燐とセイラは仲良しこよし?
只今の状況。ケプルンキングの上には燐・セイラ・キャロルが寝転がっている。先程まで喧嘩腰だった燐とセイラもあっという間に元通りだ。
「それにしてもここは気持ちがいいわ。アリーもくればよかったのに」
「お母さんは、ケプルがあんまり好きじゃないから来ないと思う」
「あはは、確かに。アリアさんケプルに囲まれて石像みたいに固まってたもんな」
3人がケプルンキングの上で寝転がって笑っていると、さすがに聞こえたのかアリアが怒っている。怒っているが、アリアが這い上がってくる様子は見られない。
アリアとしても登って文句や言い訳の一つでもしたいところだが、登るべき山が全てケプルで出来ているとなると手の出しようもなかった。
「もうそろそろ降りてあげない?この感触はクセになりそうだけど、アリーだけ仲間はずれにするのもかわいそうよ」
「……そうだな。機嫌を損ねる前に降りようか。キャロルは……もう寝てるな」
「最初はどうかと思ったけど、この子最高ね!!連れて帰りましょう!!」
「無理だって……」
セイラが帰り際、ケプルンキングの欠片を持って帰れないだろうかと引っ張っていたが、さすがに千切れそうなので燐が静止させる。
燐はセイラを引っ張りながら、何をしても怒らないんだなとその巨体を見上げていた。やっとの事でセイラをケプルンキングから引き剥がすと、残念そうに帰路につく。
ちなみにはしゃぎ疲れたのか相当気持ちよかったのか、眠ってしまっているキャロルは燐に背負われている。
「それにしても、あんなのもいるんだな」
「何言ってるのよ。あんたがこれまでに見た魔物なんて、本当に一握りよ。この世界には発見されてないだけで、星の数以上の魔物が生息しているのよ。中にはあの子みたいに友好的な子も少ないけどいるわ」
「確かにあいつは大人しかったな。なんでなんだろう」
燐が疑問を呟くと、セイラが先生気取りで説明を始めた。まずケプルの性質としては、魔物の中でも最弱な存在で知能も無く、生存本能だけで存在している存在だという事だ。
だから初めて燐がケプルに出会った時は、自分よりもでかい生物に襲われていると判断したケプルが防衛に出たという事だろう。
そして先程のケプルンキングは合体したせいかは分からないが、ある一定以上の知能を持ちコミュニケーションも取る事が出来る上、友好的な場合が多いらしい。
「へー、なるほどな。それで、あいつは放っておいて大丈夫なのか?何かに襲われてしまうとか、襲ってくるとか」
「あの子なら大丈夫だと思うわ。それに襲われてもまず平気よ。打撃による攻撃は恐らくほとんど効かないらしいし、剣なんかで斬ってもすぐにくっついちゃうらしいのよ」
「それって、無敵?」
「そんな事はないわ。強力な魔法を使うか、時間をかけて跡形も無く消滅させれば倒せるはずよ。でもそんな事が出来るのは、私の所の兵士かあんたとアリアくらいなものよ。あぁ、あとエルディアさんもか」
燐はセイラの説明を聞き、だいたい理解し害はないと判断した。それに、友好的な存在ならば連れて帰ってもよかったかなと思っている。
連れて帰ればきっとキャロルも喜ぶだろう。何と言ったってセイラが引き千切ってでも持って帰ろうとした位なのだから。
その事を遠まわしにセイラに言うと、上目遣いで睨まれた。
「なによ!なによ!なによっ!!これが仕返しってわけ!?」
「いや……そういうわけじゃ」
「ふんっだ!!さぁ、はやく帰ってご飯にしましょ。ご飯は全部、燐が作るんだからね!!」
「はぃはぃ」
燐が笑いながら返事をする。一見すごく仲が悪そうに見えるかもしれないが、2人の関係はそういうものなのだ。
互いに互いの事を良く知り、良く理解した上で意見も言える。そんな2人だからこそ、バカな事も本気で楽しめるのだ。
燐もセイラも素直になれないときがあるけれど、それもまた個性。その人を形成しているものに引かれて、今の生活があるのだ。
「ふぅ……。だいぶ遠くまで歩いたんだな。もう寝ちゃってもいいくらいだな」
「ダメよ!私お腹ぺこぺこなのよ!!こんな状態で寝られないわ……」
燐はあれだけお菓子を食べていたクセにと思ったが、先程まで黙っていたアリアがセイラに同調して頷いている。
どうやら、ずっと黙っていたのはケプルンキングの存在を忘れようと必死だったからのようだ。小さいケプルなら平気なアリアも、あれだけのサイズになると無理だという事もわかって燐としては小さな収穫だったと思っている。
アリアが帰ってきてから、今まで知らなかったアリアの事を更に知ることが出来て、より一層仲が深まる事だろう。
「さぁーって、家についたよ。ほら、キャロル起きて。寝るんだったら、着替えような?」
「うぅ……んっ。やだぁー……」
「セイラかアリアさん、キャロルをお願いしていいかな?俺はご飯の仕度をするんで」
「だったら私がキャロを寝室まで運ぶわ。アリーは燐の手伝いでもしててよ」
セイラがアリアの返事も聞かずキャロルを担ぐと、寝室ルームへの方へ消えていった。自分自身がやる分には何とも思わないが、女の子が女の子を軽々と抱きかかえれてしまう魔法の力を見ると、どうしても違和感は拭えない。
それでも魔力を持っている者ならば、力の大小はあるにしても肉体強化をすれば重い荷物を細腕の少女が持ち上げてしまう。但し大岩を持ち上げたり、木を引っこ抜いたり出来るわけではないので、そこまでとんでもない力を発揮できるわけではない。
そんな肉体強化の魔法を使ってセイラがキャロルを運んでいる間に、燐とアリアは夕食の準備に取り掛かる。
「燐さん、お手伝いしますね。今日は何を作るんですか?」
「バインセオって言う食べ物なんですが。えーっと……この米粉を水で溶いて焼くだけなんですけどね。本当はココナッツパウダーって言うのも入れるんですが、卵を入れてもふわふわでおいしいですよ。でも今回はシンプルにいきましょう」
アリアが燐の説明を聞き手順を確認していく。バインセオとはベトナムで食べられているお好み焼きと言われているが、実際はかなりもっちりとしてやわらかい。
そこに好きな野菜や海産物なんかを巻いて食べるのだが、つけだれが存在する。本来はヌクチャムという万能つけダレをつけて食べる所を燐は和風ダシで代用した。
つけだれを変えると別の食べ物の様な気もするが、少しクセのあるヌクチャムより食べやすいし、何より作るのが簡単だからという理由なのは燐だけが知っていることだ。
「燐さん、これくらいでいいんでしょうか?」
「焼き具合は正直好みですからね。パリパリにしても美味しいし、もっちり感を残してもおいしいし」
「成程です」
「今回はもっちり感を生かしましょうか」
「はいっ!!」
どうやらアリアも元気になったみたいである。ケプルンキングという衝撃的な存在を目撃してから言葉数が少なかったが、もう心配はいらないようだ。
アリアが次々と生地だけ焼いていると、セイラもキャロルをベッドに寝かし戻ってきたみたいである。戻ってきたセイラは鼻をひくひくさせて、アリアの焼いている物を見据えた。
見た目はクルナンを彷彿とさせ、準備が完了している具材を見てセイラは瞬時にどういうものか理解する。
「ご飯はまだかしら?」
「もうすぐだから食器とかだけ並べといてくれ」
「わかったわ」
燐に言われるがままセイラが準備を始める。そして準備が完了したのと同時だろうか、アリアが大量の焼いた生地を持ってやってきた。
「さて、食べますか」
「うん」
「はい」
3人はそれぞれの皿にオリジナルのバインセオを作り食べ始める。そして手を合わせ、食事を始めるのだった。
いつも読んで下さり有難うございます。
感想・意見・誤字報告ありがとうございます。
おはようございます。
また最近暑くなりましたね……。
早く秋よやってこい!!って思いますが
四季だもの、しょうがないですよね。
さてさて、今回のお話は帰宅話(?)でした!!
何か進展があるわけではないので、ギスギス感はゼロですね。
次は何をしましょうか(*´・ω・`)o0○(妄想)
それでは次回更新でまたお会いしましょう。




