったらエルディアさんもいかがですか?本当に山ほど作ってしまったので、食べてみてください」

「……そこまで言うなら、いくつか取り分けて頂けるかな?あっ、できれば肉を多めに!!」


 見た目麗しいエルディアの口から肉がいいとリクエストされた事に若干驚いたが、燐は取り皿に見栄えよく並べていく。


 その間もエルディアの目線が燐の手料理から離れる事はなく、おかずが弁当箱と取り皿の間を行き来するとつられてエルディアの目線も動いている。


(この世界の人達って結構食いしん坊が多いのか?人の事言えないけど……)


 燐はクスリっと笑いながら、取り皿をいっぱいにしていく。それに気付いたエルディアが顔を少し背け、頬を赤らめていた。


「はい、どうぞ。あと、これ使ってください」


 そっと燐はナイフとフォークとおしぼりを渡す。きっと上品に食べるんだろうなという燐の妄想とは裏腹にから揚げにフォークを刺し、1口で食べてしまった。


 別に下品だと言う気はないのだが、一口大にしてから食べて欲しかったと心の中で燐は思う。


 それでも、その流れる動作からは気品が感じられる。ただ少し、豪快というか健康的であるというか……そんな感じだ。


 食事中なのに質問するのもどうかと思った燐だったが、顔にでてたらしく質問を受け付けてくれた。


「えーっと……他の国民とかは?」

「一応いる……ぞ。ただ、目には見えないだろうが」


 まさか亡霊だとか言うんじゃないだろうなっと燐は辺りを見渡した。見渡したけれど、そこには何もいなかった。


 そんな燐の行動を見て、エルディアはからからと笑っている。どうやら、そういうホラーな話ではないようだがダークな話ではあった。


 エルディアのドラゴンの姿は、禁術中の禁術で人の魂を使った魔法らしい。それは、この国を見守る為には強大な力と永遠に近い寿命が必要だったという理由からである。


 その為、多くの国民の魂をドラゴンの魂へと昇華・転生させエルディアの魂と融合させたという事らしい。


 王女としてこの国を守り続けるという責を受け、エルディアは長い間この国を見守り続けて来たという。エルディアが使命を終えるその日まで、かれらの魂もまた永遠に縛られ続ける事になっても。


「別に苦しんでいる訳でもないし、そこまで悲しそうな顔をしないでくれ。勿論生きている人間を間接的に殺した事にはなるが、みんな納得の上での事。私もまた、かれらの願いを受け今まで行き続けてきたのだから」


 燐は納得の上でならと何も言わなかった。それに、燐が今更何かを言ったところで現状は変わらないし、悩んだ末の選択を何も知りもしない燐が口を挟むのはエルディアにも失礼な事だ。


「それはそうと、料理美味いな!!私は気に入った。ここに住め!!」

「えっ……。えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 エルディアのいきなりの発言に燐は声を荒らげた。更に燐よりも大きな声を上げんと、エルディアに食って掛かろうとしたのはキャロルだった。


 先程まで燐お手製のお弁当を頬張っていたはずのキャロルがその手を止め、燐の腕を掴んでくる。


「ダメ!!お兄ちゃんは私と一緒にいるの!!がるるるぅぅぅぅ……」


 キャロルがエルディアを威嚇している。魔物相手でさえ見せたこともない鋭い目をエルディアに向ける。


「あはは。この子もかわいいな。別に二人セットでも一向にかまわないぞ!!」


 エルディアは本気とも冗談とも取れる事をいいながら、舌なめずりをしていた。その行動に何かを感じたキャロルがさっと燐の背中に隠れてしまう。


 その様子を見て、エルディアはまたからからと笑い出す。


 そしてセイラを含めて4人でここで暮らさないかとエルディアは提案してくる。きっと一人で寂しかったんだろうと燐は思ったが、待っていてくれる人がいるからと伝えた。


 エルディアは少し寂しそうな笑顔を作り「そっか」っと答える。


「エルディアさんも一緒に行きませんか?」


 燐はエルディアの宿命を理解した上で誘ってみた。燐の誘いにエルディアは怒るでもなく喜ぶでもなく、やはり寂しそうな笑顔でありがとうと言うだけである。


「それでも数日はここに居ようと思います。その間食事は俺が作りますんで、変わりにいろいろ話を聞かせてもらっていいですか?」

「あぁ、そういう事ならなんでも聞いてくれ。君になら、研究資料を見せてもいい。きっと誰かの為に使ってくれると私は信じたい」

「本当ですか?勿論私利私欲には……ちょっとしか使いません!!」


 燐とエルディアは互いに笑いあった。出会いこそ衝撃的だったものの、最初の頃の様な殺伐とした張り詰めた空気はもうない。


 燐達はこのあと1週間程滞在し、いろいろな話を聞いた。


 研究資料も山の様に残っていたものの、纏められていなかったり関係ない資料もあるせいで整理するだけでも時間が掛かった。


 エルディアも、全ての事を理解している訳ではないので燐の作業はかなり難航させられたのだ。


 それでも、完全重力制御魔法に関する資料は多くエルディアも原理を理解していたので燐はそれを自分の物へとしていった。


 他にもいろいろな資料に目を通し限界を感じたので、燐は浮遊城クレイジア……ドールタークを後にする事に決めた。


 そしてドールタークを飛び立つ日に、燐はエルディアにある提案をするのである。


「エルディア……やっぱり一緒にいこう!!」

いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


なんとか今日中に次話を上げる事が出来てよかったです。

今から私は、ゆっくりと移動になります。

休みって……なんだろうね。


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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