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待望の目覚め

一部、段落を修正しました。

見やすくなっていると幸いです。

近いうちに全部確認します。



 (声が聞こえる……。体が動かない……。目が開かない……)


 まるで水の中にいるような感覚の中、浮上しようと足掻く。手ごたえの無い真っ暗な世界を泳ぎ、輝く光に向って進む。


 燐は気づけば目を開き、部屋を見渡していた。アリア・キャロル・メリス・セイラが始めに燐の視界に入ってきた。


 その姿は若干ぼやけてはいたものの、目を凝らしていると焦点が定まり始める。燐は目を一度擦り、その姿を再度確認した。燐の見つめる先でみんな涙を浮かべていたので、燐は自分の置かれている立場がわからず、わたわたと取り乱してしまった。


「燐さん、おはようございます。お体の具合はいかがですか?」


 始めに話しかけてきたのはメリスだった。メリスが声を発したのをきっかけに皆無事を祝ってくれた。燐はキャロルに泣きつかれ、ゆっくりと記憶を辿る。


 記憶を探るとすぐに燐の頭にこれまでの事が蘇ってきた。キャロルが助けてくれた事、たくさんの死を目の当たりにした事、禁術を使った事。燐は記憶がフラッシュバックし、全ての記憶を完全に取り戻した。


 そして、燐は眠っている間の事も思い出していた。黒い焔の獣に体を何度も何度も焼かれ、その度にそいつは燐を責め立てた。全てを招いたのは貴様せいだ、多くの者が死んだのはお前のせいだ。罪をあがなえ、永遠に苦しみ続けろと。


 それでも尚、燐がこうしていられるのは、その言葉に惑わされず強い気持ちを持ち続けられたからだ。


 それでも記憶にある、一つの事実が燐の心を苛む。夢の中の獣が言った事は間違っていなかったのではないか。燐は罪を犯したという自責の念が肩に重くのしかかる。


 もしかしたらどうにか出来たかもしれない、他の手段があったのかもしれないと全てを思い出した燐は唇の端を強く噛んだ。燐は夢の中で責め続けられた言葉を反復するように思い出し、やはり自分が間違っていたのではないかと考え表情を曇らせる。


「メリス。それにみんな……心配をかけてすいません。体は重いですが……痛みとかはもうありません。……それと俺はメリスに、いや……護衛隊の皆さんに聞いて欲しい事があります」

「……なんですか?」


 燐は一呼吸おき、ゆっくりと語りだす。それは許しを乞うように。


「俺は魔法を使う時にメリスやアリア、キャロル達を守るという建前で救えたかもしれない護衛隊の1人を見殺しにしました。俺は助けて欲しいと聞こえていたのに、それしか手段が無いと決め付け自分勝手な判断で魔法を使いました」

「……」

「結果的に逃げたみんなを守る事は出来たのかもしれない。けれど救えたかもしれない命を俺は天秤にかけて消し去ったんです!!」


 燐には聞こえていた。馬頭の化け物が残った妖精たちを圧殺し、その魔法から虫の息ながらも逃れ、生きる事を諦めず助けを求めた者がいた事を。下半身は失われていたけれど、もしかしたら救えたかもしれない命を燐は化け物ごと消し炭に変えてしまった。


 燐は命を天秤に掛け、決断を大小の差で選択し小さき方を捨て去った。それがいかなる理由であっても命の重みに差なんてないはずなのに。


 メリスは燐に悲しそうな顔を向ける。命の恩人である燐のしたことは間違っていなかったとメリスもわかっていた。ここにいる護衛隊達は回復魔法にかけても超一流の使い手であるが、下半身を無くした者を救える者などいなかった。


 その重みはメリスにもわかっている。時には選ばなくてはならない選択が存在する事を。まして女王という立場であれば、民を先導していかないといけない。苦渋の決断を強いられても尚、前に進まないといけない事を知っていた。


 罪の重責を幾重にも積み重ね、それでも強くあれといばらの地を歩いてきたのだ。


 だからといって、メリスでも軽々しく正しい行動だったとも伝えられるずにいる。メリスはいつから2本しか道がないと思うようになったのだろうかと思う。


 別の道だってあったかもしれない。違う道を選らんでもっと酷い事が起こるかもしれない。それでも、みんな強い心を持っている。悩んで選んだ結果、望んだ未来じゃなかったとしても悩み抜いた末の事……そう、乗り越えられるはずだ。


 それなのに燐が苦しんでいるのはあったかもしれない道を探すことをやめ、小の犠牲を無意識に選んだ事だった。言い換えれば、助けれる助けれないに関わらず、燐は自身の判断で命を奪う事に戸惑わなかった自分自身が怖かったのだ。


「燐さん。私達にも燐さんが思い、苦しんでいる事はわかります。誰もあなたを責める者はいません。燐さんは責められた方が楽だと言うかもしれません。あなたのせいで私の仲間が死んだのだと……なんで助けてくれなかったのかと」

「……」


 燐は無言のまま微動だにしない。ただただ下を向いているだけだった。


「でもあなたは私達を救ってくれた。どうしようもない状況で命を削って救ってくれたじゃありませんか。燐さん……あの惨劇以来、皆それぞれに心に傷を負いました。ですが、それを乗り越え強くなろうと、未来へと前進しようとしているのです。だからあなたにも前を向いて歩いてもらいたい」


 そういうメリスの目には強い光が宿り、燐をまっすぐ見つめている。燐も俯いていた顔を上げメリスを見つめた。その後ろには笑顔の皆がいて、燐を優しく見守っていた。


「メリス。俺の記憶から罪の意識が完全に消える事はないでしょう。それでも俺には、心配してくれる人や笑顔で待っていてくれる人がいる。だから俺は前を向いて歩いて行こうと思う」

「燐さん……」


 メリスは涙を浮かべ燐の胸に抱きついた。女王としては相応しくない姿かもしれないが、燐はそんなメリスの頭をゆっくり時間をかけて撫でてやった。


 メリスを撫でていた燐だったが、ふと周囲を確認してみると護衛隊の人たちはにやにやと意味深な笑顔をしていた。


 いろいろと思うところもあるが、燐はアリア達を見た。アリアとセイラが腫らした目で優しい笑顔を向けてくれる。そして、キャロルは少しもじもじと体をくねらせていた。


 燐と目があうと、下を向いてしまう。事情を理解した燐はメリスを撫でている手と反対の手でキャロルにおいでおいでと手招きをした。


 すると、キャロルが待ってましたとばかりに満面の笑みを浮かべ燐に走り寄ってきた。飛び掛られると身構えたが、ぽすっという音と共に軽い衝撃が燐にくる。


「何て言っていいのかわからないけど。ただいま。キャロル。心配かけちゃった……よね?」

「うぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁん!!凄く心配したんだから。ずっと……っずっと一緒にいようね!!」


 目覚めた直後、真っ先に抱きついて来て一度は落ち着いていたキャロル。笑顔だったはずのキャロルはすぐに涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしていた。嬉しい気持ちや心配だった気持ちがいっぺんに込み上げてどうする事もできないのだ。


 燐は抱きついてきているキャロルの頭も優しくゆっくりと撫でてやる。そうしていると落ち着いてきたようで、すすり泣きに変わった。


 メリスは既に燐から離れ、キャロルと燐は互いに無事を確かめ合う。時間にすると数分の出来事だけど、それはとても優しい時間であった。


 キャロルも名残惜しそうに燐から離れ、それを見計らったようにアリアとセイラも燐の元へやってきた。


「燐さん、おはようございます」

「あぁ、おはようアリア」

「お帰りなさい。心配してたんだからね」

「そうだなセイラ。心配かけて悪かった」


 それぞれに挨拶を交わし、やっと場が落ち着いた。先程まで泣きながら燐に撫でられていたメリスも身嗜みを整え、いつもの彼女に戻っていた。


 キャロルはまだ、すすり泣きが止まらないようだけど笑顔でいる。燐はこんなにも素晴らしい友人や家族がいた事を感謝した。燐は改めて部屋を見渡し笑顔で報告をする。


「みんな、ありがとう。ただいま!!」


いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


今回の話は作者の中で凄くもやもやしています。

どこがっていうより、全体的にもやもやしています(●´^`●)

きっと、今日は眠れませんね(笑)


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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