ステータスプレート
ステータスプレートが作れる事実を知った燐は朝早くから商業区にある役所に来ていた。受付には前来た時と同じ女性エルフや初老のおじさん達が暇そうに座っている。普通ならば綺麗な女性エルフの所へ人気が偏りそうなものだが、この国で男性を見かける事はあまりない。
勿論いないわけではないのだろうが、妖精は女性だけだしエルフも買い物に来ている人の多くは女性が占めているので人口密度は圧倒的に女性優位だ。だから受付の人気が極端に偏ったりはしないのである。
なので燐は朝早くにも関わらず少なからずいる順番待ちの列の中で2人しか待っていない所へ並ぶと、静かに自分の順番が回ってくるのを待っていた。それも数分待てば燐の順番がやってきたので、促されるままイスに座る。
「こんにちは。今日はどのような御用件で?」
「えーっと、ステータスプレートが作れると聞いてきたんですが」
「それでしたら奥の階段を上がって2階で審査等がありますので、そちらの受付でお願いします」
「わかりました」
確かによく見ると案内板が設置されており、きちんと2階で受付となっていた。燐は改めて2階の受付に行き作成を依頼すると丁寧に説明をしてもらえ、すぐに作れると言う。
すぐに作れるとあって燐は早速作りたいステータスプレートを選び始める。ステータスプレートと一言で言っても実は何種類か選択する事ができるのだ。紙ベースタイプや金属プレートタイプ、魔法で特殊加工を施したプレートなんかと様々なタイプが存在する。
燐はその中でも特殊加工された物を選んだ。これはメリスが使っていた魔法と同種の魔法が付与されており、持ち主の資質を自動で読み取りステータスプレートに反映してくれる代物である。
これが魔法付与されていないただプレートならば、役所へわざわざ更新手続きをしないと反映されないので不便なのだ。それに価格も大した事ないので多くの人は個性に合わせた特殊可能プレートを選択するのである。
「こちらのプレートで問題ありませんか? 盗難や紛失された場合は再審査がありますのでお気をつけ下さい。悪用を防ぐため場合によっては発行をお断りする場合もあります。詳しい説明をお聞きしますか?」
「んー……いいや」
「かしこまりました。それではこちらが発行書類になりますので記入お願いします」
「はい。あっ……」
説明を聞き終わり作成代金を支払って書類をもらったのはいいが、燐はこの世界の字をまだきちんと書く事ができない。なので代筆をお願いすると、受付の人は少し驚いていたが笑顔で応じてくれた。
どうやら教育面は充実しており特殊な環境で育った人ならばともかく、大多数は字の読み書きくらいは出来るのだ。ちなみに燐の身なりはメリスに借りている服なので普通に上等な物にあたる。だからこそ余計に驚かれてしまったと言う訳なのだ。
燐は代筆をお願いしてもらっている間、字の勉強ぐらいはしっかりしようと本気で考えていた。そんなことを考えていると割とすぐに準備が整ったらしくステータスプレートの作成にうつる。
作成手順はとても簡単で、燐の手の甲に魔法陣を描き水を張った聖杯の中へと手をつっこむだけで自動的に資質や魔力の流れなんかを読み取りプレートが作られるのだ。
魔法にいちいち理由を求めていたらきりがないのだが、受付の人が近くの四角い入れ物から完成したプレートを取り出し渡してくる一連の動作は不思議でならない。原理はともかく燐はもらったプレートをまじまじと確認してみる。
プレート自体は軽く頑丈で銀色の表面が日の光を反射し輝いている。材質はステル鉱石というものを使っており、手に持った感じは鉄に近い。
ステータスプレートの表面に目を落とした燐は資質がちゃんと明記されている事を確認し内容をチェックしてみたが、メリスにみせてもらった時と全く一緒だった。
燐は改めて明記されている特技・技能欄を確認しどんな魔法なのか調べてみようと、受付のお姉さんにお礼を言うと地下へ伸びる階段を下り図書室へと入っていく。
「さてと……探しますか!!」
燐は前回来た時と同じ様に魔法書関連が収められている本棚の前に立ち、固有魔法について書かれている書物を探し始めた。物量自体は大した事がないので2時間ほどかけて数冊の本を手に取ると備え付けの読書スペースへと向かう。
他に人はいないのだが、燐は個室スペースに入ると早速選んだ本のページをめくり始める。すると固有魔法『創造主』について書かれているページを発見した。
書かれている内容によると創造主とは、材料と道具が揃っていれば優れた物を作り出せると書かれている。例としてステル鉱石と鍛冶道具があれば、普通の鍛冶師が作るより頑丈で精度のいい剣が作る事が可能。ただし注意書きとして専門の知識がない場合はその限りではないともある。
この本に書かれている説明を読む限りだと聞いていた通り間違いないと燐は納得した。他の魔力具現化と魔力加工については記載がなくどういった物かはわからない。どうやら実際に試してみるしか手はなさそうだ。なので燐はさっそく商業区を後にして念の為郊外へと出かけた。
町を出る前にいくつか買い物をして誰もこなさそうな川岸に到着する。さっそく実験に使うべく買い込んで来た物を宝物庫から外へと出した。
「あれとこれと……面倒だし全部出すか」
どれだけ買い込んだのか川岸はあっというまに露店のようになり、燐は水晶の様な物を一つ手に取ってみる。水晶のような物はアルメンティアというらしく、この世界ではガラス細工の様な物を作る時に使う安価な素材の1つだ。
燐は試しにアルメンティアを持ち力を込めると少し熱を持った気がした。どうやら魔力を込める事には成功しているようである。
試しに形を想像しながら、魔力を込めていくと小さなコップが出来上がってしまった。シンプルな出来だがどうやら加工は成功したみたいである。
「誰が見てもこれはコップだよな。こんなに簡単に作れるんだったら、いろいろ試してみる価値はあるな!!」
魔力加工とは即ち材料さえあれば専門の知識を必要とせず加工する事が出来る魔法。燐は魔法の用途を把握したので、試しに先程作ったコップを地面に叩きつけるとあっさりと割れてしまった。
割れたコップの破片を集め今度は加工過程を確認しようと再加工してみた所、スライムの様にぐねぐねとうねり割れる前のコップの形になる。今度は割れないように頑丈なコップを作ろうと念じながら加工したせいか、叩きつけても先程より砕け散らなかった。
魔力具現化も試してみたけれど、こちらは用途不明である。具現化と言うくらいなので試しに何も無い所からコップを作り出そうとしてみたが、やはりというか何も起こらない。
「魔力具現化かー。どういうことだろう……」
魔法の使い方が分からず考え込んでいた燐だったが、ふと魔法水晶の事を思い出した。燐は前にもどこかで魔法水晶に関する事を見聞きした覚えがあると記憶を遡ってみた所、メリスのとこの図書室で読んだ本に書いてあったのを思い出す。
あの時は魔法使用時の発動媒体に出来るとあった気がするが、取り分け必要でないと思い流し読みしかしていなかったのだ。
燐は内容を飛ばし飛ばし読んだので正確には覚えていないが、水晶に魔石や魔力を持つ何かの力が作用し、魔力自体が特定の属性を持った状態で水晶と結合し安定したものが魔法水晶みたいな事を書いていたと記憶のカケラを何とか手繰り寄せ思い出した。
そこまで思い出した燐は水晶に魔法を込める事で人工的に魔法水晶を作れるのではないかと考える。魔力具現化とは基本目には見えない魔力を何らかの形で目に見える状態にする事が具現化ではないのかと。
それが正直何の役に立つのかと言われれば答えにくいのだが、もしかしたら面白い事が起きるんじゃないかと燐は心をときめかせる。
「暖かな光よ 我が手に集え 光は火となり力を以て “光火”」
今度はガラス玉を作りその中に初級の火の魔法を使ってみた。結果は残念ながらガラス玉が弾け飛んでしまった。それならばと更に頑丈なガラス玉を作って同じように魔法を使ってみるて砕け散らなかったものの赤熱しひび割れてしまった。
「強度が足りないわけじゃないか……」
それに、これだったら魔法が使える者であれば誰でも出来る。ただただガラス玉の中に火の魔法を使っただけなのだから。何度も試してみたけれど同じ結果となり別の方法を考えることにした。
原点に戻って考えてみることにした。魔法とは魔法陣を通して魔力を使い魔法発動内容を定義する事である。順番で言うと魔法陣・魔力・呪文・発動という流れになる。この流れに魔法水晶を作る工程を加える時、燐は発動した魔法を対象に使っていた。方法が違うのなら順番を変えればいいのではないか?と燐は考えた。
「まずはガラス玉を作る。次に魔法を使うのではなく、魔力そのものをガラス玉に送り固定する。魔法陣をガラス玉の中に展開!!暖かな光よ 我が手に集え 光は火となり力を以て “光火”」
ガラス玉の中で魔力がぐるぐると巡り魔法へと昇華されていく。これを魔力加工の応用でガラス玉の中に固定していく。どれくらいの時間が過ぎただろう。渦を巻いていた魔力がガラス玉の中で赤い光を放っている。どうやら固定に成功したようだ。
「ふぅ……。なんとかなった……。こんなピンポン玉程度の大きさの物を作るのにこれじゃ身が持たないな」
疲労困憊で成功した事への感動は今は感じられないようだ。息を落ち着かせながらガラス玉を見ていた燐はふと思った。
「で、どうやって使うんだこれ?っというか成功したかどうかもわからないんだよなぁ……」
向かう先は魔法屋。あそこにいけば鑑定してくれるはずだと思い、まずはいろいろと作ってみようと川岸で出来るだけガラス玉を精製していった。それは空が夕闇に包まれる直前まで続けられふらふらしながら城への帰路に着いた。
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名前:八坂 燐 年齢:23歳 性別:男 レベル:9
加護属性:火
固有魔法:創造主クリエイター
体力:750
物攻:600
物耐:600
魔力:900
魔耐:700
敏捷:450
特技・技能:宝物庫・属性魔法・魔力強化・魔力供給・効率強化
創作魔法・魔力具現化【+魔法具現化】・魔力加工【+材質変換】
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いつも読んで下さり有難うございます。
感想・意見・誤字報告ありがとうございます。
今更ですが、ステータス表記を変更しました。
少しでも見やすくなっていれば幸いです。
それでは次回更新でまたお会いしましょう。
※改稿致しました。




