家にゾンビがやってきた
女神の金鎚の件でケンカをしたその日。一人で夜の留守番をすることになった。オヤっさんはどうしてもお得意様に連絡しないといけない事ができたとかで街へ。
私はと言えば。大事にしまっていた制服をなんとなく引っ張り出して,久しぶりにそれを着て。誰も居ない丸太小屋で物思いに沈む。オヤっさんに良くしてもらったおかげか最近は思い出すことも少なくなってきたが。元の世界の事,親兄弟の事,いろいろ思い出すとやっぱり泣けてくる。
とその時,ゆっくりだが強くドアを叩く音。あれ?オヤっさん確か今夜は戻らないって…絶対に扉を開けるなとか言ってたけど忘れ物でもしたのかな?
慌てて涙を拭って,開けてみるとそこには妙な奴。腐った体,眼球の飛び出した目,ぼろぼろの着衣。掴まれそうになって慌ててドアを蹴飛ばし飛びすさる。
「ゾ,ゾ,ゾ,ゾンビ!?」
開けるなってこういう事か!?説明端折りすぎだろオヤっさん!話半分に聞いてたなんてことはない,きっと私は悪くない。
部屋の隅まで下がるが,ドアを閉めなかったのは迂闊だった。ゆっくりとだが確実にゾンビは迫ってくる。1体,2体…次々と入ってくる。
私の人生ここで終わりか?こんなわけ分からん世界で!?ぶ,武器は無いのか?なんてこの期に及んでマンガのセリフを思い出すが,あったところで使えるわけもない。ふと右手に感触。夢中でそれをつかんで構えてみると,それは件の女神の金鎚。
「ううう…悪霊退散悪霊退散…!」
ぶるぶると震える右手で金鎚をゾンビに向ける。心なしか嫌がる素振りを見せるゾンビ。しかしそれもつか間。手を伸ばしてくる。
「うわあああああああっ!」
半べそで金鎚を振り回す。するとその時奇跡が起こった。