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サイドストーリー:坂崎羚 その2

 変わりない朝が来る。羚は今日も規則正しく同じ時間に目を覚ました。


 そして、燐がいないこの世界も現実だと分かっている。燐と連絡が取れなくなって羚は、10日過ぎてから事の重大さを自覚し始めた。


 燐の行方を捜し始めて1ヶ月、一切の手がかりはない。あいつなら大丈夫だと思っていた羚は次第に、友人が急にいなくなった現実を受け入れ始めようとしていた。


 現実を受け入れる。それは、諦めるという事ではない。別の何かを模索する時なのではないかと考え始めていた。そして……。


「おはようございます。今日集まって頂いたのは、急な発表があるからです。ここにいる一部の人達には話したことだが、仕事のパートナーであり俺の友人である八神燐がいなくなった」


 知っていた者、知らなかった者はいるが騒がず羚の話を聞いている。


 そして羚は重大な発表をし始めた。


「俺は燐を見つけ出したい。その為に俺は一時的に社長業を離れようと思う。君達は優秀だ……俺がいなくてもまわしていけるだろう。何よりここまで大きな会社となったのは君達の努力の賜物なのだから」


 社員はそんな羚の言葉を聞いて、私達があるのは羚のおかげだと口々に言う。羚が友人の為に業務から離れるというのならば、精一杯支えたいとも考えている。


 誰も彼も、私利私欲に動く者はいない。野心に溢れた者も確かにいるが、それは羚を引きずり落とす事ではなく、更なる力をつけて生涯支えるという強い気持ちの者達なのだ。


 今回集まったのは羚が経営に対して多重の決め事を設け、予測に予測を何度も重ねた結果のマニュアルを皆に伝える事が一つの目的だった。


「……っという事なんだが、抜けはないだろうか?」

「はい、問題ありません。全てにおいて統率が取れていると思われます。これを覆すには社員の大部分が結託でもしない限り不可能です。考える限り起こりえない事態です」


 羚はほっと安心して、マニュアルについては一先ず隅において話を続ける。


 それは、ここに集まった者は優秀であるが故に、特技が多種多様だ。その力は燐を探す上で間違いなく力になるだろう。中には強いコネクションを持っており、それを持ってすれば不可能はないはずだ。


 羚は、友人を探す手伝いを申しでるが、断る者など一人もいない。この時より羚は会社を動かしてまで友人の捜索に乗り出した。


 しかし、更に1ヶ月掛けて情報を集めた結果は行方不明の報告書だった。公共機関は勿論、あらゆる方法を使って調べた。


 燐の姿を知っている社員には細かく思い出してもらったが、誰一人姿を見ていないという。情報集めを始めてからは、半径数十キロに関しては全ての人の行き来を調査させた。


 それなのに燐は見つからない。手に入る映像資料や特殊捜査員を使っても燐の行方の手がかりは部屋から出て自転車を使いどこかへ出かけたところまで。それ以降の痕跡は見つかっていない。


 それを元に映像班が全ての映像を確認する。何十という映像データの中に確かに燐は映っていた。


 結果、羚が電話したのを最後に燐の姿は忽然と消えた事まで判明した。そして消息を絶ったであろう場所までも……。燐は半径10キロ程度の範囲で燐の姿は捉えられなくなっていた。


 そこは以前から燐が目をつけ調査していた場所が含まれている。


「ここだ……。ちょっと、長い話になるが聞いて欲しい」


 羚はこれまで話した燐との会話を皆に伝える。理解した上で作業に取り掛かった。おおよその場所はわかるが、それでも捜索範囲が広すぎる。


 だからこそ、その道に精通している者を中心に話し合いが行われた。3日間徹夜して準備が進められ、それをスーパーコンピュターによって処理をさせる。次世代型と言うこともあり、その日のうちに結果をはじき出した。


「該当ポイントが17万箇所……」

「社長が抜け道とも言ってましたので、そちらでも計算させたのですが……」

「該当箇所なしか……」


 計算させた所で、誤差や移動範囲を指定してあらゆるパターンを無理矢理に表示させただけなのだ。結果として不明部が17万箇所、通路としての機能を果たせる場所で現在と違っている場所は無いというのが機械での判断の限界だった。


 それでも極少数の人が、おかしい所があることに気付がついた。おかしいと言うより違和感というべきレベルなのだが。


 それなりの知識は持っている羚が数値化されたデータを見ると、たしかに気持ちのよくない感じがする。それを長年の経験から違和感として何人かは捕らえたのだ。


 それならば該当した箇所をしらみつぶしに調査するのは確かに骨が折れる。なので羚は、出かける事にしたのだ……燐の家に。


 一応チャイムを鳴らすが反応はない。羚は預かっていた合鍵を使い、燐の自宅へと入っていく。そこは一人暮らしにはしては十分な広さのアパートだった。前に鑑識を連れてきた時と一緒で何一つかわっていない。


「おーい燐帰っているか!!帰っているなら返事くらししろ!!」


 勿論返事が返ってくる事はなかった。シーンと静まり返る部屋だけが羚を迎え入れてくれた。


「何か……何か手がかりはないか!!くそっ……なんで、何もないんだよ!!そういえば……確か……あった!!これだ!!」


 お目当てのメモを見つけ羚は喜び、会社に連絡する。そこにはある団地周辺を大きく囲んだ紙だった。


「俺だ!!見つけたぞ!!隣町の団地周辺だ!!再計算を頼む、俺もすぐに帰る!!」


 携帯をきると部屋にまた静寂が訪れる。羚はなんとなく燐が傍にいるような気さえしてくる部屋で静かに決意を固める。


 絶対に見つけてみせる。死んでいたなんて結末は認めないからなと拳を強く握り燐のアパートを後にする。


「俺は絶対にお前を探し出して見せる。その時は一発なぐらせろよ……なぁ、燐」

 

いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


今回は羚のサイドストーリー第2弾!!

とさせていただきました。

もう少し書きたいので第3弾を早い段階で上げるかもしれません!!

今日とか明日とか……。


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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