運命には人は抗えない前編
舞が死んだ。
母親の車の中でガスによる自殺をはかったようだ。いわゆる練炭自殺というやつだ。そして、夜、十時過ぎに帰宅した彼女の母親がもうすでに息を引き取っていた彼女を見つけた。彼女の母親はどうしていいか分からずとにかく娘を車の中からだし、家のベッドにのせてから僕の母親に電話した。僕の母親が救急車を呼んだがもうその時には、すべてが遅すぎた。病院についてすぐに彼女は死亡が確認され、僕の母親は一時的に家に帰ることになった。兄さんと父さんは舞の母親についてあげているらしい。そして今、僕に起こったことをすべて話した。母さんはひどく疲れていた。とにかく僕は母さんに休むように告げた。母さんは静かにうなずいて、ベッドに入った。僕も全く頭の整理がつかずとりあえず自室のベッドに倒れこんだ。
少しして兄さんからメールが来た。そのメールには「すぐに舞の家に来るように」とだけ書いてあった。僕は重いからだを起こし適当な身支度をすぐに済ませ、我が家のママチャリに乗って舞の家を目指した。
十分ほど走って舞の家の前まで来た。家の前にはパトカーが止まっており舞の母親の車を警察が調査していた。
「太一」
声の方に目をやると兄貴がいた。そして舞の家の中に入った。家の中には父さんと舞の母親、それに舞の父親がいた。三人ともリビングのテーブルを囲んだソファーに腰をかけていた。そして僕を見ると父さんが向かいに座れと促した。おとなしく座る、兄貴もそれ続いて僕のとなりに座った。舞の母親はずいぶんと痩せてしまったように見える、つきだした頬骨が影をつくり、とても疲れてそうだ。目元も赤くなっている。服装は女性用のスーツを着ているので仕事帰りなのだろう。舞の父親は小汚ないジャンパーを私服の上に着ている、とても仕事帰りには見えない。舞の父親は手に職を就けず、いろんな職を転々としていると昔、舞に聞いた。それに仕事帰りには酒をのみ家に帰ってきて母親のことを殴って暴れるということも聞いた。
重々しい沈黙が流れる。父さんがゆっくりと口を開けて淡々と静かに話し出した。
「太一、知っていると思うが舞ちゃんが自殺をした。車中の練炭自殺だ。お前には聞きたいことが一つある。これに見覚えはないか?」
そういって父さんは青色のアサガオの押し花で作られたしおりをだしてきた。そのしおりは強く握られたのか少し歪んでシワがついている。僕は驚きを隠せなかった。知らないわけがない。このしおりは僕が幼稚園の時、舞にプレゼントしたしおりだ。僕と舞が一番仲良く、僕の人生でもっとも幸せだったあの時期の。
「その顔はどうやら知っているようだな」
僕は無言で頷く。
「実はな、車の中から舞ちゃんの遺言が見つかったんだ」
父さんがしゃべっている言葉を聞きながら僕はただ机の上に置かれたアサガオのしおりを見つめていた。
「そしてその遺言にはお前にそれを返すようとだけ書いてある手紙とそのしおりが入っていたよ」
遺言の話を聞いたあと父さんに「もう帰って寝なさい」と言われ僕はしおりを受け取って兄と一緒に帰ることになった。もうすでに外は真っ暗になっていた。兄に先に帰るとだけ言って自転車をこいで家に帰った。そして家についたら歯を磨いて寝ることにした。歯を磨く時に鏡を見た。僕の顔は普段に増して不細工だった。そして歯磨きを終え寝ることにした。そして枕元にしおりをおいて布団に入った。春の夜中の3時頃のことだった。
話の展開を早くしました。ご意見ご感想お待ちしています。この新人に色々教えてください