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飛行訓練

 燐が黒い霧に包まれてから10分程経った。その霧は、だんだんと薄まり遂には消えて無くなってしまった。


 急に霧に包まれたかと思ったら、意識を失い……そして何事も無いかの様に目覚めた燐に心配の眼差しが突き刺さる。


「お兄ちゃん大丈夫!?」

「……」

「燐さん、大丈夫ですか?手を貸しましょうか?」


 燐は重い体をゆっくりと起こし、周囲を確認した。どうやら燐は試練に打ち勝ち未来を知ったようだ。


 手元を見てみると先程の水晶は粉々に砕けており、サラサラと砂粒みたいに崩れていく。燐はそれを力強く握り締め、その顔はまるで苦虫を噛み潰したようだ。


 そんな燐を皆が心配にそうに見つめている。燐はそれに気づき笑顔を見せるが、その苦しそうな笑顔はただただ心配を加速させるだけだった。


 そんな不安が残る状態だったが、燐はメリスと話があると言い皆を無理矢理に追い出してしまう。


「燐さん、何があったんですか?」


  みんながいなくなったのを確認してからメリスは燐に問いただした。燐としても、どうやって話をしようとかと考えていたので話を切り出してくれたので助かったようだ。


「実は……あの水晶の黒い霧に包まれて、意識が遠くなったかと思うと目の前に自分の影にあったんです」

「影ですか?」

「はい。それで俺を動揺させようとしたり、ゲームを仕掛けてきたりと……結構いろいろあったんですよ」


 メリスは燐の体験した事を考えている。どうやら意識を加速させ、精神を試す事こそが試練だと思ったのだ。


 もしかしたら無事に帰ってこれなかったかもしれない。メリスは心の奥では、燐にこれ以上傷ついて欲しくないと思っている。それはメリスに限らずアリアやキャロルも同じ考えだろう。


 勿論セイラやリアも心配するに違いないとメリスは考えている。


 それでも帰ってこれたという事は、試練に打ち勝った事に他ならない。メリスは燐に未来起こるであろう予知の内容を聞かせてもらった。


「このまま行けば、俺は大切な人をたくさん失うそうです。……でも強くなれば、俺にも救える命があると影はいいました。どちらにせよ、俺は近い将来……大切な人を無くすという事らしいです」

「闇の翡翠、悪夢のオーブ……文献にあった通り悪い事を予知したみたいですね。そのせいで不吉な物とされ、使用者が少なく殆ど内容がわからなかったというわけですね」


 燐はメリスの呟きを聞き、なんとなく理解した。起こってしまう事はしょうがない事だが、これを使えば必ず悪い出来事を予知してしまう。


 望んでもいない未来をこの道具が呼び寄せているかもしれないから呪いの道具のような扱いで文献が残っているのだ。


 燐も知ってしまってひどく後悔はしている。本当にこの水晶のせいで、大切な人が意味も無くいなくなるかもしれないと思うと燐の心は張り裂けそうだった。


 この短期間で燐は悲惨な体験をしてきた。それでも前を進もうと頑張ってきている。それなのに、燐を追い詰める事が続くと……きっと心が壊れてしまう。


「俺は強くなりたい。どうすればいい?」

「燐さん、危険を承知でしたら絶好の場所があります。命を無くす事を前提にですが……行きますか?浮遊城クレイジアに」


 メリスの口から飛び出した場所は到達不可能とされる場所の一つ。天高く浮かぶ巨大な居城。そこはドラゴンの巣とも言われ、来る者をその牙と爪で叩き落すという危険極まりない所だ。


 普通に向えば間違いなく命を落とすであろう場所をメリスが言うものだから、燐は驚きを隠せない。


 それに何故今そのような話をするのかと疑問にも思っていた。疑問はメリスが心を読むように回答する事で解決する。


「浮遊城クレイジア……あれは空に浮いていますが、必ずしも同じ場所にあるわけではないんです。風の影響か何かは知りませんが、一定期間ごとに場所を変えるんです。そしてもうすぐ、この辺りにくるから注意を受けています」


 燐は成程と相槌を打つ。しかし、いきなり命懸けの場所に放り出そうとするとは思っていなかった燐はどうしたものかと頭を悩ませている。


 それよりも、どうやって行くかの方が問題だ。誰一人辿り着いた者がいないという浮遊城に近づくことさえ困難なのだ。


 メリスの推測では、魔力や熱を感知してドラゴンが襲ってくるという事だった。それよりも燐は確認したい事がある。


「メリス、ドラゴンは本当にいるのか?話に尾ヒレがついただけって可能性は?」

「間違いなくいると思います。私達は空を飛べますので、大昔に調査隊を編成したらしいのですが無残な姿で空から降ってきた……という記録があります」


 メリスの話では途中までは上手くいっていたと記録されているそうだ。そこからの推測で、何かしらの行動を取ったせいで返り討ちにあっとのではっという話だそうだ。


 それならば魔法を使わずに、気球の類以外で近づく方法と考えたが燐もお手上げのようだった。それでも燐は、強くなれなくても何かしらのヒントが得られるならばと思考をフル回転させる。


「ダメだ……方法が見当たらない」

「そこでなんですが、燐さん。空を飛んでみませんか?」

「そんな便利な魔法があるんですか!?」

「いいえ、魔法ではありません。燐さん自身の力で空を飛ぶんです」


 燐はメリスの言っていることが理解できず首を真横に捻る。その状態で停止し、考えたが燐の頭では答えが導き出せなかった。


 メリスはただ笑うだけで、燐の珍回答でも待つように何だと思いますかって目を向けている。燐は大道芸の人間大砲を思い出し、魔法で吹っ飛ばすって答えるとメリスは顔を背けてプルプルしながら笑い出した。


 メリスは笑いを堪えながら「それこそ死んでしまいますよ?」っと言われてしまう。


 勿論、燐だってわかっている。そんな方法で突っ込めば推力が足りなくて地面に落下するか、本当に届いたとしても着地出来る訳がないと。


 涙に涙を堪えながらもメリスは燐に方法を教えてくれた。


「燐さんには、妖精になってもらいます」

「は?」

「私達のこの羽を一時的に燐さんに貸し出すのです。そうすれば飛んでいけますよ」


 燐はそんな事が出来るんだっと素直に受け取った。今更、現実じゃないとかファンタジーだとか言う気は無かった。


 試しにメリスが自身の羽を燐に貸し渡す。するとメリスの羽は不可視とまではいかないが、かなり薄っすらとしか見えなくなった。


 それとは逆に燐の背中には羽が生え、パタパタと勝手に動いている。


「使い方というか、飛び方なんですが。私達の羽は鳥のように羽ばたくのとは少し違います。微量の魔力を通してあげるだけで浮力を生みます。私達は生まれ持って飛び方を知っていましたが、燐さんみたいに……なんでもう飛べるんですか?」


 燐は既に床から1mくらいの所に浮かび上がっていた。そっと羽を羽ばたかせ、前後左右に加え上昇・下降の感覚を確認している。


 女王の間の天井付近まで飛び上がった燐は、下降しようと下を向き体をビクっと硬直させた。結構高いのだ……燐にとっては飛び方よりも高所の感覚を覚えてもらう必要がありそうである。


「こんな感じですか?」

「えぇ……まぁ。燐さん、お上手ですね?」

「そうですか?意外と簡単でしたよ」


 別に凄い事をした自覚が無かった燐は、素で返してしまった。


 メリスもこれなら問題ないだろうと考え、そっと羽に触れた。先程まで燐の背中にあった羽は光の粒子となり消え、メリスの羽はだんだんと元の形を取り戻していった。


 そしてメリスは、侍女にお願いして外に出てもらっていたアリア・キャロル・セイラ・リアを呼び戻してもらう。


 戻ってきた4人に、燐との会話を誤魔化しをいれつつ伝えた。結果的に、燐がまた一人で全てを背負おうとしていたという事にされ皆から大反発を受けている。


 お説教タイムが終わると、先程メリスが燐にしたように羽を貸すように言う。キャロルにはセイラが、アリアにはリアがそれぞれ羽を貸し出した。


 キャロルは相変わらず天性の運動神経で、わたわたしながらもあっという間に飛べるようになっていた。ただアリアは上手く飛べずに、くるくる回転したり仰向けに飛び上がったりとアクロバティックな飛行をしていた。


「アリーあなた……さすがにそこまでいくと酷いわよ?せめてちゃんと浮いてみなさいよ……」


 目に余る光景にキャロルをサポートしていたセイラがアリアにつっこみをいれる。当のアリアは、それどころではないっといった感じで手をぶんぶんと振り回している。


 それをリアがそっと背中を支えてやり、ゆっくりとだけど平行移動くらいは出来る様になった。


「私、これ無理かもしれない。はぁ……はぁ……」

「お母さん頑張って!!」


 キャロルは天井に足を着け、逆さまに飛んで……走っていた。キャロルは、天井をまるで忍者のように走りながらアリアを応援している。


 対応の早さに燐をはじめ、メリスもセイラも呆然と走り周るキャロルを見つめていた。そんなキャロルの足が天井から離れると、逆さまのままゆっくりと降下し燐の目の前でくるりと一回転を決める。


「お兄ちゃん、どうだった?私、上手く飛べてたかな?」

「飛んでたというか……走ってたな……。でも、降りてくる時はすごく上手だったよ?」

「えへへ~。そうかな?」


 キャロルは嬉しそうに燐に抱きつく。その間にセイラがキャロルの羽に触れ、燐の時と同じように光の粒子となって消えていった。


 そんな微笑ましい雰囲気だと言うのに、アリアだけは厳しい顔で地面と睨めっこしながら飛行練習を続けていた。


 アリアもなんとか方向転換までは出来る様になったけれど、燐とキャロルに比べたらまだまだ練習が必要なようである。


「浮遊城に行くにしても、もう少し先の話ですので……それまでに慣れたらいいと思いますわ」


 メリスが少し複雑な顔をしているが、燐とキャロルの順応力が高いだけでアリア位が一般的なのだ。それでもアクロバティックな飛行を思い出し、セイラはなんかは我慢しきれず噴出してしまっている。


 これからアリアを中心に毎日、飛行訓練が行われたが上達したかどうかは定かではない。


 そして遂にシャークリア上空に浮遊城クレイジアの姿を捉えた。

 

いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


自分の羽で空を飛びたい!!

誰でも、そういう夢を持った事があると思います。

私も例に漏れず、飛んでみたい!!

そんな、空を飛びたい作者ですが次話も頑張りますので

応援してくれたら嬉しいです。


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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