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念願の冒険者

 寝落ちに関しては免許皆伝レベルに達しているとある青年が目を覚ました。そんな数多いる実力者の中の一人、八神燐はゆっくりと体を起こした。半分意識があったようなものなので、寝起きはバッチリだ。朝日が部屋を照らし、その気持ちのいい気分に浸りながら部屋を見渡した。


 アリア・キャロル・セイラ・リア……みんな気持ちよさそうにベッドで眠りについている。柔らかいベッドに暖かい日差しなんて最高のコンボ攻撃だ。みんな起きそうにはないが、そのうち明るさで目を覚ますだろう。


 燐はお茶でも淹れようと立ち上がり、ティーポットを準備した。そして燐は固まった。各部屋にトイレやミニキッチンは完備しているのだが、お湯の沸かせ方がわからない。


「どうやってリアはお茶を淹れたんだ?」


 頭がまだ働いてないせいか上手く結論が導き出せないでいる。頭を悩ませた結果、これだと言う結論が出なかったので面倒だとは思ったが魔法玉(火)を使い効力と継続時間を指定して水を張った鍋に投げ込んだ。


 グツグツと音をたてだし沸騰し始めたので、茶葉をティーポットに入れ沸騰したてのお湯を注ぐ。


「よっし。あとは蓋をして数分待てば出来上がりっと!」

「……」


 準備完了と意気揚々に振り返った先にはセイラが立っていた。思わず後ずさり今も尚沸騰を続ける鍋を鷲づかみにしてしまい燐は悶絶を余儀なくされた。


 若干呆れたような顔をするセイラだったが、そっと燐の腕を取り回復魔法をかけてくれた。みるみる内にヒリヒリとした焼けるような痛みは消え、何事もなかったかの様に治まった。


 お茶も出来上がったみたいなので、燐はセイラの分も淹れてやった。テーブルに向かい合わせに座り静かな部屋にお茶のいい香りが立ち込める。匂いに誘われてかアリアとリアも目を覚ましたので燐はカップの準備を始めた。


「おはようございます燐さん(様)」

「二人ともおはよう。すぐに準備するから座って待っててよ」


 手際よく取り出したカップを燐は素早く温めテーブルへと持って行った。すると、どこから取り出したのかリアがお菓子をテーブルの中心に置こうとしている所だった。


(またどこからともなくお菓子を……四次元ポケットでもあるのか?)


 燐はこの家を作った本人なのだから収納スペースがどこにあるかも把握しているし、新たに持ってきたクローゼット類もどうやって運び込んだのかは知らないがあの中には普通いれないだろう。もしかしたら一番不思議なのはリアなのかもしれない。


 そんな事を考えていても埒が明かないので、とりあえずはお茶を準備することにした。リアの取り出した一口大のパイを頬張りながら、まったりとした朝の一時が過ぎていく。


 これだけ4人がわいわいとしているのにキャロルが全然起きる気配がしない。そう思い燐はベッドの方に顔を向けたらしっかりと起きていた。


 布団に包まり暗闇の中から覗いている顔が見える。何かを呟いているみたいだが小さすぎて聞き取れない。燐が手でおいでおいでとするがキャロツムリ状態のまま動こうとはしない。しょうがないので近づき優しく燐は尋ねてみた。


「…………るい」

「え?」

「ずるい!!!」


 キャロツムリは布団の中で立ち上がり、その勢いで捲れ上がった布団を脱ぎ捨て叫んだ。


 燐は咄嗟に不思議な臨戦体制をとり身構えたがキャロルが何かしてくる事はなかった。少し拗ねた感じのキャロルは燐に抱きつき顔をうずめて来る。どうやらキャロルだけ除け者にして楽しくしていた事がお気に召さなかったようだ。


 燐は見ているだけで手助けをしてくれない3人の元へキャロルの手を引き連れて行った。テーブルの上をみた燐は何も無いことに唖然とした。


 リアへと視線を向けた燐だったが、そっと目線を逸らされてしまった。どうやらおかわりは無いようだ。はっとした燐が反応の無いキャロルの方を向くと、キャロルは既に石像と化しさらさらと砂になっている所だった。


 見かねた燐が慌てて大急ぎで代わりのお菓子を準備して事無きをえたが、随分予定がずれ込んでしまった。早速セイラに冒険者登録をお願いしたところ一応条件があるというので燐は説明を受けた。



 以下が冒険者の権利を得るための条件である。

1.記憶媒体を有するステータスプレートを所持しており、尚且つ3~5年以上の使用を確認出来た者。

 (特例事項として紹介や推薦・年齢によりその限りではない)

2.ある程度の戦闘経験及び戦闘能力を有している者。

3.過去に永久処分となっていない者。

4.上記条件を満たしていても、犯罪者や人格面で問題があると見なされた場合は無効とする。



 大まかにいうとこんな感じだ。後は役所で申請し問題がなければ晴れて冒険者となれるのだ。


 燐は早速商業区にある役所に行くことにした。随分日も落ちてきたので急がないといけない。準備を整えいざ向かわんと一歩を踏み出したのだがその一歩は失敗に終わる。


 セイラが服の襟を掴み「待ちなさい」という。目に見てわかるくらい浮かれすぎな燐は既に冒険者になる事で頭がいっぱいだった。


「なにするんだよ……」

「さっきの説明聞いてなかったの?私の推薦がないとダメなんだからね」

「そうだったそうだった。じゃあはやくいこ!!」


 伸ばした手はセイラの腕を取り、そのまま目的地へと向かう。燐は気にしてないようだが、セイラだって女の子だ……急に手なんて握られたら照れてしまう。


 そんなセイラの心情なんて我関せずと言わんばかりに、スキップでもするように燐は森を進んだ。城に比べたら圧倒的に近いので15分も歩けば眼前に商業区の吊り橋が見えてくる。


 最初こそ、その光景も楽しんでいたのだが何度も訪れていると慣れてしまうものだ。とは言っても橋から下を覗くと背筋が凍るレベルの高さなのだが。


 吊り橋を渡りきりあっという間に役所に到着した燐はセイラの案内のもと手続きを始めた。ステータスプレートを確認した受付兼審査員は問題ないと言い処理に移った。


 本当は職員が戦闘レベルを確認したり問診があったりするのだが、能力的に及第点以上だったようでスムーズに進んでいった


 本当はもっと時間がかかるのだが30分程で冒険者登録が終了した。燐にステータスプレートが返却され確認すると裏面に光差す天空に向かって数人の妖精が昇っていく様を描いたイラストが彫られていた。


「おお?きれいな絵だな。これが冒険者の証って事でいいんだよな?」

「そうよ、これであなたも冒険者よ。おめでとう、祝福するわ。わーぱちぱちぱちぱち」

「セイラさん、すっごいわざとらしいので止めて頂けますか?」


 言い方にトゲはなく、最近はこのようなミニコントみたいな事を良くしていた。それだけセイラも燐に心を開いてくれたということだ。


 ただそんなセイラも夜になると暗い顔をしていたり、泣いている姿を見かけていた燐だったが見なかった事にしている。彼女には彼女なりの悩みや苦しみがあるのだ。


 燐に打ち明けないのは信用していないわけではないけれど、まだ不安なのだ。いつかセイラが自分から話してくれるまで燐は触れないでおこうと思っている。


「さぁ帰りましょう。きっと今日はご馳走よ?」

「まさか俺の為に?」

「それはどうでしょうね~?」


 楽しそうに笑うセイラと燐はすっかり夕焼け空になった道を一緒に歩く。別段何か話をしたりとかはせず、ただただ一緒に歩いている。


 それが燐にとっては日常でありふれた事になっていた。ありふれた事だけど、それは大切な物でかけがえのないものなのだ。実感しにくい事かもしれないが、心の中がぽっと火を灯すように温かくなるそんな気持ちが大切なのだ。


 すっかり薄暗くなった森の中でやっと明かりが見えてきた。入り口に立つとすでにいい匂いが漂い、話し声も微かに聞こえてくる。


 燐は音をたてない様にそっと扉をひらいて中を覗いてみると、アリアとキャロルが楽しそうに料理を作っていた。雰囲気からしてもうすぐ全部出来上がるようだ。


 邪魔をするのも悪いので散歩でもして時間を潰す事にした燐は田んぼへと向かった。そして眼前に飛び込んできた育ち具合を見て若干引き気味だ。


 先日、燐の腰くらいまでしかなかった稲が今では150cm程度まで成長している。明らかな成長過多に恐怖すら覚える。


「竹じゃないんだから、そんなに育つなよ……。食べるのが怖くなってきたな」

「だだだ、大丈夫よ!!育ちが良いんだからいい事じゃない!!ほら、いっぱい作れる……わよ?」


 化け物穀物を見てセイラはフォローをいれてくれているが、燐と同じ様に顔は引き攣らせている。あと数日放置すればどうなるか興味はあるが、危険な賭けかもしれない。2人は見なかった事にしようと以心伝心・阿吽の呼吸で踵を返し家に向かった。


 帰宅した二人はアリアとキャロルの出迎えを受けた。なかなか帰ってこない2人を心配して待っていてくれたのだ。


「おかえりなさい燐さん。冒険者にはなれましたか?」

「ああ、無事なれましたよ。ほらっ!」


 そう言い燐は自分のステータスプレートをアリアに見せた。キャロルも背伸びをして見ようとアリアの右や左や正面に回りこみぴょこぴょこと飛び跳ねている。アリアはキャロルにも見えるようにしてやり、やっと見えたそれを掴みとてもうれしそうだ。


「これでお祝いの料理が無駄にならずに済みますね」

「お祝いだなんてそんな。ありがとうございます」

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!私とお揃いだね!!」


 にこにこ顔のキャロルがポケットからステータスプレートを取り出す。勿論それにはキャロルの名前と裏面には冒険者の証が描かれている。


「そうだな、キャロルと一緒……だ?」


 燐の頭に『???』が浮かぶ。


「キャロルも冒険者なの!?」

「うんそうだよぉ!!お母さんも一緒だよ!!」

「えぇぇぇぇぇぇ!?アリアも冒険者!?」


 アリアもどこから取り出したのかステータスプレートを見せてくれた。それは紛れもなくアリアの物で燐やキャロルの物と同じように冒険者の証が刻まれていた。


 意外にも2人とも既に冒険者だったのだ。燐はいつも驚かされてばっかな気がすると、しみじみ思った。


 アリアが冷めないうちにと言うので、燐の冒険者記念パーティーは始まった。楽しい時間はあっという間に過ぎていく。リアの持ち込んだお酒をキャロルが誤って飲んでしまったり、酔っ払ったセイラが風呂で爆睡したりと問題はあったけどそれぞれ楽しんだようだ。


 みんなお酒のせいか騒ぎすぎたのかはわからないが眠ってしまったので、燐は4人をベッドに運んでいた。みんなをベッドに運んだ燐は一人、残ったお酒を飲みながら先程の事を考えていた。


 キャロルとアリアも冒険者だった事を。アリアはともかくキャロルまでもが冒険者……別に深い意味はないだろうと思いつつ燐の心は雲が掛かった様にすっきりとしない。


「明日、二人に……聞いてみるか」

いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


読んで下さる方が増えてきて結構嬉しい作者です。

なので、特にひどい最初の方の話をしっかりと書き直したいこの頃。

プロフも更新出来てませんしね……。


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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