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未来に向かって

 とある人間の国のとある屋敷の一室に2人の男性がいた。


「貴様は私の実績に泥を塗ったのだよ?何が大剣豪の傭兵だ。餓鬼に負けた3流剣士め」

「……弁明のしようもありません。私は負けました……それが結果です」

「ふんっ。自分の立場は弁えているようだな」


 話が終わったようだと、一人の男が入ってきた。手には大きな袋を持っており、頭を垂れている男性に投げつけた。


 ゴロゴロと何かがぶつかり合い、気味の悪い音が部屋に響く。薄汚れた袋が男の目の前まで転がり、結んでいない袋の口から顔が覗く。


 それは、その男の部下の顔だった。さっきまで、息をして生きて帰れた事を幸運に思おう……次こそはっと約束を交わした者達。袋には6つの頭部が入っており、その男を逆上させるには十分すぎるほどの物だった。


「何故このようなことを!!俺達は傭兵だ……確かに任務を遂行出来なかった!!それでも、あんたを裏切るつもりなんてない!!汚い仕事だと分かっていてあんたに従っているんだ……それを何故!!」

「こいつらは逃亡を図った。ただの傭兵だったら逃がしてもよかったのだが……貴様らの仕事は裏の仕事だ。私の情報が漏れては困るのだよ」


 ギリギリと歯を食いしばり目の前の雇い主を睨み付ける。訓練された者でも、その眼光で顔色の一つでも変えるものだが、目の前の男はだからなんだっと言う素振りをしていた。


 怒りを堪え、部下の首が入った袋を手に取り頭を下げる。傭兵である以上、死ぬ覚悟は出来ているものだ。それでも望んだ死に様ではないが、雇い主の不利になるような事をしようものなら殺されてもしょうがないともいえる。


 良かったことは、皆殺しや制裁・見せしめの為ではなかった事だ。


「すまなかった。俺の監督不行届だ……2度とこのような事がないようにさせる……」

「それでいい。まずは休め……貴様の力は買っている。3流なんて言って悪かった、次は期待しているぞ?」


 思ってもない事を並べてくるが、従うしかない。正直、他で雇ってもらっても同じような事をする連中は万といる。それならば、じょうは無くても力を買って金を出してくれ待遇も良いここを選んでいいだろう。


 男性は部屋を後にし、埋葬をする為にどこかへと消えて行った。


「……放っておいても大丈夫でしょうか?」

「貴様か……。問題ないよ、あいつもプロの傭兵だ、その辺は弁えているだろう……」


 そして夜は更けていく。血で絨毯が汚れようとも意に介さないこの男の名は『マルタ・ゼルダン』。


------------------------------------------------------------------------


 夜を同じくするここは、シャークリア。妖精達が夜通し宴会を開いている。


 大量の酒に大量の料理が所狭しと準備され、即席ステージの上には踊り子が可憐な舞や妖艶な舞を披露し大いに賑わっていた。


「燐様にかんぱぁーい!!」

「我らの最愛の友人に乾杯!!」


 カコン カコン 


 この馬鹿騒ぎは、この後3日間行われるのだが……誰も知る由も無い。


「燐さん、どうぞ」

「ありがとう、アリア。ところでみんなは?」

「それぞれ忙しそうですよ?」


 燐はアリアから酒の入った大ジョッキを貰い、一気に飲み干した。この国のお酒の主な原料は果物である。


 そのせいか飲み口はすっきりしていて、何杯でもいけると錯覚してしまうほどだ。本当はそれなりに強めの果実酒なのだが。


 燐もお酒は嫌いではないのだが、悪酔いするのもあれなのである程度はセーブしてある。それでも空っぽになった傍から、みんなに注ぎ足されるので止めようにも止められない。


 そうしている内にセイラやメリスまでも注ぎにきてくれた。ふとアルコールの回った頭で燐はキャロルの行方を聞いた。


 どうやら疲れて眠っているということだった。さすがに肉体強化を掛け続けて、長距離走に戦闘まですれば疲れるのは当然だろうと燐は思った。


「俺も結構やばいんですよ?」

「大丈夫ですよ。だって燐さんですから」


 アリアが意味のわからない事を言っているが、燐に反論する余裕はなかった。次々と酒が注がれ……ついには意識が途切れる。


 目を覚ますと会場が酔い倒れた妖精でごった返しており……どこのカムランの丘だよと考えていた。


 燐は体を起こそうとしたが、酒が抜けきっておらずふらつく。それに加え体中に激しい筋肉痛を覚え、すっころんでしまった。


「あぁ~……こりゃぁ~ダメだ」


 燐はぼーっと会場を見ていたのだが、死屍累々の会場を凄い勢いで突っ切ってくる影が見える。どんどんと近づいてくるそれが、キャロルであると自覚した時には燐の脳裏にある言葉が浮かんだ。


(あっ……俺、キャロルに抱き殺される……)


 そして燐はキャロルに抱かれ再び眠りにつく。


 気がついた燐はベッドの上で寝ている事を理解した。ふかふかで気持ちのいいシーツが燐を撫でる。体を起こそうと力を入れるが起き上がれない事に動揺していたが原因はすぐに見つかった。


 ここは燐が城で使わせてもらっていた部屋のようだ。その部屋に気持ちよさそうな寝息が聞こえたので、ゆっくりと視線を巡らせるとキャロルが抱きついており、そのせいで起き上がれないんだと気が付いた。


 もう少しこのままでもいいかなと燐はキャロルが起きるまで、そっとしておく。宝物庫から本を取り出し、時間を潰していると案外直ぐに目を覚ましてくれた。


「キャロル、おはよう」

「うん、おはよぉ~……」

「おはよう」

「あれ?おにい……ちゃん?」


 燐は先程まで読んでいた本を宝物庫にしまい、キャロルに目覚めの挨拶をした。


 まだ寝ぼけているのか、目をこすりながら大きな欠伸をしている。キャロルは、ゆっくりと体を伸ばし燐を見つめている。


 燐の体を下から上まで確認し、夢じゃない事を確認したキャロルは唐突な事を言った。


「元気になった?お兄ちゃん、ごめんね?」

「ん?あぁ、元気だけど……なんで?」

「だって、私が飛び掛ったせいで口からドバァーって。それでお兄ちゃん、倒れちゃうから」


 燐はキャロルに抱かれる前から記憶が飛んでいたが、結果というか……やはり飛び掛られたらしい。


「もしかして俺、本当に死にかけたのか……」

「違うよ?口からお酒がドバァーって!!」


 アルコールが完全に抜けているのは一度吐いたかららしい。筋肉痛もだいぶ和らいで、体に力が入る。


 燐はベッドに腰かけ伸びをした。体の節々をポキポキと小気味良い音を立てているとドアがノックされた。


 どうぞっと部屋に招き入れると、リアがスープを持って入ってきた。燐とキャロルと……リアの分もちゃんとあるらしい。


 どうやら、あれから更に1日眠っていたそうだ。別段心配はしてなかったそうなのだが、お酒の飲みすぎはダメですよとだけ注意を受けた。


 燐も飲むつもりはなかったのだが、みんなが注ぎにくるから仕方なく……と心の中でだけ思い謝った。


「……ごめんなさい」


 目が覚めたらメリスが来て欲しいという事らしいので、スープを飲み干し女王の間へと向かった。


 そんなに経っていないけれど、燐は久しぶりに訪れるような錯覚に陥る。女王の間の入り口が見え始め、ゆっくりと扉が開いていく。


 そこにはいつもと変わらないメリスがいた。その顔は以前にも増して、明るい笑顔になった気がする。


「燐さん、お加減はもう宜しいのですか?」

「はぃ、ただの筋肉痛と二日酔いですから」


 燐は渇いた笑いを浮かべ、メリスに用件を聞いた。どうやらダンジョンで手に入れた宝箱の開錠に成功したという話だ。


 そしてメリスが侍女に命じ持ってこさせた箱の中には、いくつかの水晶のような物が入っていた。


 明らかに人工的に加工された水晶を燐はまじまじと見つめた。燐の作った魔法水晶に似た雰囲気がするが、一種の魔法道具であることは間違いないようだ。


 いくつかは文献に残っていたので、大雑把ではあるが用途がわかっている。その一つはメリスは手に取り燐に手渡した。


「これは?」

「未来予知をする道具です。但し、これから起こる悪い出来事のみを予知する道具です。その上、試練があると文献にはありましたが、詳細はわかりません」


 成程と燐は水晶をじっくりと観察する。別段、普通の水晶にみえるが魔力の鼓動を感じる事は出来た。


 燐が魔力の鼓動を感じると、水晶は黒く光だした。


「燐さんには、反応しましたか……。これは、使用者を水晶が選ぶらしいのです。未来を知りたい者や、未来を変えられる者……そういった者に反応を示すと。恐らく、その水晶が見せる未来とは……今回の事件絡みかと」


 燐は迷うことなく、その魔力の奔流に身を任せた。


 何かが体の中に入ってくる。そして燐はその場で倒れる……黒い魔力の霧に包まれて。どうやら、試練は始まったらしい。

いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


月曜日がもうすぐ終わりますね。

週の始まりは少しだれちゃいません?

それでも、明日も頑張りますよ!!

ファイトー おー


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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