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イベント開催

「さてここからが本題なんだけど、あなたには知っておいてほしかった。まぁそういう事よ」


 そういえばそうだったと燐は終わったと思っていた話の続きをする事にした。セイラの雰囲気も少し落ち着き困ったような笑顔を向けてくる。


 燐も、なんとなく状況が掴めたらしく、これからの話が想像できた。セイラも先程の話から気分を一新するべく、そっと空中を舞うと一つの果物を取って降りてきた。それを燐に放り投げ笑った。


「それで、あなたに対してよくない感情を持ってる子達がいるって話。人間が女王に取り入って暗殺を狙っているとか、救った行為自体が自作自演で何かを企んでいるとか」

「やっぱりそういう話か」

「それで、どうにかしてあなたを排除しようとする動きもあるわ。私達は戦闘に向いてないけど、遣り様はあるわ……いくらでもね」


 燐の想像した通り、反感を買っているという事だった。しかも、命を狙っている者も少ないという状況に燐は悲しい話だと感じた。


 憎しみが憎しみを生み、止める事の出来ない流れの中でその暗い思いは力を持つ。復讐という最悪の形となって……。ただ、そこまで状況が緊迫していないのは人を殺せるだけの力を持つものが数えるほどだという事。


 当然、メリス配下の護衛隊は戦える力を持っている。そうでなくても城に上がる者は、ひとくくりに防衛者と呼ばれ国を守る歩兵・魔法兵・衛生兵等が存在する。そして、皆それなりの戦闘力を兼ね備えているのだ。


 幸運な事に、その中に復讐を考えている者はいない。人間のやっている事は許せない事だけど、皆殺しにしたいなど言うものはいなかった。ただ、それは消極論でしかない。短絡的な思考で浅慮な行動をしないだけで、問題は解決していないのだから。


「だから、メリスと仲が悪いのか……。でもねセイラ、メリスのやってる事は」

「うん、わかってる。お母様は何も悪くないって。私は自分の無力さや苛立ちを誰かのせいにする事で、気持ちを誤魔化してきた。何も出来なかった癖に全部お母様のせいにして、まるで駄々をこねる子供ね」


 そう言って苦笑するセイラからは、後悔の念が見て取れる。本当はセイラもメリスと仲良くしたいはずだ。なのに長い時間が二人を遠ざけ、家族という糸はどんどん絡まっていく。


 二人の近くにいる人は、事情を知っているが無闇に首を突っ込めば溝は広がる。慎重に慎重に見守って来られた結果がこれなのだ。セイラから打ち解ければ話は早いのだが、簡単に出来るならこんな状況になっていないだろう。


「それでね。私達の事はまぁ……頑張るから、あなたの事よ。みんなと仲良くなれるような企画とかないかしら?出来れば大勢で参加出来るようなやつ」

「大勢で出来る催し物か……。それなら、丁度いいものがある。準備に少しだけ時間がかかるし、メリスの力も借りないといけないから直ぐにって訳にはいかないけど」

「別に今日明日で何かして欲しいなんて無茶は言わないわ。でも、あなたの企画ならきっと楽しい事になるんでしょうね」


 そういうセイラの顔は楽しそうだ。燐はこの笑顔を守るために頑張ろうと思う。


 そして数日後、準備が整った。メリスにも頼んで宣伝してもらったし、後は皆が集まってくれるかだ。そんな心配をしていた燐だったがイベント当日は凄い人だかりとなっていた。


 見渡しても、奥まで見渡せないほどの集客に燐自身も心を躍らせている。出店もいくつか出ていて、おやっさんの姿も見受けられた。


 そんな大勢が集まってするイベント。燐も充分な量を準備出来たので問題ないとは思うが、これを纏めるとなると一苦労だろう。


 刻一刻と開始の時間が迫ってくる。メリスの護衛の人が燐を呼びに来て、楽しみにしてますと伝えられ緊張が増した。壇上に向う途中メリスの姿を確認出来た時は、砂漠でオアシスを見つけたような気分だと燐は思った。


 コツコツコツ ダンっ!!


 燐はまたここぞという所ですっころんだ。いつもかっこがつかない燐だったが、そんな燐を誰よりも頼もしいと思っている人たちがいる。


「燐さん頑張ってください」

「お兄ちゃん、頑張ってね!!」

「あなたはあいかわらずドジなのね……ギャップがひどくてわざとしてるのかと思うわ」


 燐はメリスに手を取られ壇上に上がる。見渡す限り、お客で埋まっている眼下を見て燐のノドがごくりとなる。


「さぁ、燐さん。始めましょう!!」

「あー。お集まり頂いた皆様お待たせ致しました。今日は私の考えた企画に参加して下さり有難うございます。長々と話をするのもあれですので、始めたいと思います。それでは『大餅つき大会』の始まりだ!!!」


 うわぁぁぁぁい!!楽しみだねぇ!!私達も頑張るよ!!


 そこら中から、気合と期待の混じった歓声が聞こえる。燐はあらかじめ宝物庫に保管しておいた道具を指定の場所に取り出した。


 あらかじめ場所を登録する事で、同じ物ならば同時に取り出す事が出来るのは家作りの時に確認済みだった。さすがに無制限の広さではないけれど、目で見える範囲なら問題はない。


 各所にうすきね、蒸し器が準備されている。どうせだったら蒸す所からやった方が感動が強いというキャロルの提案だ。


 どんどん料理好きになっていくキャロルだが、そのやる気が空回りするととんでもない物を作り出す。その代表作が皆の意見を無視して改良が続いている燐パン(ジャム入り)である。愛情と狂気は紙一重ということであろうか。


 作業手順を燐が皆に伝え、各自作業を始めた。実のところ燐自身、この米で餅が出来るかどうか未知数な所がある。


「すいませ~ん。この杵でしたっけ?上手く使えないんで見本見せてもらっていいですか~?」

「あぁ、はい!!それじゃあ少しだけやってみますね」


 そういうと燐は、妖精達に囲まれながらグループの1つに向かった。


 使い方は簡単だけど、案外続けるとなると大変な作業なのが餅つきである。燐はごりごりと蒸したての米を潰していく。ある程度潰せたら、今度は杵を振り上げ……振り下ろす!!


 ぺったん ぺったん ぺったん


「こうやってやるんです。それで、続けていると……ほらっ!!杵にくっついてくるでしょ?だから、少しお湯を入れてあげたらくっつかない様にしてあげるんです」

「おぉ~。なるほどぉ~。わかりました先生!!」

「先生はやめて……」


 周りで見ていた子達も習うように作業を始めた。


 燐は会場を見て周り、上手く出来ないグループの所に行っては丁寧に教える。すると、順調なはずのグループも燐に声を掛けやってみて欲しいと言って来る。


 和気藹々(わきあいあい)と作業が進み、完成しているグループも見受けられた。上手く餅に仕上がったみたいで、燐も一安心だった。


「あなた教えるの上手だし、優しいね!!」

「うんうん。私も最初、人間の企画って聞いた時は迷ったけどあなたの事は好きよ」

「うん!!私も!!」


 どうやら燐への悪意は薄らいだみたいである。あわよくば燐をきっかけにもっとお互いを知り、仲良くなって欲しいと燐は思う。


(俺はこの子達の闇を知らない それでも少しづつでいい 良い未来へと向かって進んで欲しい)


 燐は未来を見据え、微笑んでいた。いつの間にか、燐の周りにはたくさんの妖精が舞い同じように燐に笑顔を向けてくれる。


 気付けば、お餅を完成させたグループがだいぶ増えねちゃねちゃになりながらも、初めての食べ物を満喫していた。あらかじめ、きな粉やしょうゆ・餡子なんかも配っていたので思い思いの食べ方をしている。


 メリスも専用スペースで、その光景を見つめ微笑んでいた。これは小さな一歩だが大きな一歩であって欲しいと皆が思っている。


 燐はメリスを見つめていたのだが、血相を変えて近づいてくる影が。良く見るとあの時の護衛隊長ではないか。燐は不安を感じ、そっと場を離れメリスの元へ向かった。


「はぁはぁ……。メリス、何かあったのか?」

「いえ、あの。隣さんこっちへ来てくれませんか?」


 メリスは燐に顔を近づけさせ、耳元で今起こっている事を囁いた。


 それを聞いた燐は顔を険しいものへと変え、駆け出した。メリスや護衛隊長の止める声も聞かずに燐は森を駆け抜ける。


 この楽しい時間を破壊し、皆から笑顔を奪おうとする者がいる。幸せな思い出が不幸せな思い出の日にならないように燐と、もう一つの影が走り去った。

いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


絶賛背中の痛みが続いている作者です(泣)

仕事が終わったら薬局にでも向かってみようと思います。

皆さんも体は大切に!!


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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