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サイドストーリー:坂崎羚

今回は、燐がいなくなった元の世界のお話です。


 ピピピ ピピピ ピピピ。


 目覚ましが鳴っている。羚は目を覚ますと、一度伸びをして体をゆっくりと起こした。今は朝の6時、少し肌寒いが窓からは暖かい朝日が差し込んでくる。


 羚はベッドに腰掛けると、軽く体をほぐし部屋を出て行く。


 部屋を出て真っ先にテレビをつけると、そのまま風呂場へと向かった。毎朝熱いシャワーを浴びて眠っている体を覚醒させるのが羚の日課だ。


 心地よい熱さのシャワーが体を芯から温めてくれ、20分ほどじっくりと堪能してから朝食の準備に取り掛かる。


 正直なところ朝御飯は和食を食べたい派の羚なのだが、準備に手間がかかるため週に2・3日あればいいほうだ。そして今日は残念ながら洋食の日である。


 本日のメニュー

・プレーンオムレツ

・トースト1枚

・かぼちゃのボタージュ

・エンドウとミニトマトとブロッコリーのサラダ

・ブラックコーヒー


 これが本日のメニューだ。


 朝食の準備が出来ると丁度7時だと朝のニュース番組が知らせてくれ、羚は朝の占いを見つつ食事をはじめる。サラダから手をつけ順にオムレツとトーストを交互に食べ進めいく。


 その合間にポタージュを飲み、優しいかぼちゃの甘みで顔がほころぶ。市販の紙パックで売られている物をただ温めただけなのだが、侮る事なかれこれがまた美味い。


 羚はゆっくりと朝食を終え、片づけを済ませると8時を少し過ぎた所だった。毎日の日課で時間管理が体に染み付いているようで、いつもと変わらない日常だ。


 普通なら今から通勤という流れになるのだろうが、朝ゆっくりしたいという理由から会社の上階から3階分を潰して自宅に改造してしまったのだ。


 お風呂やキッチン等もわざわざ完備し、ベッドルームも来客用含めて4部屋もある。各部屋には必要ないと思うのだがパソコンとテレビを1台づつ配置している。


 さらにプレイルームと称したパソコン部屋も存在する程の充実ぶりだ。羚はその部屋にゆっくりと向かうと、モニターの電源だけは切って主電源はつけっぱなしにしてある1台のパソコンの前に座った。


 モニターがつくと羚は、スコップに笑っている口がついたアイコンからソフトを立ち上げる。


 ソフトの名前はシャベランカー。ライフワンという制作者が無料配布しているソフトである。何を隠そう親友の八神燐やがみりんが数時間で作った物だった。


 気づいた人もいるかもしれないが、このソフトの名前や制作者の名前は某最弱主人公が登場する有名ゲームをもじった物である。深い意味は全くないので語呂がよかったのか唯の思いつきなのかはわからない。


 短時間で作ったソフトなのだが、ボイスチェンジャーや映像共有機能に加えカスタマイズ仕様になっており、いくつかの王道ボードゲームやスケジュール機能、加えて性能は良くないが音声翻訳機能まで追加出来るのだ。


 相手の言葉は日本語に変換され、こちらの言葉は相手の言語に翻訳されボイスインターフェースが迅速に発声してくれる。勿論片方の音声だけを変換するようにも切り替えは自由だ。


 ただ最近、羚は心配なことがある。それは、こんなソフトを作れる燐の事についてだ。


 羚はゲーム仲間でもある燐を誘って、新しいイベントを一緒にやるはずだったのだが連絡が取れなくなってしまう。勿論、すぐに連絡がつかないこともあったが翌日には何かしらのアクションがあるはずなのだが、連絡は来なかった。


 もしかしたら病気やケガをしているのかもしれないと思い、家を訪ねてみたが反応はなかった。念の為、病院に確認を取ったが入院しているという事もないようだ。


 しかし連絡が取れなくなってもう10日以上が過ぎている。


 羚も、さすがにこれはおかしいと考えていた。旅行に行くにしても全く連絡をくれないのは変だし、それ以前に連絡した事を知らないのではないかと思っている。


 理由はいつ電話をしても『おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません』というアナウンスに切り替わるからだ。


 携帯電話が壊れている可能性もあるが、それならパソコンで連絡をとればいいし連絡も容易だろう。


 普段ならば羚がチャットを飛ばすと、だいたい返事が返ってくる。だが今回は違う。何度も連絡を取ろうと試みたが全て反応がない。


 まるでこの世からいなくなってしまったようだ。自殺をするような奴でもないし事件にでも巻き込まれたのだろうかと羚は不安に思う。


「燐。お前は今どこにいるんだ」


 天上に向けて発した呟きは、テレビの音にあっという間にかき消された。他の友人にも聞いたし、家族にも上手く誤魔化しつつ探りを入れてみたが知らないようだ。


 あいつなら大丈夫。


 根拠なんてない、そんなことはわかっている。だけど羚は信じている。あいつがそう簡単に死ぬやつじゃないって事を。厄介な事件に巻き込まれても、笑いながら自分の前にバカ面を晒して戻ってくると信じている。


 この後も燐と連絡を取れる事も帰ってくる事も無く、消息がわかる手がかりも一切出てこなかった。


 羚が燐を見つけ、再会するのはいつになるかなんてわからない。二人がまた一緒にバカが出来るのはもう少し先の話になりそうである。

早く燐と羚を会わせてあげたいですね。

でもまだ会わせません!!

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